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夜の遊園地1
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1.
「さみぃなぁ」そう言いながら長谷川徹也はタバコに火をつけた。
至福の一口目のニコチンを胸一杯に吸い込み、ふーっと吐き出す。
「でも止められないねぇ」
アパートのベランダの手すりに両肘を置き、徹也は独り言と共に紫煙をしんと冷えた大気にまた吐き出した。今夜は新月で月は見えないが、町中では星も見えない。
そのかわり視界にはタバコの先端の赤い火が見えている。
こんな風に俺みたいにベランダでタバコを吸う男達をホタル族って書いてあったな、と徹也は週刊誌の記事を思い出した。
なるほどと笑ってタバコを吸った。先端の火がじわっと赤く光る。
二階のベランダから見える冬の夜の町は静まり返っていた。
住んでいるアパートの前の市道は、普段なら夜でも結構な通行量があるのに今夜は通り過ぎる車が一台もない。車だけでは無い。時間はまだ九時を過ぎた頃なのに歩道を歩いている人の姿も見えない。
戒厳令でも敷かれたか?あり得ない事態を妄想していると、ぱらぱらとのどかで乾いたエンジン音が聞こえてきた。徹也は手すりから少し身を乗り出し道を見た。
一台の原付バイクが闇夜から現れて,か細いヘッドライトで前を照らしながら走っていた。
徹也はゆっくり走るバイクが,ふたたび闇夜に消えるまで見送った。
とりあえず革命は起きていないんだな、と徹也は呟いた。
いつもと変わらない,日本の平和な冬の夜を確かめた徹也は思い切りタバコを吸い、いつもより長めに肺の奥から煙を吐いた。
じりりりん じりりりん
部屋の中から電話の呼び出し音が聞こえてきた。
「はい、長谷川です」妻の夏希が電話に出た。
「あらお義父さん、こんばんは」
珍しいなオヤジからの電話か。夏希の声のトーンで分かった。
身重で臨月間近の夏希には、夏希の実家から毎日の様に電話が来るが徹也の実家からは滅多にない。徹也は室内に背を向け、手すりにもたれながらぼんやりとタバコをくゆらせていた。
からからからと窓が開けられる音がして徹也は慌てて灰皿にタバコを投げ込んだ。
振り返ると夏希が困惑した表情で立っていた。
「徹ちゃん電話。お義父さんから」
「なんて?」徹也は漂っている煙を手で払っていた。
「それが良く分からないのよ。遊園地がどうとか・・・」
「遊園地?なんだそれ?」
「さあ?」夏希は本当に分からないといった表情で首をかしげた。
「さみぃなぁ」そう言いながら長谷川徹也はタバコに火をつけた。
至福の一口目のニコチンを胸一杯に吸い込み、ふーっと吐き出す。
「でも止められないねぇ」
アパートのベランダの手すりに両肘を置き、徹也は独り言と共に紫煙をしんと冷えた大気にまた吐き出した。今夜は新月で月は見えないが、町中では星も見えない。
そのかわり視界にはタバコの先端の赤い火が見えている。
こんな風に俺みたいにベランダでタバコを吸う男達をホタル族って書いてあったな、と徹也は週刊誌の記事を思い出した。
なるほどと笑ってタバコを吸った。先端の火がじわっと赤く光る。
二階のベランダから見える冬の夜の町は静まり返っていた。
住んでいるアパートの前の市道は、普段なら夜でも結構な通行量があるのに今夜は通り過ぎる車が一台もない。車だけでは無い。時間はまだ九時を過ぎた頃なのに歩道を歩いている人の姿も見えない。
戒厳令でも敷かれたか?あり得ない事態を妄想していると、ぱらぱらとのどかで乾いたエンジン音が聞こえてきた。徹也は手すりから少し身を乗り出し道を見た。
一台の原付バイクが闇夜から現れて,か細いヘッドライトで前を照らしながら走っていた。
徹也はゆっくり走るバイクが,ふたたび闇夜に消えるまで見送った。
とりあえず革命は起きていないんだな、と徹也は呟いた。
いつもと変わらない,日本の平和な冬の夜を確かめた徹也は思い切りタバコを吸い、いつもより長めに肺の奥から煙を吐いた。
じりりりん じりりりん
部屋の中から電話の呼び出し音が聞こえてきた。
「はい、長谷川です」妻の夏希が電話に出た。
「あらお義父さん、こんばんは」
珍しいなオヤジからの電話か。夏希の声のトーンで分かった。
身重で臨月間近の夏希には、夏希の実家から毎日の様に電話が来るが徹也の実家からは滅多にない。徹也は室内に背を向け、手すりにもたれながらぼんやりとタバコをくゆらせていた。
からからからと窓が開けられる音がして徹也は慌てて灰皿にタバコを投げ込んだ。
振り返ると夏希が困惑した表情で立っていた。
「徹ちゃん電話。お義父さんから」
「なんて?」徹也は漂っている煙を手で払っていた。
「それが良く分からないのよ。遊園地がどうとか・・・」
「遊園地?なんだそれ?」
「さあ?」夏希は本当に分からないといった表情で首をかしげた。
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