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過去編(三角関係・攻めが片想いで鬼畜なので注意)

墜落①

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【千星 那由多】


ブラックオウルとの戦いの後、俺と巽はみんなと別れ、ボロボロのまま巽の家へと向かった。
巽の家は母親が一人で居酒屋を経営しているのだが、昼間は別の仕事をしているため誰もいない。
このまま家に帰ってとやかく言われるよりは、先に手当をして帰ろうということで、巽に手当をしてもらうことにした。 


通い慣れた道を行くと、まだのれんのかかっていない小さな居酒屋がある。
個人経営の居酒屋で、上に住居があると言った感じだ。
夜は結構繁盛していて、俺も何度か手伝いをさせてもらったこともあった。 

巽は表の鍵を開け引き戸のドアをガラガラと開ける。
いつも見ていた景色と匂いが俺を少し懐かしくさせた。

最近巽んちにも行ってなかったしな。

中学時代はよく遊びに来ていたけど、(裏)生徒会に入ってからはまったく足を運んでいなかった。

巽に「どうぞ」、と促されると軽く挨拶をしてからそのまま中へと足を踏み入れる。
挨拶をしないと巽のかーちゃんに怒られるので、このドアをくぐると挨拶をするという癖が身についていた。 


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【天夜 巽】


うちの母親のせいか那由多が俺の家に入ると挨拶するのは変わらない。
今回の件を振り返ると俺が先走っただけで元から那由多は何も代わってなかったのかもしれない。

そのまま、三階にある俺の部屋へと案内する。
色んな部活を掛け持ちしていた俺は大体の傷を手当てできる用意はある。
流石にこんなに傷だらけの相手を手当てするのは初めてだけど。

「那由多。服脱いどいて、俺、湯くんでくるから。あ、それとも大丈夫そうなら、一緒にシャワー浴びる?」 


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【千星 那由多】


「ああ脱いどく…ってあびねーよ!!」

いつも通りの巽の茶化しに今まで通りに突っ込む。
あーなんかこういう会話も久々だ。

巽が笑いながら部屋を出た後、俺は先に靴下を脱ぎ、その次に上着を勉強机のイスの上へとかけた。
白い上着と私服のズボンは泥や血が固まり汚れている。
結構気に入ってたやつなんだけどな…と俺はベルトを外しズボンも一緒にイスへとかけた。 

Tシャツを脱ぐために身体を動かすのがつらい。

「いで、いでででで」

俺がそう言いながらシャツをゆっくりとまくり上げていると、巽が大きめの桶にお湯を入れて持ってきたのが見えた。 


「…巽…上脱がすの手伝って」

俺は苦笑しながら腹を出した状態で巽へと頼んだ。 


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【天夜 巽】


「ざんねーん。」


そう呟きながら外に出た俺は、先に風呂場で自分の傷を洗い、服を着替えてから、那由多に貸す新しい服と湯を持って部屋に戻る。 

そうするととんでもなく情けない格好で那由多は固まっていた。
そんなところは本当に変わらないのに俺と戦った那由多は別人のようだった。

俺は那由多から見えないところで少し表情を翳らす。
今回は俺が(裏)生徒会に入ると言うことでかたがついたが実際この案が無ければ、那由多との関係がどうなっていたのかわからない。 
きっとこんな風に笑い合うことはもう無かったであろう。

そして、今後こんなことがあっても那由多はきっと自分が正しいと思ったときは譲らないだろう。
そう思うと胸が苦しくなったがそれを押し隠して、服をそのままひっぺがえす。


「那由多ももうちょっと鍛えないとね。
あそこにいるなら体、もたなそうだよ ?」

そう告げがら、痛がる那由多に我慢我慢と言いながら丁寧に血液や泥を拭っていく。
利き手の左手を痛めていたので少しやりにくかったが極力表情には出さないようにした。 


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【千星 那由多】


戻って来た巽に服を脱がしてもらうと、大きく息をつく。

「ほんと鍛えないとな…。
前よりは筋肉ついたんだけどな」

そう言って苦笑しながらベッドへと腰を掛けると、巽は濡れたタオルで血や泥を拭ってくれた。


「いだっいたいいたいいたい!」

我慢と言われるが痛みには慣れていないからどうしても痛い。
でも巽はなるべく優しくやってくれてると思う。


「なんか風邪ひいた時にかーさんに身体拭いて貰ったの思い出すな」

そんなことを言いながら俺の前に膝を付いて腕を拭いてくれている巽を見る。
ここ最近はあれだけ怖い巽を見てきたのに、今目の前にいる巽は違う人物のようだった。
だから、自分の中の恐怖も顔を出さないのかもしれない。

