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愛しい人
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僕の横には安心して眠っている玲児がいた。
「睫毛長い…」
額にかかる髪を指で梳いた。いい夢を見ているのか、少しだけにこっとした。おでこに軽くキスをすると、僕は玲児の頭を壊れ物のように優しく胸に抱えた。腰のダルさが心地よくて、一瞬で深い眠りに落ちていた。
「斎生♡起きて♡」
外はしとしとと桜流しの雨が降って、満開を過ぎた花びらが地面をピンクに染めていた。
「今日はね、少し肌寒いから温かいにゅうめんにしたの」
昨晩は夕飯も遅かったし夜も遅くまで起きていたからか、僕は珍しく食欲が湧かなかった。温かいにゅうめんなら食べられそう…。
「おはようございます、榊さん。朝ごはんににゅうめんっていいですね(笑)」
「さかきさん~?」
「ん?れ、玲児…さん」
「さんは付けなくていいのよ!呼び捨てにして♡」
で、でもなぁ…。
「斎生♡夕べは…すごかったわ♡」
榊さん…、いや、玲児が可愛すぎて調子乗った…。
「あの…。だって…。れ、玲児が可愛すぎて…」
顔が熱い!
「ヤダ!もう!恥ずかしい…」
すごい嬉しそう(笑)。でも、榊さんが嬉しそうに笑ってるのを見て僕は安心した。10年前の事だとしても、その話をしているときの榊さんは凄く辛そうだった。未だに新鮮さを失わない刺が鋭く胸を刺すように、痛みを伴っているように僕には見えたから。
「斎生?」
僕は榊さんを抱きしめていた。僕がその刺を溶かしてやる…。
「ダメ…。したくなっちゃうから♡」
もう!すぐふざけるんだから!お仕置きしちゃうぞ(笑)。
「しますか?」
「えっ?」
榊さんは頬を赤らめていた。僕は格好いいのに可愛いこの恋人を、またグズグズになるまで甘やかしたい衝動に駆られた。
「嘘です(笑)。僕、多分止められないから…」
「もう!斎生ったら!大好きよ♡」
もちろん僕もですよ♡なにこのバカップルぶり(笑)僕はこの人の明るさを失わせたくないと思っていた。僕の横にいたら、いつもこんな風に笑っていられるって僕の愛しい人に刷り込んでやろうと思った。
「今日はね、もうすぐ桜も終わっちゃうからシャツはピンクね♡」
昨日に引き続き、榊さんの手にかかると僕は少しだけ男前になれた(笑)。
ネイビーブルーのスーツに薄ピンクのシャツ、ネクタイはネイビーに白のドット柄。
「僕…。チャラくないですか?」
「何言ってるの!ピンクっていっても桜くらいほんのりピンクよ!それにネイビーのネクタイはシックにまとめてくれるから大丈夫なの!」
「僕…ピンクって着たことないです…」
「ほら、胸張って!だいたい斎生の顔はそんなに濃くないから、やらしくならないわよ(笑)」
僕は鏡の中の自分に言い聞かせた。この人の隣に立ち続けるんだろ!もっと自分を磨かないと置いてかれるぞ!
「れ、玲児も素敵ですね」
榊さんは(やっぱり仕事モードの時は『榊さん』がしっくりくる…)チャコールグレーのスーツにブルーのクレリックシャツ、ネクタイはネイビーとピンクのレジメンタルタイを締めていた。
「ここがお揃いよ♡」
自分の胸元を指差した。ネクタイが僕のスーツとシャツの色にリンクしていた。
「格好いいですね」
ふふんと鼻を鳴らし、得意そうに笑った。
「でしょ?(笑)」
「はい(笑)」
僕たちは向かい合ってお互いの目を見つめて笑った。よし!完璧♡
「斎生?」
「はい」
「今日もまた朝から部長が接触してくるはずよ。だけど…」
「ん?だけど…なんです?」
榊さんは珍しくモジモジしている。
「ん?玲児?」
「…。部長へのハニトラは趣味じゃないからね?仕事なんだから…。」
可愛い!僕が気にするの心配してる!
