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第二章 一つしかない選択肢の決断
第11話 見たことがある石
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子供の母親に騒がれてから、落ち着くまでずっと路地裏に隠れていた。幸い、見つからずに済み、ようやく動けるようになった。
その頃には、高かった日も沈み始め、赤い光がユリーファの頬を照らす。
状況が整理できるほど、ユリーファには情報はなかった。ただ、『金髪』は、『悪魔』というイコール関係にあるということ、それぐらいは理解出来ていた。
「どうしよう…まだそんなに動くと顔が見えるから危ない気もするし。かといって、このまま動かないってのも…」
侍女たちによく注意されていた独り言。前と違うのは、誰も注意してくれないということ。
「家のみんなは、私に慣れてくれて…怖がらなくて…今思えば、良いお姉さんだったなぁ」
『お嬢様は、少々考え方や行動が不思議なだけで、ちゃんとお嬢様ですよ!むしろ、面白い方だと思っております』と、よく年の近い侍女のフィルがユリーファが落ち込んでいた時に、慰めてくれたことを思い出していた。
その時、ふと自分の横を通り過ぎた人に見覚えがあった。その人の顔はフードで隠れていたが、その奥にキラリと光るピアスは見ることが出来た。
そのピアスのチャームが変わった形だったのだ。まるで、雫の形が少し欠けてしまったような形。ユリーファは昔、それをアイディーニの邸で見たことがあった。
それは、アイリーの部屋でのことだった。そこで、アイリーが引き出しからそっと『その石』を取り出し、ゆっくり眺めていたのだ。その後、視線に気づかれて怒られてしまった。
その時は青い石だった気がしたが、今のは紅い石だった。それに似たようなものだって、たくさんあるだろうし、もしアイリーなら、あちらからユリーファに声をかけるだろう。
ゆっくり考えれば、ユリーファにもそのことに気がつくことが出来ただろう。ただ、それが出来ないほど彼女は焦っていた。
自分の知り合いかもしれない。そのことだけで頭がいっぱいだった。
「アイリー叔母様!」
その頃には、高かった日も沈み始め、赤い光がユリーファの頬を照らす。
状況が整理できるほど、ユリーファには情報はなかった。ただ、『金髪』は、『悪魔』というイコール関係にあるということ、それぐらいは理解出来ていた。
「どうしよう…まだそんなに動くと顔が見えるから危ない気もするし。かといって、このまま動かないってのも…」
侍女たちによく注意されていた独り言。前と違うのは、誰も注意してくれないということ。
「家のみんなは、私に慣れてくれて…怖がらなくて…今思えば、良いお姉さんだったなぁ」
『お嬢様は、少々考え方や行動が不思議なだけで、ちゃんとお嬢様ですよ!むしろ、面白い方だと思っております』と、よく年の近い侍女のフィルがユリーファが落ち込んでいた時に、慰めてくれたことを思い出していた。
その時、ふと自分の横を通り過ぎた人に見覚えがあった。その人の顔はフードで隠れていたが、その奥にキラリと光るピアスは見ることが出来た。
そのピアスのチャームが変わった形だったのだ。まるで、雫の形が少し欠けてしまったような形。ユリーファは昔、それをアイディーニの邸で見たことがあった。
それは、アイリーの部屋でのことだった。そこで、アイリーが引き出しからそっと『その石』を取り出し、ゆっくり眺めていたのだ。その後、視線に気づかれて怒られてしまった。
その時は青い石だった気がしたが、今のは紅い石だった。それに似たようなものだって、たくさんあるだろうし、もしアイリーなら、あちらからユリーファに声をかけるだろう。
ゆっくり考えれば、ユリーファにもそのことに気がつくことが出来ただろう。ただ、それが出来ないほど彼女は焦っていた。
自分の知り合いかもしれない。そのことだけで頭がいっぱいだった。
「アイリー叔母様!」
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