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閑話 平民主人公、奮闘を決意する。
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パナセアを追い出してから数日、わたしを無理矢理教育しようとするモンスターのようなおばさん達を混乱させたり魅了させたりして、同じように軟禁されているムフェル様を助けて一緒にラブラブデートを街中で繰り広げていた。
時にはムフェル様以外にも、フォース様やリッチ君も連れて仲良く遊んだりもした。
将来のお父さんとなる国王様や、お兄さんとなる第一王子第二王子の二人から何か小言を言われてたけどガン無視しておいた。
だってわたしは必ず王妃になって、ムフェル様は王様になるのだから、お小言なんて必要ないんだもの!
そう思い続けて、漸くわたしとムフェル様の婚約発表が国民に告げられる事となった。
「ムフェル様! ようやくお父様が認めてくれましたね!!」
「ああ! まったく、父上達め……。婚約発表を告げるのならば速く言えば良いものを!」
両手を挙げて喜ぶわたしを見ながらムフェル様も喜んでくれたけれど、すぐに彼らに対する愚痴を口にした。
そうよね。なんで速く言ってくれないのかしら! ムフェル様の愚痴を聞きながらわたしも心の中で王様達に文句を呟く。
「まあいい、今まではお忍びでデートをしていたが、これからは大手を振って街中でデートが出来るぞ!!」
「そうですねムフェル様! わたし、嬉しいですっ!!」
言いながら、わたしはムフェル様へと抱きつく。すると、成長気味なわたしの胸の感触に彼は嬉しそうに頬を緩める。
ちょっとエッチな反応だけど、そんな一面もムフェル様のひとつだもの。わたしは受け入れるわ!!
それから数日後、わたし達の婚約発表が全国民に告げられる日が来た。
ざわざわ、ざわざわとこの日、国王様の言葉を聞く為に街の人達が王城の前へと集まっているのがテラスから見えた。
ああ、この人達はわたし達の婚約発表を祝福してくれる人達だと理解し、胸がわくわくし始める。
そして今か今かと国王様の言葉を待つ。……ちなみにわたしとムフェル様は婚約発表の為に呼ばれるまで待機中だ。
『あ、あー、テステス。マイク、テスト中……』
周囲に響く声、前のわたしの世界にもあったマイクに近い物を持った国王様の声が周囲に響く。
……これはカオス商会が売り出している魔道具の一つだけれど、カオス商会なんてお店はゲームにはなかったはずなのにね。
そう思いながら国王様の国民に対して来てくれた事への感謝と、在り来たりな台詞を口にしていた。
「ふぁあ、まだ時間かかるのかしら……」
「まったくだ。俺が王となったらそんなまだるっこしい挨拶など無くしてやる」
わたしの言葉を聞きながら、ムフェル様は顔を顰めながら頷く。
そんなわたし達の会話が聞こえているのか、宰相様や第一、第二王子のお兄様がたの視線が強く感じられるけれども無視した。
『では次に我が息子である第三王子ムフェル・F・ハッズの婚約に着いて発表を行う! 二人とも前へ!!』
「ようやく呼ばれたか。さあ、シェーン。前へと行こう!!」
「はいっ♥」
差し伸ばされたムフェル様の手を掴み、わたし達は国王様の隣へと出る。
瞬間、冷たい視線が一斉に突き刺さったような気がしたけれど、わたしは気のせいだと思う事にした。
『あー……皆も知っている事だろうが我が息子ムフェル・F・ハッズがこの度、シェーン・メニーナ嬢と婚約する事となった……』
あの国王様? 何か一気にテンションが下がってません?
そんな風に思いながら、まるでわたし達の事を祝福していない国王様を不満気に見ているわたしとムフェル様だった。
けれども次の瞬間、耳を疑った。
『同時にムフェル・F・ハッズの王位継承権を剥奪! ならびに血縁を排除する!! そして第二王子レジオン・L・ハッズを王太子とする!!』
「「なっ!?」」
国王様の言葉に驚愕を受けているわたし達を他所に、先ほどまで壁の置物と化していた第二王子のお兄様が前へと出てくると国王様の前へと跪いた。
「謹んでお受けいたします……!」
それを見た瞬間、街の人達は待っていましたと言わんばかりに万雷の拍手を第二王子のお兄様へと贈りつけた。
は? え? え? ちょ、っと、ちょっと待って……? え? え? ど、どういう事なの??
