悪役令嬢に転生しましたが、破滅フラグが立ちおわっているので足掻きまくったら魔王になって乙女ゲーを間近で見る事になりました。

幌須 慶治

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死亡フラグ破壊の第一幕

望外の再会

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 仰向けに倒れた魔王に近付くと魔王と目が合う。

「気分はどう?」

 全身に力が入らないようだけど顔色は思っているよりも悪くは無いので少し安心して頬が緩む。

「口惜しいに決まっている、言わせるな」

 そういいながら顔を歪める魔王。

「そうかしら?あのいけ好かない奴を倒せてスカッとしたんじゃない?」

「それはあるが、どっちにしろ私の負けだ、この後ろにお前達に敵う者はいない、私は望みも果たせずにまた失うのだ」

 そういいながら悔しそうに目を閉じる魔王。

「私はエリザベート、名前を教えてくれるかしら?勇敢な魔王様」

「私はカリウスだ」

「そう、カリウス、いい名前ね」

「父と母の付けてくれた名だ」

「いいお父様とお母様だったのね」

「ああ、自慢の両親だ」

 そう言う顔は穏やかで、仇敵同士の会話だとは思えないほどに和やかなものだった。

「後ろの人達は心配しなくていいわ、悪いようにはしないから」

「そうか、悪役令嬢と聞いていたが、案外優しいのだな?」

 そういって力なく微笑むカリウス。

「なによそれ、確かに私は悪役令嬢だけど……」

 微笑むカリウスに拗ねたような顔しか返せない。

「それだけしてくれるなら十分だ、どのみち私の望みは叶わぬ」

 そういってすっきりとした表情を浮かべたかと思うと悲しげに瞼を閉じる。

「それでも言うだけならただよ?この世界ご都合主義的なところあるから言うだけ言ってみてよ」

 そう聞く私にカリウスは顔を歪ませながら答える。

「よかろう、叶う事のない望みだ、勝利の褒美に聞かせてやる。」

 そう言って深呼吸をするとどこか遠くを見る目で口を開く。

「兄に会いたい、会って、守ってくれて、一緒にいてくれてありがとうって伝えたい」

 その言葉に涙が溢れる、その姿に冷静を装って言葉を返す。

「お兄さんか、それくらいなら、どこにいるの?」

「分からない、私を庇ってトラックに轢かれて、胸の中にいたはずなのに、気がついたらこの城だ、世界が違うのだ」

 その顔に希望はなく、諦めてしまっているようで、だからこそ彼は護る為に全力を尽くしたのだろう。

「父の力でも異世界には干渉できなかった、ましてその中から一人を見つけるなどな」

 寂しそうに呟くその姿に自然と手が伸びる。

「分かったか?私が無理といったわけが」

 気がついたらその頭に手が伸びていた。

「ええ、分かったわ。貴方が私と同じなのが」

 その言葉に驚きを表す。

「私も同じ、あいたい人がいるわ、可愛い妹」

 そしてその目が大きく見開かれる。

「いつも私の事を支えてくれてたあの子を私は守りきれなくて」

 あの時の事を思い出す私。

「それでも最後まで私と一緒にいてくれたあの子、死の淵でも私を責めることもなかったあの子」

 自然と溢れてくる涙

「最後に伝えられなかった言葉と感謝と、一杯話したいことがあるの」

 でも一番はやっぱり

「私も妹に、楓に会いたい」

 そうこぼした瞬間ガタッという音がした。

 ああもう、動かない身体を無理やり動かしたらダメっていってるのに!

「駆にい……」

 動かない体を無理やり動かそうとして顔を歪めながら発せられたその言葉を聞いた瞬間私の身体は動いていた。

「え?え?」

「良く頑張ったな、楓」

「おにい、ちゃん」

「そうだよ、守れなくてごめんな」

「そんなこと、だってだって、うわああああああああああ」

 何も考えずに抱きしめていた胸の中で楓が泣く。

 その二人の感動の再会にアリアは目元にハンカチを当てながら席を外す。

 主の為に気を利かせて、恐らくこの後仲間になる人達を安心させるべく、静かに玉座の奥に歩を進めるのだった。








 カリウスとなった楓との再会を果たしてから10数分、漸く落ち着いたカリウスの傷を癒していると入ってきた扉の向こうから轟音が鳴り響き、大きな足音が聞こえてくる。

 その音に緊張が走る。

 そして轟音と共に扉が勢いよく開け放たれる。

 その向こうに見える3メートルを超える巨躯と赤い双眼の光。

「陛下!?」

 そう叫んだのは階段の下を守護していた守護者の龍人。

「おのれぇ!聖女め!陛下!今すぐお助け致します!」

 その言葉と共にハルバードを構えて突進してくる姿にカリウスを治療している身体に力が入るが。

「ドランやめよ!」

 さっと私の手を取って抱き竦められるとカリウスは静止の声を上げる。

「へ、陛下!ご無事で!?」

「ああ、危うい所もあったが、この娘のお陰で無事である。控えよ!」

「はっ!申し訳ありません!」

 その姿は正しく魔王であった。

 そしてその配下の龍人ドランを見て思い出す。

 私に忠義を尽くすために死に物狂いの突撃をかけた人達の事を。

「いけない!カリウス!みんなを止めないと!」

「みんな?」

「ここに入る為に陽動に騎士隊が突撃しているの、早く止めないと皆死んでしまう!」

 その慌てた声にカリウスは目の前の部下に指令を出す。

「ドラン、止めてこい、私と聖女は手を結んだ、無益な戦いは止めよと!王命である!」

「は!!」

 カリウスの言葉を聞いて表情を一気に険しくさせたドランは返事をすると直ぐ様階段を飛ぶように駆け下りて行く。

「間に合えば良いが……」

 その呟きだけが残る広間を静寂が支配する。

 沈黙が痛みを感じさせ始めた時、突然玉座の後ろにある扉が勢いよく開け放たれる。

「お兄様!」

「兄様!」

「にいたまー!」

 その声と共にカリウスに飛び込む3つの影。

 トストストスと軽い音と共に突撃してきた3人に堪らず私を巻き込んでカリウスは尻餅をつく。

 そしてカリウスの胸元を見てみると。

「あら」

 そう声を出してしまうような可愛い子供達がしがみ付いていた。

 11・2歳位の子を中心にその横から小さな幼児が抱きついている。

 「お怪我はありませんか?」

 瞳に涙を浮かべてカリウスの頬をペタペタと触る少女に微笑みを返すとそのまま胸に顔を埋める。

「よかった、本当に、良かった」

 そう嗚咽を漏らす少女の頭を撫でるカリウスと目が合うと彼は口を開く。

「こっちで出来た兄妹だよ、後で紹介させてね」

 そう笑顔で嬉しそうに言われたので首肯すると。

「あの、お兄様、此方の方は?」

「ああ、この人はエリザベート。僕に勝った人で命を救ってくれた恩人で」

「前世の僕の兄さんだよ」
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