「分かってますよ。玲児は僕のこと大好きですもん(笑)」
「ヤダ!」
真っ赤になった榊さんは可愛い僕の恋人の顔をしていた。
会社に着くと、昨日ほどじゃないけれど少なくない女子社員の視線を感じた。
「榊さん。やっぱりチャラいんじゃ…」
榊さんはジロッと僕を睨んだ。
「何言ってるの!季節に合わせたシックで格好いいスタイルだって何回言ったら…」
「榊君。ちょっといいかな?」
影山部長が昨日の仕掛けに早速食いついた。今朝は、なめまわすような視線ではなく、愛おしそうに榊さんを見つめている…。ちょっと!僕の恋人なんですから!そんな目で見ないで下さい!!
やっぱり僕は拳を握り締める羽目になっていた。僕はどんだけこの人の事を好きなんだろ?
「井坂くん。先に行っててくれる?」
え~…。ヤダ。
「でも…」
「すぐですから」
榊さんがコラっと目で怒った。でも、その奥は優しいんだよな…。
渋々といった雰囲気を醸しつつ、がっつり後ろ髪を引かれてデスクに向かった。大丈夫かな…。
影山部長と榊さんは資料室にいた。
「君の私への想いはしっかり伝わったよ…」
部長の手が榊さんの腕に伸びてきた。
「良かった…。貴方みたいな(どうしようもない)人は初めてでしたから…」
捕まれる前に影山部長の手をキュッと握った。捕まれるの嫌なのよね。
「それで、お話って?貴方の(罪を暴く)ためなら、お手伝い(して証拠掴むわよ)したいです♡」
「君は見た目によらず、可愛いんだな♡」
「嫌ですよ(キモいわ)♡可愛いだなんて(斎生以外に言われると嬉しくないわ💢)」
仕方なく手を撫でられながら(キモいわ~)、部長の計画を聞いていた。
「玲児、エロ部長になんかされた?」
榊さんは眉間にシワを寄せていた。
「手を撫で撫でされたわ💢」
「えっ!嫌です!」
今度は美月さんが眉間にシワを寄せていた。
「家でやって💢」
榊さんは部長から引き出した情報をボスの前で話した。
「今進行中のプロジェクトで、聞いたこと無い会社と契約を結んで仕事を発注するって言うの」
「どんな仕事?」
「材料費、制作費、企画立案の手数料みたいな名目でね」
「その会社ってやっぱりペーパーカンパニー?」
「でしょうね」
「内情を調べる必要がありますね」
ボスが口を開いた。ここから本格的に僕たちの部署の仕事が動き始めることになる。
「睫毛長い…」
額にかかる髪を指で梳いた。いい夢を見ているのか、少しだけにこっとした。おでこに軽くキスをすると、僕は玲児の頭を壊れ物のように優しく胸に抱えた。腰のダルさが心地よくて、一瞬で深い眠りに落ちていた。
「斎生♡起きて♡」
外はしとしとと桜流しの雨が降って、満開を過ぎた花びらが地面をピンクに染めていた。
「今日はね、少し肌寒いから温かいにゅうめんにしたの」
昨晩は夕飯も遅かったし夜も遅くまで起きていたからか、僕は珍しく食欲が湧かなかった。温かいにゅうめんなら食べられそう…。
「おはようございます、榊さん。朝ごはんににゅうめんっていいですね(笑)」
「さかきさん~?」
「ん?れ、玲児…さん」
「さんは付けなくていいのよ!呼び捨てにして♡」
で、でもなぁ…。
「斎生♡夕べは…すごかったわ♡」
榊さん…、いや、玲児が可愛すぎて調子乗った…。
「あの…。だって…。れ、玲児が可愛すぎて…」
顔が熱い!
