倫理観の叩き直しが必要です!

ハジメユキノ

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「親父…。会長!どういう事ですか!取引先の社長にキックバック要求するように指示したんですか!」
『一也。私は指示していないよ』
「じゃあ誰が…」
一也は父親でもある会長に電話をかけていた。
『一也。それに関して今まで調査していたんだ』
「えっ?調査って…。何か知ってるのか?」
『今から言うところに来てくれないか?場所は…』
「えっ?蕎麦屋?」
『そこで飯でも食いながら話そう』
「飯なんか食ってる場合じゃ!」
『いいから。会わせたい人達もいるんだ』
……………………………………………………………………
「何で西さんが?それに君たちは…。榊くんに、長谷さんに、井坂くん…だったかな?」
「よくご存知ですね」
「長谷くんはいつもノーメイクで仕事してるのによく気付いたな」
僕たちのボスである会長、白戸一人(しらとかずひと)は自分の息子の目に感心していた。
「ホントですよ。隣のデスクの人間でも分からないのに(笑)」
美月は一也の洞察力に驚いていた。絶対誰にも見破られないと思っていたのに…。
「だって、化粧しなくたって君は綺麗だから…」
美月の顔が一瞬で沸騰した。
「な…何を仰って…」
「コラコラ。僕の大事な娘を早速口説くんじゃありませんよ(笑)」
とボス。
「そうですよ。僕にとっても大事な娘なんだからね」
西さんも釘を刺した。
「ガードが凄いね(笑)」
美月は真っ赤な顔を見られたくないのか、下を向いてモジモジしていた。
「昨日の姿からは想像出来な…痛っ!」
美月のヒールが僕の脛を蹴った。そこ…。弁慶の泣き所…(泣)。
「美月!斎生を虐めないでよ!」
「だって…」
あら!美月…。堕ちちゃったかしら(笑)。可愛い♡

「さあ、とにかく腹ごしらえしてください。ね?一也さん(笑)」
西さんに促され、一也は西さんご自慢のお蕎麦をごちそうになった。
「ん!美味しい…!」
西さんは嬉しそうに一也が食べるのを見ている。
「蕎麦の香りが鼻から抜けて、細いのにコシがあって…。俺、好きです(笑)」
「一也さんは昔から変わらないね。率直にものを言う…。僕のお蕎麦を気に入ってくれてよかった…」
「ホントに美味いです。俺、結構蕎麦にはうるさいんですよ(笑)」
「さっ!お腹を満たしたら、作戦会議。始めますよ」
ボスが皆のお父さんみたいだ(笑)。

お蕎麦屋さんの奥には立派なオフィスが隠されている。
「親父…。いつの間にこんなとこ…」
「ここでは、僕はチャーリーと呼んでもらっています」
「チャーリー?」
助けを求めるように僕を見た。
「チャーリーズエンジェルがお好きなようで(笑)」
「どっちかって言うとチャーリー浜…」
「美月!」
一也が思わず吹き出した。
「チャーリー浜…。やばい。はまった(笑)」
「浜でもいいから!とにかく始めますよ」
ボスの一声で、僕たちは真剣さを取り戻した。

