ぼくのこと

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性_05/19

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居心地の悪い家から抜け出そうと思い部屋着を脱ぎ捨てた
たまには違うものを、と思いクローゼットを開く。
ごそごそと漁っていると淡い水色のスカートにフリルのついた半袖のブラウスがセットで出てきた。
きっと姉の物だろう。
お下がりに、と置いてくれた。
スカートということと姉の物ということで、あまり気は乗らなかったが着てみた。
姉は身長が高かった。恐らく160はあっただろう。
ぼくには少し大きくて、けれど丁度良くて。
少し、安心した。
鏡に目を向けると傷だらけの肌を露出したぼくが映っていた

( 醜いなあ… )

姉は綺麗な肌を持っていたのだろうか。
傷ひとつない、真っ白な肌を。
意味も無くくるりと1周回るとふわりと広がったスカートの下から傷がみえる。
動いたことによりズレたブラウスの下からも。
やっぱり、ぼくには似合わない。滑稽だ。
当然、見劣りする。
こんな姿を大嫌いな彼奴等に見られてみろ。死ぬ。
そう思いそそくさと服を脱ぎ、シワにならないように出来るだけ綺麗に畳んだ。
服は何度みても可愛くて、綺麗で、ふわふわで。
女の子。って感じがして。
少し、羨ましくなってしまった。
ぼくだって生まれながらの性は勿論女。
けれど心の中では女として生きていたくない。
それでも、可愛いモノも、可愛い服も、好き。
以前誰かに言われた “  女の子でよかったね  ” を未だに引き摺ってる。
女の子だから、可愛い服を着ても違和感がない。
女の子だから、自由にできる部分がある。
女の子だから、…、
認めたくないんだ、ぼくは。
女の子のはずなのに、胸は無いし、生理不順過ぎる。
それに、女の子って言われると、嫌になる。
よく、わからないね。
どうしたいのかわからない。
一先ず畳んだ服を仕舞い直す。
そして無難にジーパンとパーカーを着た。
お財布とスマホ、ICOCA、その他必要なものを小さな鞄に忍ばせ、家を出る。
いまにも雨が降りそうなどんよりとした空を眺め、駅へと向かって歩く。
冷たくて重たい空気が、ぼくの身体を切った。
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