「ヤダ!もう!恥ずかしい…」
すごい嬉しそう(笑)。でも、榊さんが嬉しそうに笑ってるのを見て僕は安心した。10年前の事だとしても、その話をしているときの榊さんは凄く辛そうだった。未だに新鮮さを失わない刺が鋭く胸を刺すように、痛みを伴っているように僕には見えたから。
「斎生?」
僕は榊さんを抱きしめていた。僕がその刺を溶かしてやる…。
「ダメ…。したくなっちゃうから♡」
もう!すぐふざけるんだから!お仕置きしちゃうぞ(笑)。
「しますか?」
「えっ?」
榊さんは頬を赤らめていた。僕は格好いいのに可愛いこの恋人を、またグズグズになるまで甘やかしたい衝動に駆られた。
「嘘です(笑)。僕、多分止められないから…」
「もう!斎生ったら!大好きよ♡」
もちろん僕もですよ♡なにこのバカップルぶり(笑)僕はこの人の明るさを失わせたくないと思っていた。僕の横にいたら、いつもこんな風に笑っていられるって僕の愛しい人に刷り込んでやろうと思った。
「今日はね、もうすぐ桜も終わっちゃうからシャツはピンクね♡」
昨日に引き続き、榊さんの手にかかると僕は少しだけ男前になれた(笑)。
ネイビーブルーのスーツに薄ピンクのシャツ、ネクタイはネイビーに白のドット柄。
「僕…。チャラくないですか?」
「何言ってるの!ピンクっていっても桜くらいほんのりピンクよ!それにネイビーのネクタイはシックにまとめてくれるから大丈夫なの!」
「僕…ピンクって着たことないです…」
「ほら、胸張って!だいたい斎生の顔はそんなに濃くないから、やらしくならないわよ(笑)」
僕は鏡の中の自分に言い聞かせた。この人の隣に立ち続けるんだろ!もっと自分を磨かないと置いてかれるぞ!
「れ、玲児も素敵ですね」
榊さんは(やっぱり仕事モードの時は『榊さん』がしっくりくる…)チャコールグレーのスーツにブルーのクレリックシャツ、ネクタイはネイビーとピンクのレジメンタルタイを締めていた。
「ここがお揃いよ♡」
自分の胸元を指差した。ネクタイが僕のスーツとシャツの色にリンクしていた。
「格好いいですね」
ふふんと鼻を鳴らし、得意そうに笑った。
「でしょ?(笑)」
「はい(笑)」
僕たちは向かい合ってお互いの目を見つめて笑った。よし!完璧♡
「斎生?」
「はい」
「今日もまた朝から部長が接触してくるはずよ。だけど…」
「ん?だけど…なんです?」
榊さんは珍しくモジモジしている。
「ん?玲児?」
「…。部長へのハニトラは趣味じゃないからね?仕事なんだから…。」
可愛い!僕が気にするの心配してる!
「分かってますよ。玲児は僕のこと大好きですもん(笑)」
「ヤダ!」
真っ赤になった榊さんは可愛い僕の恋人の顔をしていた。
会社に着くと、昨日ほどじゃないけれど少なくない女子社員の視線を感じた。
「榊さん。やっぱりチャラいんじゃ…」
榊さんはジロッと僕を睨んだ。
「何言ってるの!季節に合わせたシックで格好いいスタイルだって何回言ったら…」
「榊君。ちょっといいかな?」
影山部長が昨日の仕掛けに早速食いついた。今朝は、なめまわすような視線ではなく、愛おしそうに榊さんを見つめている…。ちょっと!僕の恋人なんですから!そんな目で見ないで下さい!!
やっぱり僕は拳を握り締める羽目になっていた。僕はどんだけこの人の事を好きなんだろ?
「井坂くん。先に行っててくれる?」
え~…。ヤダ。
「でも…」
「すぐですから」
榊さんがコラっと目で怒った。でも、その奥は優しいんだよな…。
渋々といった雰囲気を醸しつつ、がっつり後ろ髪を引かれてデスクに向かった。大丈夫かな…。
影山部長と榊さんは資料室にいた。
「君の私への想いはしっかり伝わったよ…」
部長の手が榊さんの腕に伸びてきた。
「良かった…。貴方みたいな(どうしようもない)人は初めてでしたから…」
捕まれる前に影山部長の手をキュッと握った。捕まれるの嫌なのよね。
「それで、お話って?貴方の(罪を暴く)ためなら、お手伝い(して証拠掴むわよ)したいです♡」
「君は見た目によらず、可愛いんだな♡」
「嫌ですよ(キモいわ)♡可愛いだなんて(斎生以外に言われると嬉しくないわ💢)」
仕方なく手を撫でられながら(キモいわ~)、部長の計画を聞いていた。
「玲児、エロ部長になんかされた?」
榊さんは眉間にシワを寄せていた。
「手を撫で撫でされたわ💢」
「えっ!嫌です!」
今度は美月さんが眉間にシワを寄せていた。
「家でやって💢」
榊さんは部長から引き出した情報をボスの前で話した。
「今進行中のプロジェクトで、聞いたこと無い会社と契約を結んで仕事を発注するって言うの」
「どんな仕事?」
「材料費、制作費、企画立案の手数料みたいな名目でね」
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