北大陸のアーヘルゼッヘ

ふみはなえ

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13.十年に一度の盛大なお祭りです

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「いいんですよ。肩書きじゃなく、実質、仲介者になって欲しいというだけですから。大祭に北の方がやってくる。恐ろしいが、貴重な体験になると興奮してくる。それで、十分我らの目的にかなっている」
「目的ですか?」
「ええ。北の恐怖を緩和して、世界の平和を祈ろうと言う気になれるのですから」
「世界の平和…」
「大祭の目的は、大地に眠る神々に世界の平和を訴えるものですから」
「眠る神々…」
「ここは、オアシスの町です。地中の神が、人間に生きよとささやき、泉を吹き上げさせる町。ハーナルホーンと言う名の由来です。神々がこの大地に眠っているという信仰があるのですよ」

アーヘルゼッヘは、チウの後ろの噴水を見た。砂漠の真ん中にある町で、惜しげもなくあふれ出る水がある。神を探したくなるはずだ、とアーヘルゼッヘも思った。

「北の方。あなた方が、その特異な目で、大地の下に何を見ようとも、人間のわれわれの思いを否定すようなことはおっしゃらないでください」
ひどくまじめな顔をしていた。アーヘルゼッヘもまじめに答えた。
「ええもちろん。言わないと誓います。それに、思考が自然を凌駕することはままあることです。本当に、人間の神々が眠っておられるかもしれない」
と、最後の部分はつぶやきだった。

答えながら、アーヘルゼッヘは、北の大地で眠る人々のことを思い出していた。もし、北大陸でも同じように祭りを行い、眠る彼らの心に平和を唱えることができたなら、みんな起きてくるのではないだろうかと言う気がした。

毎年誰かが地下へ向かう。別れの宴は、賑やかだがさびしくて、水晶宮の奥へ続く扉では、まるで死出の旅立ちを見送るような気がしてしまう。死の別れと言うのをよく知らないのだが、それは、こんな感じかもしれない、と思う。

人それぞれだから、止める者はだれもいない。しかし、生まれる子供はほとんどいない、北大陸では、深刻な問題になりつつあった。アーヘルゼッヘを含め、ここ百年で三人しか子供が生まれていない。成鳥が必要なほど大勢の子供がいない。

自分が成熟するころには、誰もいない北大陸になるかもしれない。アーヘルゼッヘは、しんと静まり返った地下空間のような、変わり果てた北の大地を想像して、背に冷たいものを感じた。

手を伸ばしても、心の温かさが返ってこない世界は、アーヘルゼッヘにとって死の世界と変わらなかった。
「大祭ですか…」
「ええ。十年に一度の盛大なお祭りです」
「賑やかになれば、神々が目を覚ますでしょう」
とうらやましい気持ちをこめて言った。すると、チウは苦い顔をして、
「目を覚ますのは、利得に敏感な人間達ですよ」
「チウ殿…」
「チウで結構。あなたは? 北の方にも、声を出して呼んでいい呼称がおありだとお聞きしました」
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