あの時の巽や男達に犯された光景は忘れられるわけがなかったが、なるべく思い出さないようにしていた。
話に触れなければ、きっと大丈夫だ。


けれど、巽の手が太ももへと当たった瞬間、俺は身体が少しビクリと反応してしまった。
何事もないように黙っていたが……気づかれただろうか。 


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【天夜 巽】


「俺に言わせたらまだまだだよ。」

他愛ない会話をしながら、那由多の体を丁寧に拭っていく。
那由多は俺がしたことを忘れてしまったかのように穏やかだった。
それのほうが都合がいいはずなのに何だか俺は少し悲しかった。

少し不謹慎な気持ちが混じり始めながら体を拭う。
俺の体は一度触れてしまった那由多の体を覚えていて嫌でも反応してしまう。
それを知ってか知らずか那由多の内腿に触れたときに那由多は反応を返してくれた。 

恐怖と言う反応を。



俺はグッと眉を寄せてから那由多を抱き締めた。

「ごめん、那由多…、…那由多…もう一度ちゃんとさせて?
那由多の記憶にある俺があんなのじゃ…嫌なんだ。」

そう告げながら互いに痛む体をぎゅっと更に抱き締めた。 


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【千星 那由多】


巽に抱きしめられると、余計に身体が強張る。
突き放そうかと思ったその後に投げかけられた言葉で、息が詰まった。 


もう一度、ちゃんとさせて…?


この意味は多分…セックスをするということだ。
あの日巽に犯されたことが頭の中を駆け巡る。
考えないようにしていたのに、こいつから言い出すなんて思ってもみなかった。 

俺は息を飲むと、巽に抱かれたまま、暫く無言の時間が流れた。 


もう一度巽に抱かれれば、忘れられるのだろうか。
あの時の行為を?恐怖を?
いいのかそれで?
親友と、男と、そんな関係になっていいのか?

そんな取り留めもないことを考えていると、何故か晴生の顔が浮かんだ。


…?


無言のまま抱きしめていた巽が一度離れ、優しい瞳で俺の瞳を見つめる。
その目から視線を逸らせないまま返事をしない俺に、巽は唇を重ねてきた。 

何故か抵抗はできず虚ろな思考の俺に、巽は何度もキスを落としてくる。 


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【天夜 巽】


那由多はいいとも嫌とも言わなかった。
それでも、俺は返事を聞くまで我慢出来なくて、何度もキスを落とす。
唇、頬、額、鼻先、ゆっくりゆっくりと行為を進めていく。
傷に触らない程度に脇腹を撫で、首筋に唇を埋めると何度も何度もそこを舐め上げてから、痕を残すように吸い上げる。 

優しく優しくと自分に言い聞かすように何度も繰り返してから、そっと那由多のぺニスを下着の上から撫で上げ、そのまま下着に手を侵入させていく。 


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【千星 那由多】


いたる所にキスを落としていく巽を、頭で理解できなかった俺はそれを虚ろな目で見ていた。
しかし、下着の上からペニスを触られた瞬間に、身体が過剰に拒否反応を示した。
それと共に脳内が覚醒したように熱くなる。


「やっ、やっぱダメだ!ダメだって!」


とっさに出た言葉は抵抗だった。
俺は下着の下に侵入してくる巽の手を掴み止める。

「こ、こんなの、よくないって…」

俺は震える声で巽に投げかけた。

「あの時のことは確かに忘れたいけど……忘れたいけどこんなの間違ってる。 俺は…もっと他の事で関係を直したい…」


鼓動が早くなっていく。
「断れば嫌われるかもしれない」なんて感情が、少なからず自分の中にあるからだ。
そんな俺の気持ちを自分でごまかすように、首筋についたキスの痕をひっかく様に撫でた。 