国民に向けて告げられた言葉に呆然としているわたし達を他所に、周囲は祝福ムードとなっていた。
●
「どういう事ですか父上っ!?」
発表が終わり国民が散り散りに去って行き、国王様達も城の中へと入ってしばらくしてようやく正気に戻ったわたしとムフェル様は急いで謁見の間へと駆け込みました。
そして開口一番怒鳴るようにしてムフェル様は国王様を睨みつけながら問い詰めました。
「言葉通りの意味だが?」
「だから何故、俺が婚約と同時に廃嫡されるのですか!? いや、そもそも王太子は俺だったのではっ!?」
淡々と告げる国王様に対し、ムフェル様は炎のように吼え続ける。
そんなムフェル様を国王様は呆れたような瞳で見つめ、わたしもチラリと見ました。
「はぁ……ムフェルよ。お前のような者に王太子を任せると思っているのか?」
「任せる事が出来るから俺が王位継承権第一位だったのでしょう!?」
「はっきりと言わせてもらうが、兄達は職務に就いている為に王になるのは嫌だと言っていた。だから最後に残ったお前に王の座を与えただけだったのだ」
「えっ!? うそぉ……」
呆れたように言う国王様の言葉にわたしはポツリと声を漏らす。
普通一番優秀だからなるって思ってるじゃない!
「だ、だったら、だったら何故突然このような事をっ!?」
「何故……か。お前は王になる。それが分かっているというのに自ら学ぶ事を行わず、日々遊び惚けておったのだ? ……分かっているのか? お前がパナセア嬢を追い出してからはその傾向がますます酷くなったという事が」
「なっ!? 遊び惚けてなのが悪いのですか!! 国王が元気な姿を民達に見せれば皆はやる気を出すでしょう!?」
「そういう問題ではないのだ。……おい、こいつにこれまでの請求書を見せろ!」
「「はっ!!」」
国王様の合図でそれまで待っていた文官二人が前へと出て、ムフェル様とわたしの前へと山積みの紙を置きました。
これは一体何なのか? そう思いながら紙を一枚取ると、それはわたしがムフェル様におねだりをして買ってもらったドレスの請求書だった。
もう一枚捲ると、同じくおねだりして買ってもらった宝石の請求書。次は皆で食べた高級レストランでの食事の請求書。
「な、なんなのこれっ!?」
「何ですか、この請求書の山は!?」
「言っただろう? これはお前達四人、ムフェル、メニーナ嬢、フロルフォーゴ家の長男フォース、アシール家の長男リッチがパナセア嬢を追い出してからの、政務を抜け出して購入したり、飲食をした請求書だ」
「それがいったいどうしたと言うのですか父上!? このような金額が書かれた紙など取って置く必要などないではないですか!?」
バサっと請求書の束を床に投げ捨てながらムフェル様が怒鳴り声を上げます。
素敵、凛々しい! そんな感想を抱くわたしに対し、第一王子のお兄様が呆れた溜息を吐いた。
「はぁ……ムフェル。お前が使った金は国民の税金から出されている物だ。勝手に使っていい物ではない」
「?」
「分かっていないって顔だな……。つまりは自分で使える金だけで行っていれば良いものを限度を超えすぎていたんだよお前はっ!!」
「だ、だからといって、相談も無しに廃嫡はないじゃないですか! いくら家族だからといって、横暴じゃないですか!」
怒鳴りつけられるムフェル様を擁護するようにわたしは前へと飛び出し、国王様達へと文句を口にする。
同時にわたし達の言う事が正しいと思うようにこっそりと≪ヒプノ≫を使用する。
すると、国王様は第一第二王子のお兄様がたや周りの人達はとろんとした表情へと変わって、わたしの言葉で考え直して……って、変わらないっ!?
「え、な、なんでっ!?」
「……近頃、城で働く者達が突然狂った行動を行ったり、メニーナ嬢の言葉を聞く傀儡となったりする事件が多発してるのだが、何か知らないかな?」
戸惑うわたしへと突然第一王子のお兄様が訊ねてきました。
その言葉にわたしはビクッとします。
「え、えと、い、いえ……知りません」
「そうか? 基本的に城で働く者達の大半は貴族だから、間違っても、万が一でも精神異常を来す類の魔法を受けていたら困るんだよなぁ。犯人がもしかしたら平民だったりしたら、その場で斬り捨てても文句はないんだよなぁ……」
え、ちょ、き……斬り捨てっ!? なんでよ、なんでわたしが斬られなくちゃならないわけ!?
