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第一章 賢者と賢者の家族
第42話 3人のこれから。
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トントントン、と野菜を刻む音が台所に響き渡り、隣では野菜などが煮込まれた鍋が沸騰しているのかシュンシュンと音を立てている。
その鍋の蓋を持ち上げ、中の硬い具材をひとつ取り出し……ベルは軽く串を通す。
「……もう少しでしょうか? それとも……余熱で柔らかくしましょうか?」
呟きながら、彼女は少し考え……余熱で中まで熱を通すことを決めたらしく、鍋を火から遠ざけた。
そして、新たに火の上へとフライパンを置くと、その上へと刻んだベーコンを落とす。
熱されて熱くなっているフライパンに落とされたベーコンはジュワ~~! と音を立てながら焼かれ始め、ギュッと詰まった脂をフライパンへと出していく。
脂が広がったフライパンの中へと刻んでいた野菜を入れ、更に炒めていく。
薄く切られた玉葱が炒められて白から透明へと変わり始め、細長く短冊状にしたジャガイモもしんなりとし始める。
それを見ながら、軽く塩胡椒を加え始めて味を調え、最後の仕上げとして溶いた卵を流し込んでいく。
流し込まれた卵はフライパンの熱でジュワワと音を立てながら、焼かれていくと共に炒められていた野菜を呑みこんで行った。
流し込まれた卵が焼かれていく中で、具が均等になるように掻き混ぜながら硬くなるのを待ち……そろそろ良いだろうと考えたのか、フライパンに蓋をし……クルリと裏返した。
「……うん、良い焼き色です。後はこのまま滑らせて焼けば完成ですね」
楽しそうに呟きつつ、フライパンを見ていたベルだったが……ふと気配を感じ、振り返るとディックが立っていた。
何処か気恥ずかしそうに、だけど……何かを言おうとしているような様子の。
「あ、っと……」
「おはようございます、ディック」
「お、おはよう! ベ、ベル……!」
ベルの言葉が呼び水となったのか、言い慣れない様子でディックはベルに向けておはようと口にする。
それを見ながら、ベルは優しく微笑みながら……折角なのでやってもらうことを考えた。
「……そうですね、ディック。朝食を作っているので、小皿とフォークを向こうまで持って行ってくれますか?」
「わかった。……っと、えっと、どこにあるんだ?」
「えっとですね……」
ディックに小皿などの場所を教えながら、ベルは朝食を作っていき、出来上がったスパニッシュオムレツが大皿に載せられ、リビングのテーブルに置かれたと同時にクラリスも目を覚ましたのか大きな欠伸をしながらやって来た。
焼きたてパン、スパニッシュオムレツ、サラダ、ミルクという朝食を前にクラリスは何時も通り美味しいと口にし、ディックも恥ずかしそうにしながらも……美味しいと口にした。
その様子を見ながら、ベルは微笑みながら食事をするのだった。
◆◇◆◇◆◇
朝食を終え、座学(今日は文字の練習)をして、昼食を取ってから3人は庭に出ていた。
ベルとディック、クラリスの3人は2人がベルと向き合うように立っていた。
「それじゃあ、今から特訓を始めるけど……始めて大丈夫かしら?」
『だいじょうぶ!』
「おねがい、します!」
少し心配そうにベルが尋ねたが2人はやる気に満ちていた。
そのやる気に満ちた2人が眩しかったのか、ベルは一瞬目を細めると……振り返り彼らを見た。
「分かったわ。それじゃあ、何時も通りに始めましょうか。ディックは今度からはちゃんと腕輪を付けてくださいね」
『わかった~~!』
「えっ!?」
どこからか取り出した銀色の腕輪を、クラリスは何時ものように受け取り……ディックはベルが言った言葉に驚いていた。
その様子を見ながら、ベルはクスッと笑うと……ネタばらしをした。
「ごめんなさい、ディック。実はね、私は気づいてたんですよ……クラリスの特訓を窓から見ていたことを」
「っ!?!? ~~~~!!」
ベルの言葉にディックは更に驚いたのか尻尾をピンと立てていたが……すぐに恥かしくなったのか、顔を真っ赤にして俯いてしまっていた。
