俺のめんどうで可愛い二人

ハジメユキノ

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拾いもの

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ハルは学校でちょっと気になる子がいた。気になると言っても、好きとかそういうんじゃなくて、ちょっと言い方悪いけど、格好が手入れしてないと言うか、不潔っていうか…。
周りに友だちと呼べる子もいなくて、いつも一人でぽつんとしてる…。
帰りも部活にも出ずにさっと帰ってしまって、誰かとしゃべったり笑ったりしてるところを見たことがなかった。
「お風呂入ればいいのに…」
部活の帰り、友だちと別れて一人になったとき、ふとあの子を思い出した。
楽しい顔を見たことないのが何だかなあと。
考え事をしながら歩いていたので、道端に雑巾みたいなものが転がっているのに目も留めようともしないで、通り過ぎようとしていた。
「ミー」
「?ん?」
どこから?
周りを見渡しても猫は…。あー!雑巾じゃない!
ボロボロになっているのは、泥だらけで目も何かでくっついて開かないようで、茶色く毛が固まっているのは…血?
ハルは一瞬迷ったが、怒られるのを覚悟してジャージでその子をくるんで家に急いで帰った。

「どうしよう…家って言ってもお父さんのうちだし…僕お金持ってないから病院連れて行けないし…」
でも…。お父さんとお母さんなら力になってくれるはずだと、ハルはお風呂場でたらいにお湯をはり、タオルを浸して小さくてガリガリの猫の汚れを落としていった。
もう弱っていて逃げる気力すらないようで、力なく動かずにされるがままだった。
泥と血を落とし、まぶたをくっつけていた目ヤニなのか何か分からないベタベタしたものを落とすと、ふわふわの可愛いハチワレ猫になった。
「ぞーきんみたいだったのに…」
ハルはすっかりくつろいでいる子猫にミルクを与えた。
「冷たいとおなか壊すかなぁ…」
ちょっとレンジで温めて、熱くないように冷ました。
「猫舌って言うくらいだから熱いのはのめないか…な?」
ほんのりあったかいミルクをお皿に入れて、タオルを敷いた上に載せて置くと、耳をピンとして無我夢中で飲み干した。
おなかが満たされると、今度はハルの膝によいしょよいしょとのぼってきて、自分の場所だと言わんばかりに丸くなって眠ってしまった…。
ハルも見ているうちに眠くなってしまって、猫をバスタオルにくるむと、ベッドに持っていって添い寝した。
ハチワレで靴下はいてるみたいに足先が白い…名前…ハチでいいか…。すやすやと眠ってしまった。

ガチャっと玄関の開く音がして、珍しく周作が帰ってきた…。と目の前に座って自分を見つめる子猫が一匹…。
「んーーー?」ハル?猫になったか?
「んなわけないなぁ。ハル?この子は…?」
子猫を抱いて、ドアが少し開いていたハルの部屋に入ると、ハルはベッドの上でバスタオルを抱えて寝ていた。
お風呂場には使った跡があり、泥の付いたジャージが籠に入っていた。
大体の事情は分かったけど、うちのマンション…ペット可だったかな?規約がたしかダイニングの引き出しに…。ガサガサと探して読むと、可だった。
ホッとして子猫を抱え上げて、小さな顔を目の前に持ってくると、
「お前、オッケーだってよ」と笑って言うと、
「ミャ!」とまるで返事をするように鳴いた。