第一王子のお兄様の言葉を聞きながら、頭の中が混乱でグルグルする。
というか、王妃になるんだからそんなの別にいいじゃない! でも、あの人達って貴族だったんだよね? あんな真似してたら駄目だったんじゃ……。
そんな感じにグルグルグルグルと頭の中が混乱していると、突然わたしは抱きしめられた。
「兄上! 貴方はシェーンが城の者を操っているとでも言うのですか! こんなにも心が優しいシェーンを!!」
「ム、ムフェル様……」
「あー……うん、目の腐っているお前は勝手に言ってろ。まあ、兎に角何処の誰かさんが精神に異常を来す魔法を使っても大丈夫なように、アミュレットを用意したというわけだ」
言いながら、第一王子のお兄様や周囲の人達がこれ見よがしにビー玉サイズの玉が嵌められたペンダントをわたしに見せます。
……どう考えてもばれている。そう考えると、死刑となるのではないかという恐怖で体が震え始める。
けれどそれを怯えてると勘違いしてくれたのか、ムフェル様は優しく抱きしめてくれます。
「大丈夫だシェーン。君には指一本触れさせないよ。……父上、俺が王位継承権を取り戻す事は出来ないのですか?」
「全国民の前で発表したものだ。簡単には出来ないだろう」
凛々しい表情で国王様を見るムフェル様。それを見つめるわたし。……ああ、何だかこれイベントスチルっぽい感じになってる!
そんな事を思いながらムフェル様を見つめている中で話は進みます。
「それでも、それでも何かあるでしょう! 速く言ってくださいよ父上!!」
「いや。だから出来ないって言ってるのに…………。まあ、しいていうならお前が使ったお金を返済するのが大事だと思うが――「使ったお金を返済すれば王位継承権が戻るのですね!!」――いや、だから」
ムフェル様は国王様を前に一歩も引かずに力強く言います。
ああ、なんてカッコイイ! ますます好きになっちゃいますよ♥♥
「ムフェル・F・ハッズが宣言する! 一ヶ月! たったの一ヶ月で俺が使った借金を返済してみせると!! そして王位継承権を取り戻すんだ!!」
「だから戻らないって言ってるだろ?」
格好よく宣言するムフェル様。そんなわたし達に横やり入れるように第一王子のお兄様が何か言ってるけれども聞こえません。
そして宣言を行うと、ムフェル様はわたしを連れて歩き出します。
「借金をしている金額がどれくらいか計算を行って用意してください。さあ、行こうシェーン! はっはっはっはっはっ!!」
「あぁんっ♥ ムフェル様ぁ素敵ですぅっ!!」
格好よく笑うムフェル様にキュンキュンしながら、ムフェル様とわたしは謁見の間から出て行った。
そんなわたし達を呆れたように見つめる彼らを無視して……。
時にはムフェル様以外にも、フォース様やリッチ君も連れて仲良く遊んだりもした。
将来のお父さんとなる国王様や、お兄さんとなる第一王子第二王子の二人から何か小言を言われてたけどガン無視しておいた。
だってわたしは必ず王妃になって、ムフェル様は王様になるのだから、お小言なんて必要ないんだもの!
そう思い続けて、漸くわたしとムフェル様の婚約発表が国民に告げられる事となった。
「ムフェル様! ようやくお父様が認めてくれましたね!!」
「ああ! まったく、父上達め……。婚約発表を告げるのならば速く言えば良いものを!」
両手を挙げて喜ぶわたしを見ながらムフェル様も喜んでくれたけれど、すぐに彼らに対する愚痴を口にした。
そうよね。なんで速く言ってくれないのかしら! ムフェル様の愚痴を聞きながらわたしも心の中で王様達に文句を呟く。
「まあいい、今まではお忍びでデートをしていたが、これからは大手を振って街中でデートが出来るぞ!!」
「そうですねムフェル様! わたし、嬉しいですっ!!」
言いながら、わたしはムフェル様へと抱きつく。すると、成長気味なわたしの胸の感触に彼は嬉しそうに頬を緩める。
ちょっとエッチな反応だけど、そんな一面もムフェル様のひとつだもの。わたしは受け入れるわ!!
