僕の背中

ハジメユキノ

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記念日

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告白騒動から二週間。秀人はようやくいつものクールなイケメン建築家に戻った(笑)。
「智也、今日普通に帰ってくる?」
秀人は今、三件の一般住宅と一軒の美容院の設計を抱えて忙しくしていた。
「俺は…。確か今週は落ち着いてるはず。何で?」
「うん?今晩施主さんとの打ち合わせが入ってるから、一時間くらいはいつもより遅くなるかも…」
「夕ご飯は任せてよ!俺には力強い味方が…」
「夕飯の心配じゃなくてさ…。忘れてるな…」
「忘れてる?や!忘れてない!」
「今思い出した?(笑)」
「えへ(笑)そう…」
今日は二人が想いを通じ合えた記念日。智也は一緒にいられる事をいつも奇跡だと、時々自分のほっぺをつねっていた。でもこの前、秀人が智也の前で見せた涙でお互いが大切な存在だと改めて確かめ合った。智也は秀人を愛してること、秀人が自分を同じように愛してくれてる事が幸せ過ぎる!
「今日はね、僕が連れて行ってあげたいレストランを予約してるんだけど…」
「時間間に合うの?」
「ん~…。どうだろう?」
「ゆっくりしたいから今度にしても…。それに、お尻の時間が決まった状態で打ち合わせしても落ち着かなくない?」
「ぐっ…おっしゃるとおり…」
「今日は俺に作らせてよ」
にっこり笑う智也に以前とは違う余裕を感じ、いい男になってきちゃったなぁと複雑な秀人だった。

秀人が打ち合わせする住宅は、新築ではなく古民家をリフォームしたいという要望で、山間の集落の手前を入った築100年を優に超えた立派な建物だった。
「こんにちは、と言うかこんばんはですか?(笑)」
「すみません。私も主人も時間が作れなくて…」
「それはお気になさらず。私も今日は三軒目の打ち合わせなので(笑)」
「ありがとうございます(笑)このままでもいいって言ったんですけど、雑誌で先生の作品見たらもう少し直したいって…」
「俺は彼女がもっとくつろげる空間にしたくて…。俺の勝手で田舎から通わせてるもので…」
「奥様は会社を経営なさってるとか?ご主人も私立探偵…格好いいですね(笑)」
「そんな格好いいもんじゃありませんよ。小説みたいな事件は起きませんから(笑)」
「そうですよね。そんなしょっちゅう事件に巻き込まれたら大変ですよね(笑)」
和やかな雰囲気で打ち合わせはスムーズにいった。お二人は長年連れ添ってる雰囲気だったが、打ち解けて話しているうちに、結婚してまだ2年ほどしか経ってないという。それなのにすごくお互いに大切にし合っていて、見ているこちらも幸せになってしまうくらいあったかいご夫婦だった。
主にご主人が話していたが、奥さんがよく本を読むので壁一面の本棚を作ってあげたいとか、飼っている猫たちのキャットウオークを作って運動させてあげたい等々、ほぼ自分以外の家族のための要望ばかりで、愛情深い人だなぁと感心していた。
「それにしても立派な建物ですよね。陽当たりも良さそうだし、なんせ天井が高い。梁を利用して本棚からキャットウオークをつなげて一つの空間にしても面白そうですね(笑)」
「あと、今オイルヒーターなんですが薪ストーブ欲しいんですよね…彼女も猫たちも寒がりなので(笑)」
タキシードを着たような柄の猫を抱いた奥さんが、ご主人の横で微笑んでいた。この人はほんとにご主人のこと好きなんだろうなと伝わってくるくらい嬉しそうにご主人を見ていた。
「キッチンについては何かご要望ありますか?」
「そうですねぇ…」
「僕の家族がインテリアコーディネーターなんです。キッチンの事も詳しいので今度連れてきてもいいですか?」
「そうなんですか?お話聞けたら嬉しいです」
綺麗な奥さんだけど、微笑むと少女のようなあどけない顔を見せる女性で、久しぶりにちょっとドキッとしてしまった。
リビングとキッチンのリフォームをしましょうかと言う方向で話は決まり、今日聞かせていただいた内容を帰ってつめてくることにした。
帰ったら智也に話さなくちゃとウキウキしながら施主さんのお宅をあとにした。

家の玄関を開けた途端、とてつもなく美味しそうな匂いが鼻をくすぐった。
「ただいま~!やっぱり智也の言うとおり、外食延期してよかったよ」
「おかえり秀人!やっぱそうでしょ?」
エプロン姿の智也が振り返って笑っていた。
うわあ!僕のツボ過ぎる!
秀人はカバンとジャケットを放り投げてキッチンの智也をバックハグ!
「ちょっと!秀人!危ないよ!」
「だって…裸エプロン…」
「俺服着てるよ!」
「もう、僕の目には智也の裸エプロン姿が…」
火を止めて、お鍋に蓋をして、智也は秀人に向き合った。秀人は怒られる?と思ったが…。
「しょうがないなぁ」
智也の方からキスしてきた。
「えっ?」
「今日はラブラブの日でしょ?」
いつもなら僕は怒られてる所なのに…。いいの?

