パープルリボン

ハジメユキノ

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理由

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加戸は朝から疲れ切っていた。昨日、若者との慣れない会話でだいぶ消耗し、その上伽耶が家に帰れない理由を考えていたら眠れなくなり、ようやく眠ったと思ったら目覚ましに起こされたのだ。
「んあ~」
言葉にならない変な声を出してのびをする加戸の背後から周作が忍び足でやってきた。
「諒、変な声出すなよ」
「わっ!何だよ…。周作か」
「何だよとは何だよ!」
周作は加戸が珍しく考え込むような顔をしていたのが気になって立ち寄ったのだ。
「何だか疲れてんな?あれからすぐ帰らなかったのか?」
こいつ…。よく見てるな。
「ん~…。ちょっとしたトラブルにぶち当たっちゃって、成り行きでJKを助けたんだが…」
「え?あの時間は補導…」
「いや、年齢は19。留年して高3だって知ったのは、送り届ける直前だったんだ」
「そりゃ大変だったな」
「まぁな。それより気になる話をしてたのが気になって…」
加戸のこの顔の理由はそこか…。周作は加戸らしいなと思い、笑みがこぼれてしまった。
「何笑ってんだよ…」
「いや、やっぱりお前はいい奴だなと思ってさ(笑)」
「それはいつものことだろうが!いや…その子が警察なんか信用出来ないって言ってたんだよ」
「俺らが嫌いって奴は沢山いるだろ?」
加戸の顔はそういうんじゃないと、少し怒っていた。お前にだって分かるはずだと。
 「…。なんとなく理解した」
「あの年頃の女の子が警察に相談に来るってことは、結構勇気の要ることじゃないか?それなのにちゃんと対応されなかったようだ」
「どこの署だろう…」
「…。うちだよ…」
なくは無いなと納得してしまった。ここは中心街にあるから、緊急性がないと判断されると後回しにしがちだ。歯がゆい思いをしたことはこれまで何度もあった。
「なんて言ってたのか分かるか?」
加戸は苦虫をかみつぶしたような顔をした。
「父親に何かされるかもしれないと…。母親は父親のいいなりだから、このままだと危ない気がするから、どうにか助けて欲しいと…」
「それでなんて答えたんだ?」
加戸の顔は怒っていた。
「まだ何もされてないの?だと。とりあえず生活安全課に回しておくねと…。俺は知らなかったよ」
怠慢なのか、さばく仕事が多すぎるのか?やるせない気持ちで聞いていた。
「親はどんな人間だ?」
「普通の会社員だとよ」
どこが普通なんだよ!と椅子を蹴っ飛ばしたい気持ちになったが、加戸が内に怒りをたぎらせているのを見て一つ提案した。
「もう一度相談に来るように言おう」
「相談?何でだよ」
「相談に来たという事実が警察に残るし、一度だけで諦めないで何度も相談に来れば、さすがに聞いてくれる人間も出てくる。俺らはもちろんそうだけど、女性の力を借りるのもいいんじゃないか?」
うちの課のあいつなら…。頭をぐるっと回すと、斜め後ろのデスクの同僚が目に入った。
「佐野!ちょっといいか?」
「何?今、報告書まとめてるんだけど」
「聞きたいことがあるんだよ」
だったらお前が来いよ!と言う台詞を顔に書いたまま佐野がやって来た。
「悪いな。ちょっと相談があってさ」
「珍しいわね。相談なんて…」
「家庭内暴力にもいろいろあるだろ?娘が父親に何かされるかもしれないなんて相談に来たとしたら、まず男の俺らみたいなのじゃなくて、女性警察官の方が話しやすいよな?」
「そうね…。でもいきなり知らない相手に伝えるのもきついかもね…。加戸の知り合いなの?」
「知り合いと言えるほどは知らないが、昨日訳あってその子を助けた。送り届けるついでに話はしたけどな」
「まさか家に?」
「いや、友達の家にだよ」
「その友達はきっと仲いいのよね?」
「だと思う」
「じゃあ一緒に来てもらってさ、こっちも加戸と私で会ってみようか?」
「いいか?」
「何のための生活安全課よ」
やっぱりこいつに声を掛けて正解だったと加戸は思っていた。

その頃、伽耶は学校が終わって、またバイトに行くために駅に向かっていた。なるべく親の助けを借りることなく高校を卒業して独り立ちしたい…。そのためには夜遅くなってもバイト掛け持ちしなきゃ…。
考え事をしていた伽耶は目の前に車で母と父が待ち構えている事に気付くのが遅れた。
「伽耶、迎えに来たよ」
優しさを装った母の声。その隣で微笑む父が伽耶に手を伸ばした。
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