ぼくのこと

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シオン_08:35

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畳張りの部屋で誰かと笑いあっていた
誰かは分からないけれど
畳と襖、座椅子、小さな机、まるで昔の家のような場所。
団欒を成していた。
けれど突然閉めていた襖のドアが空き着物を纏った綺麗な女の人が大声を上げた。
その直後、何人もの人が入ってきた。
そして1人の少年を殺そうと追いかけ始めた。

そこからの記憶は曖昧、恐怖が勝ってしまったから。

ぼくを含めその他数人の少年少女達も怯えた様子を見せた。
それはそうだろう、既に血のついたような先端が紅く染まった日本刀のようなものを突きつけているのだから。
時代劇ですか、と言いたくなるような現場。
今すぐにでもユメは覚めて欲しかった。
少年は呼吸を荒らげて噛み付いた。
そのままどこかの部屋へと吹っ飛ばされ、それに続くように他の兵のような人達も追いかける。
気付けば部屋にはぼくらだけになっていた。
部屋の角に縮こまっているとまたもや襖が開いた。
けれど現れたのは現実のぼくには見覚えのある人だった。
何故ここに保健の先生がいらっしゃるのだろう。
歪む視界と曖昧な脳内で考えた。

みんな、早くここを出て

そういわれた。
ああ、相変わらずこのユメの世界はリアルだ。
声も、色も、物も、感覚も。
そしてぼくはみんなに続き部屋を出た。
先生のような方は  “  大丈夫?  ”  と声をかけてくれた
話し方までそっくりなのか、と苦笑した。
現実で言えばいいことをぼくはその人に向けて言った

「  いつもありがとうございます  」

いいのよ、はやく行って。と笑ってくれたあの方は
何処と無く先生に似ていて吐き気がした。
廊下のような場所はぼくの通っている学校を和風にしたような場所だった。

…へんなゆめ

ぼそっと呟き慌ただしく走る人たちを横目にいつものように歩いた。
駆けていく人たちがちらっとこちらを見る。
いつもの反応と同じだな、としか思えない。
次第にゲームの出口のようなものが見えそこに入った。
その先にはバッドエンドだけが残されていた

真っ暗闇の中微かに光る何か。
無数に吊り下げられている点滴のようなモノ。
ピコっと聞き覚えのある電子音がした。
大嫌いで大嫌いでだいきらいでだいきらいでだいきらいで仕方がない、病院のような場所。
まるで手術台、解剖台。
そんな場所に寝かせられた人の中に大切な人がいた

…なんで

なんでぼくはこんな夢ばかりみるのだろう。
正夢になるのでは無いかと不安になる夢ばかり見るのだろう。
結局誰かが心肺停止。
まるで、お前は独りなんだ、と言われたかのように
暗闇の中ぽつりと残される。
 崩れ落ち泣き叫ぶ
何も変わらない。
ただ現実世界を生きるぼくが
喉を痛め、吐き気を催し、
愚痴を吐き続け、泣き咽ぶ。
いつも通りだ
最悪だ
嫌になる
嫌にならないわけが無い
不安定になりそうになる気持ちを落ち着けようと泣きながらお人形さんを強く強く抱き締める。
温かみのないそれは苦しいともいわずただぼくに抱かれる。
きっとこれは追憶だ
シオンのような
儚さと美しさを持ち合わせないぼくの
引き摺り続ける過去となる。



あはっ、
もういやだよ、ぼく。
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