人形撃

雪水

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書き置き、そして現在

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誰も気がついていないが村長の家には一通の書き置きがあり、その中にはこう記されていた。

「かつて厄災の引き金と呼ばれ恐れられていたもの、それこそが人形である。もう過去の話なので今の人形がどうかは知らないがあの旅人が持っていた人形は禁忌そのものであった。今思えば彼は荷物に触られるのを殊に嫌っていたが今、辻褄が合った。彼はこの村を危険な目に合わせないためにあそこまで厳重な対応を取っていたのだ。そして今までの村や集落のお祓いもきっとあの人形を媒体として行っているはず。つまりあの人形の中の呪霊の中にもまた呪霊が住み着いているのだろう。今から120年前、唐笠村がまだ集落だった時からのおとぎ話の中にこんな話があるのを思い出した。

『人形を貶すもの人形に貶される者、人形を嫌うもの人形に嫌われる者。
人形を傷つけるもの人形に傷つけられる者、人形の怒りを買う者人形撃に合う物。』

今ならこの意味がわかる。人形の中にはなにか秘め事が隠されている場合が多くそれにむやみに手を出すものは等しく滅ぶ運命だと。唐笠村はあの呪霊の永久の住処となるだろう。そして最後の生き残りである我々もじきに終りが来る。その前にこれを書き残すことができて良かった。」


現在、唐笠村周辺にはこんな言い伝えがある。

今から数百年前、とんでもない厄災が唐笠村を襲い、その厄災は今も唐笠村に住み着いている。
厄災のせいで土地は荒れ果て一切の色合いが失われたことにより、唐笠村はこう呼ばれている。

唐笠村、改め空華彩村と。
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