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プロローグ
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「ぁ……」
魔術大国アナシアの東のほうにある村。
そこで今一人の命が誕生した。
弱弱しくなく彼女を愛おしく彼女の母親が抱きしめる。
「よかった……、本当によかった……」
「うん、本当に……ぅぅ」
死産ーーーそう最初に聞いていた命だった。
だが、彼女は奇跡的にも生きた状態で生まれ、健康状態も良好。
最悪を想定していた二人にとっては、神様がこの赤ちゃんを安全に生ませてくれたと思えるほどにうれしかったのだ。
赤ちゃんには、恩恵を受けた子として「アンナ」という名前を授けた。
時折だが、父ーーーヘルゼンは思う。
この子は本当に赤ん坊なのかと。
決して赤ん坊らしからぬ動きをしているわけではない。
しかし、常に周りをきょろきょろとみており、自分たちの会話に入ろうとするかのように声を上げることがあるのだ。
だがヘルゼンは残念なほどの子煩悩。
『もしやうちの子は天才ではないのだろうか』
そう考えた彼は、母ーーーーマヤに相談し、簡単な絵本から難しい本までとにかく読み聞かせをすることにした。
それから彼女は何事もなくすくすくと成長し、今年6歳になる。
自我がだんだんと形成されていく彼女だったが、どこかかけているような感じだった。
アンナ自身もそれを自覚しており、いつも何かを探すように家やその周辺を歩き回っていた。
そんなある日、彼女に変化が起こる。
いつものように寝ていると、今まで見たことなかったけどなぜか懐かしくーーーそれでもって思い出したくない姿を見る。
ぼんやりとシルエットのようになっていたそれは、だんだんと輪郭を鮮明にし、徐々に記憶もよみがえる。
(そうだーーーー、そうだっ、私は!!)
ーーーー「目覚め」ーーーーー
長い夢を見ているような気分だった。
だが、今ではちゃんとわかる。
そうか、私は転生したのか。
実感はないものの、これが現実であるということは自分の触覚、嗅覚、視覚、聴覚が確かめている。
「……ふぅ」
袋に知らずのうちに空いた穴から空気が漏れるように、ため息をつく。
思い出したくもない前世の記憶。
だけど、あの記憶を思い出さなければ、現世でも私は他人の言われるがままに動き、自分のやりたいことをあきらめ抑制していただろう。
今は違う。
前のつらい記憶を思い出したおかげで、自分自身に強く誓ったこともしっかりと思い出した。
「もうあきらめてやるもんかーーーー、か」
言葉に出すと不思議とやる気が湧いてくる。
そうだ。
もうあきらめてやるもんか。
私がこの世界で命を落とした時に、もう満足だといえるように生きる。
「じゃあ早速動かなきゃ、私!」
頬をはたき、気合を入れる。
前までの落胆した気持ちで何となく生きる毎日ではない。
これからは私が私であるために生きるのだ。
魔術大国アナシアの東のほうにある村。
そこで今一人の命が誕生した。
弱弱しくなく彼女を愛おしく彼女の母親が抱きしめる。
「よかった……、本当によかった……」
「うん、本当に……ぅぅ」
死産ーーーそう最初に聞いていた命だった。
だが、彼女は奇跡的にも生きた状態で生まれ、健康状態も良好。
最悪を想定していた二人にとっては、神様がこの赤ちゃんを安全に生ませてくれたと思えるほどにうれしかったのだ。
赤ちゃんには、恩恵を受けた子として「アンナ」という名前を授けた。
時折だが、父ーーーヘルゼンは思う。
この子は本当に赤ん坊なのかと。
決して赤ん坊らしからぬ動きをしているわけではない。
しかし、常に周りをきょろきょろとみており、自分たちの会話に入ろうとするかのように声を上げることがあるのだ。
だがヘルゼンは残念なほどの子煩悩。
『もしやうちの子は天才ではないのだろうか』
そう考えた彼は、母ーーーーマヤに相談し、簡単な絵本から難しい本までとにかく読み聞かせをすることにした。
それから彼女は何事もなくすくすくと成長し、今年6歳になる。
自我がだんだんと形成されていく彼女だったが、どこかかけているような感じだった。
アンナ自身もそれを自覚しており、いつも何かを探すように家やその周辺を歩き回っていた。
そんなある日、彼女に変化が起こる。
いつものように寝ていると、今まで見たことなかったけどなぜか懐かしくーーーそれでもって思い出したくない姿を見る。
ぼんやりとシルエットのようになっていたそれは、だんだんと輪郭を鮮明にし、徐々に記憶もよみがえる。
(そうだーーーー、そうだっ、私は!!)
ーーーー「目覚め」ーーーーー
長い夢を見ているような気分だった。
だが、今ではちゃんとわかる。
そうか、私は転生したのか。
実感はないものの、これが現実であるということは自分の触覚、嗅覚、視覚、聴覚が確かめている。
「……ふぅ」
袋に知らずのうちに空いた穴から空気が漏れるように、ため息をつく。
思い出したくもない前世の記憶。
だけど、あの記憶を思い出さなければ、現世でも私は他人の言われるがままに動き、自分のやりたいことをあきらめ抑制していただろう。
今は違う。
前のつらい記憶を思い出したおかげで、自分自身に強く誓ったこともしっかりと思い出した。
「もうあきらめてやるもんかーーーー、か」
言葉に出すと不思議とやる気が湧いてくる。
そうだ。
もうあきらめてやるもんか。
私がこの世界で命を落とした時に、もう満足だといえるように生きる。
「じゃあ早速動かなきゃ、私!」
頬をはたき、気合を入れる。
前までの落胆した気持ちで何となく生きる毎日ではない。
これからは私が私であるために生きるのだ。
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