今日の智也は最高にエロかった!
いつもなら僕の方が智也の体をくまなくキスして確かめていくのに、今日は立場が逆転した!?
智也は僕にキスをすると、跪いてベルトを外し、ファスナーを下ろすと下着の上から僕のにキスをしてくれた。そして、大切そうに両手で包むと口で愛し始めた。
「と、智也…。そんなことしなくていいから…」
「ん…」
智也は僕の顔を見上げて笑った。
「秀人はいつもするでしょ?俺だってあなたにはしてあげたいことは全部しようって思ったの」
そう言うとそれ以上何も言わず、愛おしそうに僕のものを智也は愛し続けてくれた。
「智也…、ちょっともう我慢でき…」
出そうなのに智也は口を離してくれなくて、秀人はたまらず出してしまった…。
「ご、ごめん!ほら、ティッシュに出して」
「ん、待って」
智也!ダメだって!
智也は自分で準備し始めた。
「ね、僕がやる」
智也をカウンターに手を付かせて、後ろから抱きしめながら後ろを弄った。
「今日はすぐ柔らかくなるね…」
僕はお返しに智也の後ろに口づけていった。
「やっ!ダメだよ、そんなとこ…」
「僕の愛しい人のものは全部愛さないとね♡」
可愛いそこは恥ずかしさからか、綺麗なピンクに染まった。
「秀人…」
智也が僕を呼ぶときは、僕が欲しくなった合図だ。もう容赦出来ないな…。
いつもなら優しく挿れるのだが、智也が可愛すぎていきなり奥までグイッと差し込んだ。
「あっ!お、奥…」
智也はカウンターについた手を必死に突っ張り、僕の激しい動きを受け入れていた。
「ごめん!痛くない?」
「ん、あっ!!イクっ」
ぶるっと震えると、パタタと床が濡れた。智也の力が抜けて崩れ落ちそうになり、僕はしっかりと抱きしめた。
「俺…腰抜けそう(笑)」
振り向いた智也は僕に優しいキスをした。
「ね、夕飯もう少し後でもいい?」
僕の言葉に、智也は珍しく「いいよ」と言ってくれた。

「あ~おなかすいたよ…」
「ごめん!嬉しくて…つい(笑)」
もぉ~とむくれた顔をする智也だが、夕ご飯の仕切り直しを二人でぱぱっと済ませると、やっと食べられる!と嬉しそうにテーブルについた。
「すごいね!ごちそうだ♪」
智也は記念だからとネットで調べながらブイヤベースを作ってくれていた。ごはん好きの智也が珍しくバゲットをガーリックトーストにして添えてくれてて、冷えた白ワインでちょっとおしゃれなディナーを演出してくれた。
「さすがインテリアコーディネーター!」
カトラリーとグラスはピカピカに磨かれ、濃いブルーのマットの上で輝いていた。
「ありがとう、智也。大変だったでしょう?」
智也は笑って、
「実はブイヤベースの素で作ったから、味付けは間違いないよ(笑)」
「でも、魚介って下ごしらえ大変じゃない?」
「まあでも…いつもやってることとそんな変わんないし、贅沢しても家で作れば外に比べれば安上がりだよ(笑)」
「主婦!」
「節約節約(笑)美味しいはずだよ!秀人、ワインお願い」
手慣れた様子でワインのコルクを抜くと、綺麗に磨かれたグラスに注いだ。グラスを手に取り、灯りにかざすと琥珀色のワインがきらめいた。
「最初に僕の家に来たときも白ワインで乾杯したね…」
「うん。なんか懐かしい…」
「あの時、智也を捕まえてよかった。かなり勇気がいったんだよ…。怖かったけど、頑張ってよかった…」
「怖かった?」
「そりゃ怖かったよ。智也がゲイじゃないのは分かってたし、僕が気持ちを伝えたら気持ち悪がられるかもしれないって…」
「俺…他の人だったらダメだったけど、多分会う前から秀人の事は好きだったよ」
秀人の目が眼鏡の奥できらめいた。涙が瞳に膜を張っていた。
「幸せだ。僕の所に来てくれて…」
「俺だって何度自分のほっぺをつねったことか(笑)」
テーブルで向き合った二人は、お互いの顔を見つめながら笑った。
「食べよっか」
「うん!冷めないうちにどうぞ!」
幸せな味のブイヤベースは、二人の記念日をあたたかく包んだ。ブイヤベースを作るたびにこの夜を思い出すんだろうなって智也は幸せそうな秀人を見ていた。
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