パープルリボン

ハジメユキノ

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卒業

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伽耶の母親は取り調べに対し、自分勝手な言い分を繰り返していた。杉本に丸め込まれて婚姻届を出していないが、もう伽耶は児童扶養手当の受給年齢を超えていたので早く結婚して欲しいと懇願していたが、杉本はのらりくらりと先延ばしにしていたという。
今更捨てられたくはないと、杉本の言うことを聞くしかなかった、あの人を愛していたと訴えていた。
「だから娘を売ろうとした?杉本が言うから娘を陵辱しようとした?…ふざけるんじゃない!」
取り調べを担当したナベさんは珍しく感情を露わにしていた。
杉本は取り調べに素直に応じる訳もない。この男は何度も同じ罪を繰り返している。
「俺は何も知らない。あの女が俺に気に入られたくてやったことだ。俺に惚れてるからな(笑)」
「ふざけたこと言っていられるのも今のうちだ…」
今回の件だけでなく、今までの余罪も次々と明るみに出ていた。さすがに今回は一桁の年数では済まないだろう。
女は最初の段階では杉本を庇っていたが、取り調べが進むにつれ杉本が何を言っているのかを伝えられると、自分はあの男に騙されていたと言い始め、一緒にいたときに他の女性に対して何をしていたかペラペラと喋り始めたという。
「自分以外の女性が杉本に搾り取られていたのに、自分だけは違うと思っていたのか?」
「わたしはあの人に大事にされてました」
「杉本が働きもせず、あなたの稼ぎで暮らしていても?」
「…。わたしは風俗になんか売られてないし…」
「娘が風俗に売られても、それでも自分は愛されてると言えるのか?」
「…。私にはプロポーズしてくれたわ」
「何年前の話だ?あなたには可哀想だが、それがあいつのやり口だ。娘が売れたら、その事であなたは脅され、同じ道を辿っただろうな…」
「!」
女は自分が騙されていた事をようやく受け入れようとしていた。それでも杉本が自分に言った言葉の全てが嘘だったとは思いたくなかったようで、その後しばらくは口が重かった。

「俺があの女と結婚?娘を売るような女と?そんな薄情な女はさすがに萎えるな(笑)」
笑いながら杉本は言った。
「お前が唆したことは分かってるんだよ。他の被害者の分もたっぷり償ってもらうからな」
「被害者?俺は女と付き合っていい思いさせてやってたんだ。勝手に俺に貢いできたんだよ!俺はその点では罪深い男だよ(笑)」
「💢」
この男には反省という概念がないようだ。長い時間を塀の中で過ごして頂くとしよう…。

女の口がようやく開いてきた頃、ナベさんは女に言った。
「何であの日、俺達があんなに早く現場に到着したと思う?」
「えっ?」
「あなたが愛した男がそれだけ危険な男だったということだ。未成年を売り飛ばす事に一瞬も躊躇しないだろうと踏んだからだ」
女は突きつけられた現実に打ちのめされていた。そしてそれからは聞かれたことに素直に答え、伽耶の様子を心配するような言葉も出てくるようになっていった。

伽耶はあれから1週間、冴と冴の家族が支えてくれた。加戸も何度か顔を出したが、冴の存在は大きかった。おかげで伽耶は落ち着きを取り戻しつつあった。
「伽耶!王子様来たよ(笑)」
冴がふざけて言うと、伽耶は真っ赤になっていた。加戸は冴のこの悪ふざけにどうにも慣れなかった。
伽耶…。反応しすぎだろ。
「冴ちゃん…。ほんとにやめてくれ」
「だって超かっこいいじゃん!」
「冴…。まじで私、加戸さんの顔まともに見れないんだから…」
冴はあんまり面白がってからかっていたからか、お母さんに首根っこ捕まれて、和やかな笑顔のお母さんと退場していった。
「元気になってきたか?」
「うん…。あの」
「ん?何?」
伽耶はほんとに恥ずかしそうにしていた。何だか可愛いな…。
「ありがとう…。ちゃんとお礼言えなかったから…」
「俺の仕事だからいいんだよ、お礼なんて…」
「でも、加戸さんじゃなかったら間に合わなかった…」
伽耶はあの恐怖を思い出したのか、自分で自分を抱きしめていた。
「難しいかもしれないけど、前を向いて笑って生きていこうよ。笑ってる顔の方がいいよ」
「加戸さん…」
「看護師の夢はどうするんだ?」
「うん!担任の先生が教えてくれた所、働きながら資格取れるんだって!私、今度面接に行ってくるの」
晴れやかな笑顔を見せた伽耶に、加戸は瞬間心を掴まれた気がした。
「いやいや、ここで手を出すわけには…」
「えっ?何ですか?」
「いや!何でもないよ」
二人が和やかに話している部屋の外で、ドアに耳を押しつけて盗み聞きしている母と子が加戸のつぶやきを聞き漏らさなかった。
「ね!やっぱり加戸さん、伽耶のこと…」
「そうね!ふふっ(笑)楽しい~」
「伽耶も絶対好きだよね」
「でしょ♪冴、二人くっつくといいね♪」
「ママと私、キューピットになっちゃう?」
「なっちゃうなっちゃう♪」
お節介なキューピット二匹がドアの外で企んでいることも知らず、加戸と伽耶はそれぞれお互いを好ましく思っていた。
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