それから数日後、わたし達の婚約発表が全国民に告げられる日が来た。
ざわざわ、ざわざわとこの日、国王様の言葉を聞く為に街の人達が王城の前へと集まっているのがテラスから見えた。
ああ、この人達はわたし達の婚約発表を祝福してくれる人達だと理解し、胸がわくわくし始める。
そして今か今かと国王様の言葉を待つ。……ちなみにわたしとムフェル様は婚約発表の為に呼ばれるまで待機中だ。
『あ、あー、テステス。マイク、テスト中……』
周囲に響く声、前のわたしの世界にもあったマイクに近い物を持った国王様の声が周囲に響く。
……これはカオス商会が売り出している魔道具の一つだけれど、カオス商会なんてお店はゲームにはなかったはずなのにね。
そう思いながら国王様の国民に対して来てくれた事への感謝と、在り来たりな台詞を口にしていた。
「ふぁあ、まだ時間かかるのかしら……」
「まったくだ。俺が王となったらそんなまだるっこしい挨拶など無くしてやる」
わたしの言葉を聞きながら、ムフェル様は顔を顰めながら頷く。
そんなわたし達の会話が聞こえているのか、宰相様や第一、第二王子のお兄様がたの視線が強く感じられるけれども無視した。
『では次に我が息子である第三王子ムフェル・F・ハッズの婚約に着いて発表を行う! 二人とも前へ!!』
「ようやく呼ばれたか。さあ、シェーン。前へと行こう!!」
「はいっ♥」
差し伸ばされたムフェル様の手を掴み、わたし達は国王様の隣へと出る。
瞬間、冷たい視線が一斉に突き刺さったような気がしたけれど、わたしは気のせいだと思う事にした。
『あー……皆も知っている事だろうが我が息子ムフェル・F・ハッズがこの度、シェーン・メニーナ嬢と婚約する事となった……』
あの国王様? 何か一気にテンションが下がってません?
そんな風に思いながら、まるでわたし達の事を祝福していない国王様を不満気に見ているわたしとムフェル様だった。
けれども次の瞬間、耳を疑った。
『同時にムフェル・F・ハッズの王位継承権を剥奪! ならびに血縁を排除する!! そして第二王子レジオン・L・ハッズを王太子とする!!』
「「なっ!?」」
国王様の言葉に驚愕を受けているわたし達を他所に、先ほどまで壁の置物と化していた第二王子のお兄様が前へと出てくると国王様の前へと跪いた。
「謹んでお受けいたします……!」
それを見た瞬間、街の人達は待っていましたと言わんばかりに万雷の拍手を第二王子のお兄様へと贈りつけた。
は? え? え? ちょ、っと、ちょっと待って……? え? え? ど、どういう事なの??
国民に向けて告げられた言葉に呆然としているわたし達を他所に、周囲は祝福ムードとなっていた。
●
「どういう事ですか父上っ!?」
発表が終わり国民が散り散りに去って行き、国王様達も城の中へと入ってしばらくしてようやく正気に戻ったわたしとムフェル様は急いで謁見の間へと駆け込みました。
そして開口一番怒鳴るようにしてムフェル様は国王様を睨みつけながら問い詰めました。
「言葉通りの意味だが?」
「だから何故、俺が婚約と同時に廃嫡されるのですか!? いや、そもそも王太子は俺だったのではっ!?」
淡々と告げる国王様に対し、ムフェル様は炎のように吼え続ける。
そんなムフェル様を国王様は呆れたような瞳で見つめ、わたしもチラリと見ました。
「はぁ……ムフェルよ。お前のような者に王太子を任せると思っているのか?」
「任せる事が出来るから俺が王位継承権第一位だったのでしょう!?」
「はっきりと言わせてもらうが、兄達は職務に就いている為に王になるのは嫌だと言っていた。だから最後に残ったお前に王の座を与えただけだったのだ」
「えっ!? うそぉ……」
呆れたように言う国王様の言葉にわたしはポツリと声を漏らす。
普通一番優秀だからなるって思ってるじゃない!