「待って…。あの事件もつながってるのか?」
美月が頷いた。
「その前から、リオネル社のもっと前からこの仕組みは出来ていたかもしれない」
「あと…。一也さんはこれから奴らにはめられる予定です」
「は?何で俺が?」
「リオネル社のことが明るみに出ようとしてるからです」
榊さんが一也さんにそのトラップについて説明し始めた。
「鈴木経理課長が影山と佐川に弱味を握られて、陥れたい社員の口座番号を漏らしています。彼らはその口座に怪しい入金を繰り返すんです」
「不正なキックバックの金?」
「まぁ一部でしょうが。それをわざとリークします。お金の流れをそっちに向けて、自分たちは難を逃れる…。といったカラクリのようです」
「それであの子は自殺したのか…」
「それについては別の事件も関わってきます」
「別のとは?」
美月の顔が曇った。榊さんがそれはあとで、と話の流れを戻した。
「今度のターゲットはあなたです、一也さん。あなたの給与振込口座に不可解な入金がされてきます。一也さんに相談してきた会社の社長によると、佐川が前社長に指示されたって事でしたよね?」
「ああ。だからこうして直接親父を訪ねてきたんだが」
「でも、リオネル社について影山と佐川が報告に行った相手は…。現社長の高城のようです」
「高城が?なんで…。本当なのか?」
「ええ。ちょうど一也さんが会社にいない時間帯に社長室に影山と佐川が入っていきました。佐川に仕掛けたアプリが位置情報と会話の内容を送信していて、ここに保存されています…」
「スパイなのか?君達は…」
「誰にでもこんなことしてはいません。事の発端は…」
美月が口を開いた。
「私の友人、紗江子の事件のあと…。佐川が影山に紹介されたお嬢様と婚約して、サラリーマンが持つには高すぎる腕時計をし始めた。恋人が亡くなったのに悲しむでもなく、他の女に乗り換えて、羽振りが良くなったの」
「それは…。女の勘みたいなものでは?恋人だったにしても、着服して起訴されてしまったような女性では…」
「悲しむに値しない?」
「いや…。ごめん。値しないなんて、人が亡くなっているのに。でも、それだけではグレーな感じで終わりそうだけれど…」
「確かにそうですね。でも、容疑者が亡くなっていたためになのか、ろくに捜査されなかった」
美月さんが辛そうだったので、僕は続けて話し始めた。
「紗江子さんの事件のあと、うちの会社の株が暴落しましたよね。その時、それを利用して儲けていたんです…」
一也さんに空売りの件を話した。
「当時、社内で紗江子さんがスケープゴートだったんじゃないかって噂があったんだそうです。そこで僕は仮説を立てた。事件で暴落する株の空売りと、社長の交代が目的だと。紗江子さんを犯人に仕立て上げる準備は自殺に追い込まれる前から始まっていました。佐川は影山から資産家のお嬢様とのお見合いを進められ、乗り換えようと思いました。でも、紗江子さんとの結婚が決まった矢先だったので、紗江子さんに結婚を諦めさせる必要が出て来た…。そこで、佐川はごろつきの実の兄にあることを依頼した」
「あることって…」
「紗江子さんのあられもない姿の写真を撮らせて、襲わせたんです」
一也さんは顔を歪めた。
「なんてことを!」
「紗江子さんはそのことを苦にして自ら命を絶ちました。佐川たちは、それまでに紗江子さんの口座に自分たちが水増し請求して手に入れていた金を繰り返し入金しておきました。亡くなってから水増し請求したお金を紗江子さんがいかにも着服していたように画策してからリークした」
「じゃあ…。彼女はシロ?」
「当たり前じゃない!紗江子は着服なんかしない!だって…派手好きだけど、浪費することもあったけど、その分ちゃんと節約するような子だったのよ!結婚式…楽しみにしてたのに…」
「そんな彼女の死を利用して…。株価の暴落を知っていた真犯人はうちの会社の株を空売りした。案の定暴落したあと、買い戻して儲けていました…」
一也さんは美月が泣くのを我慢しているのを見て、さっき自分が口走った事を後悔していた。
「長谷さん…。さっきの言葉は取り消します。申し訳なかった…」
一也さんは美月に向かって頭を下げた。
「知らなかったらそう思うのが普通です。頭を上げてください…」
「でも、君の気持ちを考えてなかった。友達のことをそんな風に言われたら傷つくもんな…」
美月は下の人間でも関係なく頭を下げられる一也を不思議な人だと思っていた。こんな人に会ったことない…。
「ね?斎生…。美月と一也さんって…」
「一也さんは独身なんですか?」
「それは大丈夫よ(笑)」
斎生は真面目でいい子ね♡それにしても、誰にも本気にならなかった美月をここまで揺さぶった男は初めてじゃないかしら…。これは…。楽しみだわ♡
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