9 / 9
新しい門出
しおりを挟む
もう知ってるとは思ったけれど、香月は自分の口で加東に話そうと思い、事前に連絡もせずに事務所を訪れた。
事務所だった部屋は、看板もなく中はがらんとした空間が広がっていた。
「えっ…」
私はまた信じて裏切られた?
その時、香月は背後に気配を感じ振り返った。そこには、綺麗にひげを剃り、仕立ての良いジャケットを羽織った加東が立っていた。
「事務所は一旦たたむことにしたんだ」
香月は安堵のあまり扉にもたれかかった。
「びっくりさせてごめん。今から連れて行きたい所があるんだ。時間ある?」
香月がうなずくと、加東は自分の腕を取るように言った。
外には、黒いジープチェロキーが待っていた。香月を乗せると加東は車を出した。
しばらく何も話さず、二人は黙って通り過ぎる景色を眺めていた。最初に口を開いたのは香月だった。
「やっと終わったの。知ってると思ったけど、私の口から言いたかったから…」
加東は横顔で優しく微笑み、
「そう…お疲れさま。頑張ったね」
香月は何でか分からないけれど、無性に泣きたくなってしまい、こらえるのが大変だった。
「あなたは大丈夫だった?その、警察とか…」
「ああ、ちゃんと引き際を弁えてるからね。心配はいらないよ」
それを聞いてほっとしたからか、こらえていた涙が後から後からこぼれた。
「君は泣き虫なんだな」
からかうような口調で加東に言われると、香月は、
「誰かさんが心配かけるからでしょう?」
とムッとして口をとがらせた。
「でも、そのおかげで俺は人の心を取り戻したよ」
「今まで心なかったの?」
「ははっ(笑)そこまでじゃないけどね。大事な人を救うために動けたことは、俺にとっても大きな事なんだよってこと」
香月は助手席で一人顔を赤らめていた。
車は郊外の住宅地を通り過ぎ、山の方へどんどん進んだ。
「どこまで行くの?」
かれこれ3、40分は走っただろうか。山間の集落の手前を山に入り、一軒の古民家にたどり着いた。
古いが、手入れは怠っていないと見受けられる素敵な家だった。
「ここが今度の事務所兼住宅」
香月を家の中に迎え入れると、中はすっかりリフォームされて、使いやすそうな空間が広がっていた。
香月は温かな空間に、加東の中身(心)が変わったんだなと感じた。以前の事務所の清潔だけれど無機質な感じではなく、本来の加東がここを選んだように思った。
「ここで一緒に暮らさないか?」
加東は香月に聞いた。
「ここなら君の職場にも通えるし、俺も仕事の時は同じ町にいられる。どうかな?」
香月は何も言わず加東の顔を見つめた。また一粒涙が目から溢れた。
「私…私でいいの…?」
加東は優しい目をして、
「君じゃなきゃ。俺は君がいい。これから先、死ぬまで一緒にいたいのは香月、君だけだ」
加東は香月を抱きしめると、
「お願いだ。俺のそばにいてくれないか?」
香月は加東の腕の中で声を上げて泣いていた。まるで子どものようにしゃくりあげて…。
「はい。私もあなたとずっと一緒にいたい…」
二人は外が暗くなるまで、お互いに体を離そうとはしなかった。
事務所だった部屋は、看板もなく中はがらんとした空間が広がっていた。
「えっ…」
私はまた信じて裏切られた?
その時、香月は背後に気配を感じ振り返った。そこには、綺麗にひげを剃り、仕立ての良いジャケットを羽織った加東が立っていた。
「事務所は一旦たたむことにしたんだ」
香月は安堵のあまり扉にもたれかかった。
「びっくりさせてごめん。今から連れて行きたい所があるんだ。時間ある?」
香月がうなずくと、加東は自分の腕を取るように言った。
外には、黒いジープチェロキーが待っていた。香月を乗せると加東は車を出した。
しばらく何も話さず、二人は黙って通り過ぎる景色を眺めていた。最初に口を開いたのは香月だった。
「やっと終わったの。知ってると思ったけど、私の口から言いたかったから…」
加東は横顔で優しく微笑み、
「そう…お疲れさま。頑張ったね」
香月は何でか分からないけれど、無性に泣きたくなってしまい、こらえるのが大変だった。
「あなたは大丈夫だった?その、警察とか…」
「ああ、ちゃんと引き際を弁えてるからね。心配はいらないよ」
それを聞いてほっとしたからか、こらえていた涙が後から後からこぼれた。
「君は泣き虫なんだな」
からかうような口調で加東に言われると、香月は、
「誰かさんが心配かけるからでしょう?」
とムッとして口をとがらせた。
「でも、そのおかげで俺は人の心を取り戻したよ」
「今まで心なかったの?」
「ははっ(笑)そこまでじゃないけどね。大事な人を救うために動けたことは、俺にとっても大きな事なんだよってこと」
香月は助手席で一人顔を赤らめていた。
車は郊外の住宅地を通り過ぎ、山の方へどんどん進んだ。
「どこまで行くの?」
かれこれ3、40分は走っただろうか。山間の集落の手前を山に入り、一軒の古民家にたどり着いた。
古いが、手入れは怠っていないと見受けられる素敵な家だった。
「ここが今度の事務所兼住宅」
香月を家の中に迎え入れると、中はすっかりリフォームされて、使いやすそうな空間が広がっていた。
香月は温かな空間に、加東の中身(心)が変わったんだなと感じた。以前の事務所の清潔だけれど無機質な感じではなく、本来の加東がここを選んだように思った。
「ここで一緒に暮らさないか?」
加東は香月に聞いた。
「ここなら君の職場にも通えるし、俺も仕事の時は同じ町にいられる。どうかな?」
香月は何も言わず加東の顔を見つめた。また一粒涙が目から溢れた。
「私…私でいいの…?」
加東は優しい目をして、
「君じゃなきゃ。俺は君がいい。これから先、死ぬまで一緒にいたいのは香月、君だけだ」
加東は香月を抱きしめると、
「お願いだ。俺のそばにいてくれないか?」
香月は加東の腕の中で声を上げて泣いていた。まるで子どものようにしゃくりあげて…。
「はい。私もあなたとずっと一緒にいたい…」
二人は外が暗くなるまで、お互いに体を離そうとはしなかった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる