金魚鉢

雪水

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水に浮かぶ月を蹴る

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明日がどうにも寂しくて、来てほしくなくて、そんなことばっかり願ってて

手元にあった金魚鉢を目的もなく指先でいじっている

そんなとある黄昏時、暗夜浮かぶ月を蹴るために私は海辺へと裸足で出かけた

波風落ち着く夕凪の中ただ1人荒れた感情を抑え込む私と強く抱いた金魚鉢

中の金魚はやけに落ち着いていて

それが私の神経を更に逆撫でしてくる

あぁ腹が立つ

世界が夜暗に包まれだした頃、今にも爆ぜそうなくらいに満ちた月が顔を覗かせた

悲しいくらいに世界は無音で様相を変えていく

何も変わらないように、ただひたすらに表情を変えず

姿だけが変わっていく

何が悲しいのか

何がさみしいのか

私にはいまだに分からない

音が無いのが悲しいのだろうか

私の手の及ばぬところで世界が変わるのが悲しいのだろうか

私は何もできずただこの享受した生を生き抜くしか無いことが悲しいのだろうか

金魚ですら私より楽しそうに揺蕩っていることがさみしいのだろうか

ひたすらに気温を奪われていくこの夜がさみしいのだろうか

ただ、ただ私の心がさみしいのだろうか

私にはもうわからない

かつて彼が言った 死んだら姿を変えてまた会いに来るね

前の彼と変わってしまった彼の姿を分かれないのが悲しいのだろうか

変わってしまった彼の姿が分からないからさみしいのだろうか

水に浮かぶ月の上に金魚鉢を重ねて置く

私は一息に水に浮かぶ月を蹴った

遠くに飛んでいく私の月

遠くに飛んだ私だけの月

中の水も花も水草もすべて溢れ

金魚はすでに見当たらなかった

だから私は金魚鉢に海水と花だけを入れて持ち帰った

何も特徴のなかった花は赤黒く染まり

彼氏の座右の銘を思い出した

『徒花の待ち合わせ』

「死んだら地獄で待ち合わせ」
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