ディックの反応にベルは言うべきことではなかったと悟りつつ、慌て始める。
「ご、ごめんなさいディック! そんなに恥かしがらないでちょうだい!!」
「だ……だったら、言うなよぉ! 気づかれていないっておもったのに、そんなことを言われたら恥かしくてたまらねーんだから!!」
「そう、よね……男の子だもの、そんなこと言われたら恥かしいわよね? ごめんなさい、今度から気をつけるわ」
『ど~したの、ベルママ、でぃっくおにちゃん?』
謝るベルに、恥ずかしさが頂点に達したディックは怒鳴るように吠える。
そんな彼にベルは一生懸命謝り、その様子をクラリスは首を傾げながら見ていた。
……それから、しばらくはこんな調子だったが、特訓は開始された。
特訓が始まると、2人は一生懸命魔力を扱えるように……途中で投げ出すことをせずに頑張り始めた。
…………そして昼が過ぎ、夜が来て。
……そして、季節は巡っていき……。
◆◇◆◇◆◇◆◇
重い瞼が、ゆっくりと開かれ……、ベッドに寝かされた少女の瞳が豪華な造りの天井を捉える。
一瞬、ここは……? と思い始める少女だったが、すぐに思い出した。
(……ああ、そういえば、ここは……私の部屋、だった……わね)
彼らが与えた自分の部屋、そこに寝ていることを少女は思い出し起き上がろうとする。
だが、体はもうガタが来てしまっているからか……動かない。だから目を軽く横に動かす。
すると、少女の目はベッド脇に控えていた長く艶のある黒い髪を持つ女性を捉えた。
服装は……、少女が流行らせ、この世界に定着させることに成功したクラシックなデザインのメイド服。
改めて女性をマジマジと見る。
黒く長い髪は艶があり、顔は化粧を付けていないのだろうが素が良いのか男性を引き付けるような綺麗な顔立ち。
そしてメイド服に包まれているにも拘らず、たわわに実っている果実が胸元に2つ大きく主張していた。
正直、男なら憧れるであろう巨乳メイドがそこには居た。
『……ディ…………!!』
そんな女性を観察する少女の視線に気づいた女性は、驚いたように少女を見……彼女が目を覚ましていることを確認すると大きな声で誰かを呼ぶのが聞こえた。
すると、女性の声に反応したのか気配が近づいてくるのを感じられた……。
近づいてくる気配、その気配に……彼女の頭は段々と霞みがかっていた記憶が甦っていく。
(これは……、ああ、そうだったわ……あの女性は、あの子で……今来ようとしているのは……)
バンッ! と多分力強く開かれたであろう扉。
その扉の前には獣人族特有の獣耳、けれど体格は只人族のように細い体格の男性が居た。
服装は何処か気品を感じさせるような豪華な衣装とマントであり、何処かの王族のようであった。
男性はベッドで眠る少女を見ると、一気に駆け寄ると顔を近づける。
「ベ――――!!」
『ディ――、目覚――――』
顔を近づけた男性が少女の名前を口にしていると、先ほど男性に声を掛けたメイドが咎めるように声を掛けた。
……その様子を見ながら、少女は優しく微笑み……口を開く。
「……ゆめを、見ていました。あなたたちと、本当の家族になったときの……ゆめを」
少女はそう呟くように言うが、かすれていてどう聞こえているかは分からない……。
けれど、少女は続ける。
「私は、あなたたちを、裏切った……なのに、あなたたちは…………私を、先生と……呼んでくれました」
2人が何かを言っているが、少女にはもう……聞こえない。
それでも、2人が居ることを感じるために、まともに動かなくなっている腕をゆっくりと上げる。
上げられた手を、2人が握り締めると……温かさが伝わった。
あたたかい、ひとのぬくもり……。
その温かさに安堵しながら、少女……ベルは告げる。
「ありがとう、ディック……クラリス……。あなたたちが……いえ、みんなが居てくれたから、私は先生で居られました……。ありがとう……ありがとう……」
お礼を言いながら、ベルは瞼を閉じ始める……。
そんな彼女に、2人の教え子が声を上げる。
『せん、――!』
「ま――か――!!」
「……すこし、つかれました……。また、ねますね……」