「ハル!ハル起きて」
寝ぼけ眼でぼんやり見ていると、目の前に猫とお母さんとお父さんが…。
ガバッと起きて、
「ごめんなさい!道端に雑巾みたいに転がってて…。それで」
頭を布団にこすりつけると、
「周作さんがさっき病院に連れて行ってくれて、ケガもたいしたことないし、病気もないって。よかったね、ハル」
優しい顔でお母さんが見ている。
「お、お父さん…。ありがと…」
消え入りそうな声でハルが周作を見ると、周作はハチワレを胸に抱いていた。
「しょっちゅう拾ってくるのは困るけど、一匹だし。俺の肩に乗ってたんだよ。さっき」
なんて甘え上手。さっそくこの家のボスに取り入ったな。
「ハルが拾ったんだから、ちゃんと面倒見てやれよ」
ほれっとハルの腕に戻った猫は、指をペロッとなめた。ざらざらした感触がくすぐったかった。
「ハチ、よかったね」
「何でハチ?」
「ハチワレ猫だから…」
「安直だな」
あはははと周作が笑うので、いいじゃん!と顔を赤くしてハルは怒った。

トイレとキャットフードとお手入れ用ブラシ…こんなものか?
周作とハルはホームセンターにハチを飼うための買い物に来ていた。
「お店の人に聞いてみる?」
「そうだな…。俺、動物飼うの初めてだ」
お姉さんは子猫なら猫用ミルクと寝床をすすめてくれた。
「どうする?お母さんにも聞く?」
「そうだな…」
この二人。意外と優柔不断?
雪は寝床にちょうどいいカゴがあるから、タオル敷いてあげるからいいと言い、ミルクを追加して帰ってきた。
もうハチは雪が作った寝床で丸まっていた。雪はハチの喉とか頭を指でカリカリしてあげて、すっかりメロメロになってる…。
「私、ハチいるとごはん作るの忘れちゃいそう…」
「やだ!」
周作とハルがハモって抗議した。

「それにしても、こんな小さいのケガさせて放り出すなんて…。なんか危ない人でも近所にいるのかな…」
「動物虐待って、その先に人に危害を加える事件につながることあるんだよ…」
周作はこれまでの猟奇的な事件の前触れで起こったことを思い出していた。
「怖いな…」
「ハル、俺ちょっと聞いてみるから、あんまり関わらないようにな。心配だから」
「はい、…お父さん」
周作はハルの「お父さん」に慣れてきたかな?とくすぐったかった。

周作は署で他の課にも顔を出して、動物虐待事案があるか聞いてみると、野良猫を蹴飛ばして遊んだりしている不審人物がいるらしいという通報があったことを知った。
ちょうどハチを拾った辺りだったようで、その近辺にいるのか?

その頃、ハルは帰宅途中に気になったあの子の家を見つけた。
ハチを見つけた土手のそばにある古びた貸家の1棟があの子、佐藤さんの家だった。雑草が伸び放題で、壊れた三輪車やバケツが転がっていた。
中から誰かの怒鳴る声が聞こえ、誰かが泣いていた。
気にはなったけれど、どうしていいのか分からず、後ろ髪を引かれつつも家に帰った。

「お母さん…。僕のクラスに佐藤くんっているんだけどね」
ハルはぽつりぽつりと言葉を選んで、今までのこと、今日聞いた声のことなんかを訥々と話した。
「うん…ちょっと気になるね…。学校では先生はその子と話したりしてるの?」
「んー…どうだろう…。声かけたりしてるとこ見たことないんだ」
「笑わないっていうし、そんなのつらいよねぇ…。毎日笑って暮らしたいもん」
そうだよなぁ。お母さんはいっつも笑ってるし、お父さんもお母さんと一緒に笑ってる。僕んちは3人とも笑って楽しく生活出来てる。
「う~~ん…」
「そう言えば、佐藤君って下の名前何ていうの?」
お母さんが何かを思い出したような顔で聞いた。
「えっと、確かたかしだったかな…」
「ハル、クラスメートの名前知らないの?」
「ごめん…。ほとんどしゃべったことないんだ」
「さとうたかしくん…。なんか聞いたことあるかも…。お母さんの病院で見たことある名前だったような…」
お母さん、最近名前が出てこない!ってテレビ見ながらよく言ってる…。
「明日リカコちゃんに聞いてみるね」
僕はハチからさとうくんにつながっていってしまいそうで、ちょっとイヤだなと思っていた。

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