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着物デート〜散策篇〜後編
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明月院
参道は緩やかで段差の低い階段が続き、着物でも足元を気にせずゆったりと上がることが出来る。季節が合えば参道は紫陽花が両脇を彩っているが、今は秋。今度は紫陽花の時期のまた来ようねと伊織と約束した。
「拓馬!見てください!凄く綺麗…。」
山門をくぐった途端、色彩の嵐が目に飛び込んできた。鮮やかに色づいた木々が俺たちを迎えてくれていて、そんな素敵な風景に溶け込む伊織の着物姿が眩しくて、俺はしばし見惚れてしまっていた。
「拓馬?どうしたんですか?」
入り口で立ち尽くす俺を見て、伊織が心配そうに見上げていた。
「ん?伊織が綺麗だなって思ってさ(笑)」
「な!何ですか!?」
「立ち姿といい、着物の着こなしといい……。美しい景色に美しい人が似合うな(笑)」
「よくそんな……。」
恥ずかしいことを!
そういう事平気で言うんですから!!近くに誰もいなくて良かった……。
それを言うなら、拓馬だって凄く素敵なのに……。ここまでの道すがら、すれ違う女の子たちがチラチラと拓馬を見てたのに僕が気付いてないとでも思ってるのかな?
「拓馬だって格好いいから…若い女の子たちがチラチラ見てたよ?」
「そう?全然気付かなかったよ(笑)」
俺はほぼ伊織しか見てなかったからね。自分でも呆れるくらい(笑)。
「そんなことより、ここを散策したらお昼ね!予約したレストランはすぐそばにあるからさ、時間まで綺麗な庭を一緒に歩こうか。」
「そうですね!写真いっぱい撮りましょう♪」
自撮り棒まで用意して、美しい庭をバックに写真を沢山撮った。撮った写真をじっと覗き込んで見ていた伊織が嬉しそうに俺を見上げる。
「二人でこんなに写真撮ったの、初めてですね(笑)」
「そうだね…。これからは、もっと一緒に出かけよう!」
休みが合う時は大抵一緒に買い物に行って食材を買い込み、キッチンで即席料理教室を開くのが最近の傾向だった。でも、デートをこんなに喜んでくれるなら……。
もっと早く連れて行ってあげればよかった……。
「いつものお料理教室も好きですよ(笑)」
俺の落ち込んだ様子に、伊織が優しく笑った。その温かな眼差しに俺もつられて笑っていた。
「レパートリー増えたもんな(笑)」
「はい!」
弾けるような笑顔を見せられて、俺は思わず伊織のほっぺにキスをしていた。
「だ!駄目ですよ!…もう。」
「可愛いのが悪い(笑)」
ホントに可愛いんだから♡ほっぺにチュウで我慢した自分を褒めてやりたい(笑)。
+++
ランチデート
レストランは辺りを森に囲まれた静かな場所にあり、一見和風な外観だが一歩なかに足を踏み入れると大きな窓が印象的な落ち着いた洋風のインテリアのフレンチのお店だ。窓からは庭の紅葉が彩りを添え、今の時期はテラス席でもランチを楽しめると聞いていたので、予約の時にテラス席を取ってもらった。
「拓馬…。すごく素敵です!どうやって見つけたんですか?」
「ん?伊織と初めてのデートだから…物凄く真剣にリサーチしました(笑)」
「で、でーと?」
「そうだよ?大事な人との大事なデートですから(笑)」
ネットでたくさん調べて、一番美味しそうな所にしました(笑)。
お料理は…地元の新鮮な鎌倉野菜に相模湾で獲れた新鮮な魚介類…。それをフレンチと言っても、こってりとしたソースで食べさせる感じではなく、素材を生かした軽やかな口当たりで…二人共、こんなの一緒に作ってみたいねなんて言いながら、楽しい時間が短く感じるほど夢中で食べてしまった(笑)。
「あ~…食べ終わっちゃった(笑)。凄く美味しかった!」
食後の紅茶とデザートを頂きながら伊織の満足そうな顔を見て、近いうちにまたデートに連れ出そうと心に決めていた。
「それは何より(笑)。これで午後も沢山お散歩出来るね♡」
「このあと、どこ行きますか?」
「そうだね……。報国寺って分かる?竹林で有名な…。」
「はい!凄く素敵ですよね!僕も行ってみたかったんです!!」
あそこに着物で行って、二人で写真撮ったら……。物凄くいい思い出になりそう!