――おやすみ、なさい。
そう呟きながら、彼女は静かに瞼を閉じるのだった……。
――――――――――
結構ぶった切るようになりましたが、これで一旦終了となります。
次にお目にかかるときは、話内では数年後からだと思います。
その鍋の蓋を持ち上げ、中の硬い具材をひとつ取り出し……ベルは軽く串を通す。
「……もう少しでしょうか? それとも……余熱で柔らかくしましょうか?」
呟きながら、彼女は少し考え……余熱で中まで熱を通すことを決めたらしく、鍋を火から遠ざけた。
そして、新たに火の上へとフライパンを置くと、その上へと刻んだベーコンを落とす。
熱されて熱くなっているフライパンに落とされたベーコンはジュワ~~! と音を立てながら焼かれ始め、ギュッと詰まった脂をフライパンへと出していく。
脂が広がったフライパンの中へと刻んでいた野菜を入れ、更に炒めていく。
薄く切られた玉葱が炒められて白から透明へと変わり始め、細長く短冊状にしたジャガイモもしんなりとし始める。
それを見ながら、軽く塩胡椒を加え始めて味を調え、最後の仕上げとして溶いた卵を流し込んでいく。
流し込まれた卵はフライパンの熱でジュワワと音を立てながら、焼かれていくと共に炒められていた野菜を呑みこんで行った。
流し込まれた卵が焼かれていく中で、具が均等になるように掻き混ぜながら硬くなるのを待ち……そろそろ良いだろうと考えたのか、フライパンに蓋をし……クルリと裏返した。
「……うん、良い焼き色です。後はこのまま滑らせて焼けば完成ですね」
楽しそうに呟きつつ、フライパンを見ていたベルだったが……ふと気配を感じ、振り返るとディックが立っていた。
何処か気恥ずかしそうに、だけど……何かを言おうとしているような様子の。
「あ、っと……」
「おはようございます、ディック」
「お、おはよう! ベ、ベル……!」
ベルの言葉が呼び水となったのか、言い慣れない様子でディックはベルに向けておはようと口にする。
それを見ながら、ベルは優しく微笑みながら……折角なのでやってもらうことを考えた。
「……そうですね、ディック。朝食を作っているので、小皿とフォークを向こうまで持って行ってくれますか?」
「わかった。……っと、えっと、どこにあるんだ?」
「えっとですね……」
ディックに小皿などの場所を教えながら、ベルは朝食を作っていき、出来上がったスパニッシュオムレツが大皿に載せられ、リビングのテーブルに置かれたと同時にクラリスも目を覚ましたのか大きな欠伸をしながらやって来た。
焼きたてパン、スパニッシュオムレツ、サラダ、ミルクという朝食を前にクラリスは何時も通り美味しいと口にし、ディックも恥ずかしそうにしながらも……美味しいと口にした。
その様子を見ながら、ベルは微笑みながら食事をするのだった。
◆◇◆◇◆◇
朝食を終え、座学(今日は文字の練習)をして、昼食を取ってから3人は庭に出ていた。
ベルとディック、クラリスの3人は2人がベルと向き合うように立っていた。
「それじゃあ、今から特訓を始めるけど……始めて大丈夫かしら?」
『だいじょうぶ!』
「おねがい、します!」
少し心配そうにベルが尋ねたが2人はやる気に満ちていた。
そのやる気に満ちた2人が眩しかったのか、ベルは一瞬目を細めると……振り返り彼らを見た。
「分かったわ。それじゃあ、何時も通りに始めましょうか。ディックは今度からはちゃんと腕輪を付けてくださいね」
『わかった~~!』
「えっ!?」
どこからか取り出した銀色の腕輪を、クラリスは何時ものように受け取り……ディックはベルが言った言葉に驚いていた。
その様子を見ながら、ベルはクスッと笑うと……ネタばらしをした。
「ごめんなさい、ディック。実はね、私は気づいてたんですよ……クラリスの特訓を窓から見ていたことを」
「っ!?!? ~~~~!!」
ベルの言葉にディックは更に驚いたのか尻尾をピンと立てていたが……すぐに恥かしくなったのか、顔を真っ赤にして俯いてしまっていた。
ディックの反応にベルは言うべきことではなかったと悟りつつ、慌て始める。
「ご、ごめんなさいディック! そんなに恥かしがらないでちょうだい!!」