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【天夜 巽】


手が下半身に差し掛かったところで拒絶されてしまった。
捕まれた手は那由多が放った炎で焼け爛れていたので自然と表情が歪む。 

那由多が言うことも一理ある。
でも、俺は那由多としたくて堪らなくて、反応し始めた性器を隠すように内腿どうしを擦り合わせる。 


「那由多の言ってることは分かる…けど、俺がもう一度シたいんだ。
那由多が嫌なら無理には出来ないけど…。
俺、もう一回、那由多を抱きたい。」

捕まれてない方の手でゆっくりと那由多の頬を撫でる。また何度も唇以外にキスを落とし、ダメ?と、聞くかのように小首を傾げた。 


「全部、俺の我が儘なんだけどね。」 


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【千星 那由多】


もう一度俺を抱きたい。
という言葉に顔が熱くなるのが分かった。

俺がたじろいでいると、巽がまた唇を重ねてくる。
そして、小首を傾げながら巽は強請るような声をあげた。


巽はあまり俺に我儘を言わない。
俺に対して口うるさいことはたくさんあるが、自分が欲しいものなどを俺に掲示したことは数少なかった。
なので、時々強請られることに正直俺は弱かった。
「嫌なら無理にはできない」と言っているが、嫌がってもなんだかんだで諦めないのが巽だ。 

俺は子犬のような目を向ける巽をチラリと見てからすぐに目を逸らす。


「じゃあ…ケツ……は無し…ち、ちんこ触るくらいならいい。んで、もうこれっきりだからな」


我儘を了承したのは、早くこの空気から抜け出したいという気持ちもあった。
最後までやるのはさすがにまだ恐怖心の方が強い。
とりあえずこれで諦めてくれればいい…んだけど。 


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【天夜 巽】


「わかった…那由多が、それで満足できるなら。
ほら、寝転んでていいよ。」


そう言って、俺のベッドに那由多を押し倒す。
その勢いで下着も剥ぎ取り、更に足を思いっきり開かせた。
足を閉じれないように俺はその間に入るようにベッドに乗り上げる。
あんなことをしたのに那由多は恥ずかしいのか俺に目を合わせてくれない。 

那由多の裸体は俺を高揚させる一方だった。
ただしごくのも勿体ないと思った俺に妙案が浮かび笑みを湛えた。 


「那由多、痛いの苦手だから気持ち良いのと一緒にやっちゃおうか?」

そういって俺は消毒液を片手に取り、左手でぺニスを扱きながら、右手で怪我をしている部分に消毒液を垂らしていく。 


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【千星 那由多】


俺が満足できるなら、と巽にベッドに押し倒された後、下着をはぎ取られる。

「!!」

潔く脱がされて股まで開かれる方が確かに変に緊張はしないが、やはりこの格好は…恥ずかしい。
巽の顔が見れず視線を逸らしていると、巽は俺に言葉を投げかけた。


「那由多、痛いの苦手だから気持ち良いのと一緒にやっちゃおうか?」


その言葉に意味がわからないままでいると、傷の部分に何かを垂らされ身体が痛みに反応する。 

「――ッ!?」

その何かを垂らされた部分を見ると、巽は消毒液を俺の傷口に垂らしているようだった。
それと同時にペニスもゆっくりと扱き始める。

「ちょっ…しみるっ…て…!あッ…!」 

傷口がしみて思わず声があがる。
その独特の痛みとペニスへの刺激も相まって、どちらで快感を感じているのかわからず頭が混乱してくる。 


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【天夜 巽】


「気持ちよくなった後に痛い目みたくないでしょ?
一緒にしちゃえば、すぐ終わるからさ?」


緩急つけてぺニスを扱きあげる。
その間も満遍なく傷口に薬を垂らしていく。
消毒する行為は我慢出来なくは無いが、痛いことは痛い。
それと快楽をごっちゃにしていってやる。


「はい、目瞑って?」


勿論、容赦なく顔にも消毒液をかけていくので、めをひらいたら入ってしまうかもしれない。
那由多は快楽と痛みを同時に受けて混乱しているのか、気持ち良さそうにぺニスが勃起している。
それを扱きあげる手を止めることなく、脱脂綿で軽く傷口を拭っていく。

そこまですると一度手を止めてやり、軟膏を救急箱から取り出す。
那由多は、これだけの行為で気持ち良さそうにはぁはぁと胸を上下させて居たので、その胸の頂にちゅうっと吸い付いてやる。 

「ん。もうちょっと、我慢しててね。」 

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