「着物映えしそうだね(笑)」
「写真、沢山撮りましょうね!」
デザートを口に運ぶ伊織が柔らかく微笑んだ。
俺は、この子に一目惚れした瞬間を思い出していた。自分で作った和風の素敵な花束を抱えて、俺の前に立った時の伊織を。この笑顔を見られるなら、どんな願いも叶えてやりたいと思った。絶対に結ばれることはないと思っていたこの子が、俺の一生のパートナーになっているこの今を大事にしようと何度でも思う。
「じゃ……行こうか。」
「はい!」
レストランを出て車に向かうまでの短い間でも、片時も離したくなかった。
「午後は…手、つなごうか。」
「えっ?」
「…さ!乗って乗って(笑)」
今…手を繋ぐって言った?外なのに…。
「あの…拓馬?」
「はい?」
「その……外なのにいいの?」
「いいの。っていうか、俺が伊織と手繋いで歩きたいの(笑)」
運転してる間も、僕の右手は拓馬の左手に確保されっぱなしだった。
「運転しづらくないの?」
「全然!伊織を乗せてるんだもん。危なかったら手なんか握らないよ(笑)」
「…そういう事なら……。」
拓馬の横顔が嬉しそう…。
僕はそれ以上何も言わず、大きくて温かい手のぬくもりと力強さを肌で感じていた。
***
報国寺
竹林を通り抜ける風が肌寒く感じられ、日が傾いてきたところで報国寺を後にすることにした。
「鎌倉は…着物で来るといいもんだね(笑)」
「ポスターみたいな写真…撮れましたね(笑)」
ほんと。伊織は絵になるよ……。俺の待ち受けにしよう(笑)。
伊織が綺麗すぎて、写真を撮ってくれたカップルが女性だと思ってましたなんて言っていた。それを聞いて伊織が真っ赤になってたな(笑)。
「手…繋いでても……別に誰も見てませんでしたね。」
「ね?堂々としてればいいんだよ。」
拓馬だからきっと僕は平気でいられたんだ。堂々と僕の存在を受け入れてくれてるから……。
「ん?どうした?俺の顔ばっかり見て。…そんなにいい男か?(笑)」
「はい(笑)」
珍しく拓馬が絶句した(笑)。そして、僕の大好きな琥珀色の瞳を輝かせて優しく目尻を下げた。
「あとで覚えてなさいね(笑)」
「えっ……。」
「今晩は…君を逃しませんからね(笑)」
その瞳が妖しく光った。僕は思わぬ反撃に言葉を失ってしまった。
参道は緩やかで段差の低い階段が続き、着物でも足元を気にせずゆったりと上がることが出来る。季節が合えば参道は紫陽花が両脇を彩っているが、今は秋。今度は紫陽花の時期のまた来ようねと伊織と約束した。
「拓馬!見てください!凄く綺麗…。」
山門をくぐった途端、色彩の嵐が目に飛び込んできた。鮮やかに色づいた木々が俺たちを迎えてくれていて、そんな素敵な風景に溶け込む伊織の着物姿が眩しくて、俺はしばし見惚れてしまっていた。
「拓馬?どうしたんですか?」
入り口で立ち尽くす俺を見て、伊織が心配そうに見上げていた。
「ん?伊織が綺麗だなって思ってさ(笑)」
「な!何ですか!?」
「立ち姿といい、着物の着こなしといい……。美しい景色に美しい人が似合うな(笑)」
「よくそんな……。」
恥ずかしいことを!
そういう事平気で言うんですから!!近くに誰もいなくて良かった……。
それを言うなら、拓馬だって凄く素敵なのに……。ここまでの道すがら、すれ違う女の子たちがチラチラと拓馬を見てたのに僕が気付いてないとでも思ってるのかな?