「だ……だったら、言うなよぉ! 気づかれていないっておもったのに、そんなことを言われたら恥かしくてたまらねーんだから!!」
「そう、よね……男の子だもの、そんなこと言われたら恥かしいわよね? ごめんなさい、今度から気をつけるわ」
『ど~したの、ベルママ、でぃっくおにちゃん?』
謝るベルに、恥ずかしさが頂点に達したディックは怒鳴るように吠える。
そんな彼にベルは一生懸命謝り、その様子をクラリスは首を傾げながら見ていた。
……それから、しばらくはこんな調子だったが、特訓は開始された。
特訓が始まると、2人は一生懸命魔力を扱えるように……途中で投げ出すことをせずに頑張り始めた。
…………そして昼が過ぎ、夜が来て。
……そして、季節は巡っていき……。
◆◇◆◇◆◇◆◇
重い瞼が、ゆっくりと開かれ……、ベッドに寝かされた少女の瞳が豪華な造りの天井を捉える。
一瞬、ここは……? と思い始める少女だったが、すぐに思い出した。
(……ああ、そういえば、ここは……私の部屋、だった……わね)
彼らが与えた自分の部屋、そこに寝ていることを少女は思い出し起き上がろうとする。
だが、体はもうガタが来てしまっているからか……動かない。だから目を軽く横に動かす。
すると、少女の目はベッド脇に控えていた長く艶のある黒い髪を持つ女性を捉えた。
服装は……、少女が流行らせ、この世界に定着させることに成功したクラシックなデザインのメイド服。
改めて女性をマジマジと見る。
黒く長い髪は艶があり、顔は化粧を付けていないのだろうが素が良いのか男性を引き付けるような綺麗な顔立ち。
そしてメイド服に包まれているにも拘らず、たわわに実っている果実が胸元に2つ大きく主張していた。
正直、男なら憧れるであろう巨乳メイドがそこには居た。
『……ディ…………!!』
そんな女性を観察する少女の視線に気づいた女性は、驚いたように少女を見……彼女が目を覚ましていることを確認すると大きな声で誰かを呼ぶのが聞こえた。
すると、女性の声に反応したのか気配が近づいてくるのを感じられた……。
近づいてくる気配、その気配に……彼女の頭は段々と霞みがかっていた記憶が甦っていく。
(これは……、ああ、そうだったわ……あの女性は、あの子で……今来ようとしているのは……)
バンッ! と多分力強く開かれたであろう扉。
その扉の前には獣人族特有の獣耳、けれど体格は只人族のように細い体格の男性が居た。
服装は何処か気品を感じさせるような豪華な衣装とマントであり、何処かの王族のようであった。
男性はベッドで眠る少女を見ると、一気に駆け寄ると顔を近づける。
「ベ――――!!」
『ディ――、目覚――――』
顔を近づけた男性が少女の名前を口にしていると、先ほど男性に声を掛けたメイドが咎めるように声を掛けた。
……その様子を見ながら、少女は優しく微笑み……口を開く。
「……ゆめを、見ていました。あなたたちと、本当の家族になったときの……ゆめを」
少女はそう呟くように言うが、かすれていてどう聞こえているかは分からない……。
けれど、少女は続ける。
「私は、あなたたちを、裏切った……なのに、あなたたちは…………私を、先生と……呼んでくれました」
2人が何かを言っているが、少女にはもう……聞こえない。
それでも、2人が居ることを感じるために、まともに動かなくなっている腕をゆっくりと上げる。
上げられた手を、2人が握り締めると……温かさが伝わった。
あたたかい、ひとのぬくもり……。
その温かさに安堵しながら、少女……ベルは告げる。
「ありがとう、ディック……クラリス……。あなたたちが……いえ、みんなが居てくれたから、私は先生で居られました……。ありがとう……ありがとう……」
お礼を言いながら、ベルは瞼を閉じ始める……。
そんな彼女に、2人の教え子が声を上げる。
『せん、――!』
「ま――か――!!」
「……すこし、つかれました……。また、ねますね……」
――おやすみ、なさい。
そう呟きながら、彼女は静かに瞼を閉じるのだった……。
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