「だ、だったら、だったら何故突然このような事をっ!?」
「何故……か。お前は王になる。それが分かっているというのに自ら学ぶ事を行わず、日々遊び惚けておったのだ? ……分かっているのか? お前がパナセア嬢を追い出してからはその傾向がますます酷くなったという事が」
「なっ!? 遊び惚けてなのが悪いのですか!! 国王が元気な姿を民達に見せれば皆はやる気を出すでしょう!?」
「そういう問題ではないのだ。……おい、こいつにこれまでの請求書を見せろ!」
「「はっ!!」」
国王様の合図でそれまで待っていた文官二人が前へと出て、ムフェル様とわたしの前へと山積みの紙を置きました。
これは一体何なのか? そう思いながら紙を一枚取ると、それはわたしがムフェル様におねだりをして買ってもらったドレスの請求書だった。
もう一枚捲ると、同じくおねだりして買ってもらった宝石の請求書。次は皆で食べた高級レストランでの食事の請求書。
「な、なんなのこれっ!?」
「何ですか、この請求書の山は!?」
「言っただろう? これはお前達四人、ムフェル、メニーナ嬢、フロルフォーゴ家の長男フォース、アシール家の長男リッチがパナセア嬢を追い出してからの、政務を抜け出して購入したり、飲食をした請求書だ」
「それがいったいどうしたと言うのですか父上!? このような金額が書かれた紙など取って置く必要などないではないですか!?」
バサっと請求書の束を床に投げ捨てながらムフェル様が怒鳴り声を上げます。
素敵、凛々しい! そんな感想を抱くわたしに対し、第一王子のお兄様が呆れた溜息を吐いた。
「はぁ……ムフェル。お前が使った金は国民の税金から出されている物だ。勝手に使っていい物ではない」
「?」
「分かっていないって顔だな……。つまりは自分で使える金だけで行っていれば良いものを限度を超えすぎていたんだよお前はっ!!」
「だ、だからといって、相談も無しに廃嫡はないじゃないですか! いくら家族だからといって、横暴じゃないですか!」
怒鳴りつけられるムフェル様を擁護するようにわたしは前へと飛び出し、国王様達へと文句を口にする。
同時にわたし達の言う事が正しいと思うようにこっそりと≪ヒプノ≫を使用する。
すると、国王様は第一第二王子のお兄様がたや周りの人達はとろんとした表情へと変わって、わたしの言葉で考え直して……って、変わらないっ!?
「え、な、なんでっ!?」
「……近頃、城で働く者達が突然狂った行動を行ったり、メニーナ嬢の言葉を聞く傀儡となったりする事件が多発してるのだが、何か知らないかな?」
戸惑うわたしへと突然第一王子のお兄様が訊ねてきました。
その言葉にわたしはビクッとします。
「え、えと、い、いえ……知りません」
「そうか? 基本的に城で働く者達の大半は貴族だから、間違っても、万が一でも精神異常を来す類の魔法を受けていたら困るんだよなぁ。犯人がもしかしたら平民だったりしたら、その場で斬り捨てても文句はないんだよなぁ……」
え、ちょ、き……斬り捨てっ!? なんでよ、なんでわたしが斬られなくちゃならないわけ!?
第一王子のお兄様の言葉を聞きながら、頭の中が混乱でグルグルする。
というか、王妃になるんだからそんなの別にいいじゃない! でも、あの人達って貴族だったんだよね? あんな真似してたら駄目だったんじゃ……。
そんな感じにグルグルグルグルと頭の中が混乱していると、突然わたしは抱きしめられた。
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「ム、ムフェル様……」
「あー……うん、目の腐っているお前は勝手に言ってろ。まあ、兎に角何処の誰かさんが精神に異常を来す魔法を使っても大丈夫なように、アミュレットを用意したというわけだ」
言いながら、第一王子のお兄様や周囲の人達がこれ見よがしにビー玉サイズの玉が嵌められたペンダントをわたしに見せます。
……どう考えてもばれている。そう考えると、死刑となるのではないかという恐怖で体が震え始める。
けれどそれを怯えてると勘違いしてくれたのか、ムフェル様は優しく抱きしめてくれます。
「大丈夫だシェーン。君には指一本触れさせないよ。……父上、俺が王位継承権を取り戻す事は出来ないのですか?」
「全国民の前で発表したものだ。簡単には出来ないだろう」
凛々しい表情で国王様を見るムフェル様。それを見つめるわたし。……ああ、何だかこれイベントスチルっぽい感じになってる!
そんな事を思いながらムフェル様を見つめている中で話は進みます。
「それでも、それでも何かあるでしょう! 速く言ってくださいよ父上!!」
「いや。だから出来ないって言ってるのに…………。まあ、しいていうならお前が使ったお金を返済するのが大事だと思うが――「使ったお金を返済すれば王位継承権が戻るのですね!!」――いや、だから」
ムフェル様は国王様を前に一歩も引かずに力強く言います。
ああ、なんてカッコイイ! ますます好きになっちゃいますよ♥♥
「ムフェル・F・ハッズが宣言する! 一ヶ月! たったの一ヶ月で俺が使った借金を返済してみせると!! そして王位継承権を取り戻すんだ!!」
「だから戻らないって言ってるだろ?」
格好よく宣言するムフェル様。そんなわたし達に横やり入れるように第一王子のお兄様が何か言ってるけれども聞こえません。
そして宣言を行うと、ムフェル様はわたしを連れて歩き出します。
「借金をしている金額がどれくらいか計算を行って用意してください。さあ、行こうシェーン! はっはっはっはっはっ!!」
「あぁんっ♥ ムフェル様ぁ素敵ですぅっ!!」
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