「拓馬だって格好いいから…若い女の子たちがチラチラ見てたよ?」
「そう?全然気付かなかったよ(笑)」
俺はほぼ伊織しか見てなかったからね。自分でも呆れるくらい(笑)。
「そんなことより、ここを散策したらお昼ね!予約したレストランはすぐそばにあるからさ、時間まで綺麗な庭を一緒に歩こうか。」
「そうですね!写真いっぱい撮りましょう♪」
自撮り棒まで用意して、美しい庭をバックに写真を沢山撮った。撮った写真をじっと覗き込んで見ていた伊織が嬉しそうに俺を見上げる。
「二人でこんなに写真撮ったの、初めてですね(笑)」
「そうだね…。これからは、もっと一緒に出かけよう!」
休みが合う時は大抵一緒に買い物に行って食材を買い込み、キッチンで即席料理教室を開くのが最近の傾向だった。でも、デートをこんなに喜んでくれるなら……。
もっと早く連れて行ってあげればよかった……。
「いつものお料理教室も好きですよ(笑)」
俺の落ち込んだ様子に、伊織が優しく笑った。その温かな眼差しに俺もつられて笑っていた。
「レパートリー増えたもんな(笑)」
「はい!」
弾けるような笑顔を見せられて、俺は思わず伊織のほっぺにキスをしていた。
「だ!駄目ですよ!…もう。」
「可愛いのが悪い(笑)」
ホントに可愛いんだから♡ほっぺにチュウで我慢した自分を褒めてやりたい(笑)。
+++
ランチデート
レストランは辺りを森に囲まれた静かな場所にあり、一見和風な外観だが一歩なかに足を踏み入れると大きな窓が印象的な落ち着いた洋風のインテリアのフレンチのお店だ。窓からは庭の紅葉が彩りを添え、今の時期はテラス席でもランチを楽しめると聞いていたので、予約の時にテラス席を取ってもらった。
「拓馬…。すごく素敵です!どうやって見つけたんですか?」
「ん?伊織と初めてのデートだから…物凄く真剣にリサーチしました(笑)」
「で、でーと?」
「そうだよ?大事な人との大事なデートですから(笑)」
ネットでたくさん調べて、一番美味しそうな所にしました(笑)。
お料理は…地元の新鮮な鎌倉野菜に相模湾で獲れた新鮮な魚介類…。それをフレンチと言っても、こってりとしたソースで食べさせる感じではなく、素材を生かした軽やかな口当たりで…二人共、こんなの一緒に作ってみたいねなんて言いながら、楽しい時間が短く感じるほど夢中で食べてしまった(笑)。
「あ~…食べ終わっちゃった(笑)。凄く美味しかった!」
食後の紅茶とデザートを頂きながら伊織の満足そうな顔を見て、近いうちにまたデートに連れ出そうと心に決めていた。
「それは何より(笑)。これで午後も沢山お散歩出来るね♡」
「このあと、どこ行きますか?」
「そうだね……。報国寺って分かる?竹林で有名な…。」
「はい!凄く素敵ですよね!僕も行ってみたかったんです!!」
あそこに着物で行って、二人で写真撮ったら……。物凄くいい思い出になりそう!
「着物映えしそうだね(笑)」
「写真、沢山撮りましょうね!」
デザートを口に運ぶ伊織が柔らかく微笑んだ。
俺は、この子に一目惚れした瞬間を思い出していた。自分で作った和風の素敵な花束を抱えて、俺の前に立った時の伊織を。この笑顔を見られるなら、どんな願いも叶えてやりたいと思った。絶対に結ばれることはないと思っていたこの子が、俺の一生のパートナーになっているこの今を大事にしようと何度でも思う。
「じゃ……行こうか。」
「はい!」
レストランを出て車に向かうまでの短い間でも、片時も離したくなかった。
「午後は…手、つなごうか。」
「えっ?」
「…さ!乗って乗って(笑)」
今…手を繋ぐって言った?外なのに…。
「あの…拓馬?」
「はい?」
「その……外なのにいいの?」
「いいの。っていうか、俺が伊織と手繋いで歩きたいの(笑)」
運転してる間も、僕の右手は拓馬の左手に確保されっぱなしだった。
「運転しづらくないの?」
「全然!伊織を乗せてるんだもん。危なかったら手なんか握らないよ(笑)」
「…そういう事なら……。」
拓馬の横顔が嬉しそう…。
僕はそれ以上何も言わず、大きくて温かい手のぬくもりと力強さを肌で感じていた。
***
報国寺
竹林を通り抜ける風が肌寒く感じられ、日が傾いてきたところで報国寺を後にすることにした。
「鎌倉は…着物で来るといいもんだね(笑)」
「ポスターみたいな写真…撮れましたね(笑)」
ほんと。伊織は絵になるよ……。俺の待ち受けにしよう(笑)。
伊織が綺麗すぎて、写真を撮ってくれたカップルが女性だと思ってましたなんて言っていた。それを聞いて伊織が真っ赤になってたな(笑)。
「手…繋いでても……別に誰も見てませんでしたね。」
「ね?堂々としてればいいんだよ。」
拓馬だからきっと僕は平気でいられたんだ。堂々と僕の存在を受け入れてくれてるから……。
「ん?どうした?俺の顔ばっかり見て。…そんなにいい男か?(笑)」
「はい(笑)」
珍しく拓馬が絶句した(笑)。そして、僕の大好きな琥珀色の瞳を輝かせて優しく目尻を下げた。
「あとで覚えてなさいね(笑)」
「えっ……。」
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