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18.招かれざる女 ※フローラ視点
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「遠くグロリアの地よりようこそおいでくださいました。ルシフェル殿下、アイリス妃殿下」
「お心遣いに感謝いたします。両国の友好が永遠に続かんことを」
結婚式からひと月後。アイリスはルシフェル王太子とともに、諸国外遊の途についていた。新婚旅行を兼ねて、諸外国へ次代のグロリア国王夫妻をお披露目しようというわけだ。
『本当に美しいお二人。まるで太陽神と月女神のようですわ』
王太子夫妻は、どこの宮廷でも賞賛の的だった。優雅で気品に溢れる身のこなし、機知に富んだ話術。魅力あふれるふたりに、どの国の社交界も夢中になったのだった。
(なにあれ、つまんなぁい!あたしがこのパーティの主役になるはずだったのぃ)
熱烈に歓迎されるグロリア王太子夫妻を遠巻きに眺めながら、派手な装いの女がひとり壁際で苦虫を噛み潰していた。
大胆に胸元の開いた真っ赤なドレス、華やかに結い上げた金髪。派手ではあるが見事な脚線美と豊かな胸元を持つこの女が、人目を引く美女であることは確かだった。
「ね、ベティちゃん、素晴らしいパーティだよね。気に入ってくれたでしょ?」
(んもうなによ、こいつ。王家のパーティに連れてってくれるっていうから付き合ってあげたけど、遠すぎてルシフェル様のお顔も見えないじゃなぁい)
「うん、ありがと。こんな華やかな場所初めてよ。あたし、うれしいぃ♡」
本心はおくびにも出さず、笑顔を作って男の腕に腕を絡めた女は、あのフローラだった。この国では、ベティという名を騙っているらしい。
落ちぶれたロイを見捨てた後、金持ちの男たちを乗り換えながら国を渡り、今は遠い異国でこの貴族男をカモにしているのだった。
「べ、ベティちゃん、じゃあぜひ、僕の両親に…」
(ふん、こいつともそろそろね。まあまあお金はあるけどブサイクだもの)
「じゃ、あたしはパーティを楽しんでくるわ。あなたも楽しんでねぇ」
「べっ、ベティちゃんっ?」
戸惑う男を無視して、人混みをかき分け会場の中心へと進んで行く。そして大きな人垣の中心に、目的の人物を見つけて目を輝かせた。
(いたわ、ルシフェル殿下!ああ、なんて美しいの。絵姿よりも何倍もすてき……)
新婚旅行中?そんなことは関係ない。知り合うきっかけさえあればこっちもの。今までだってそうやって、狙った男を虜にしてきたのだから。
「……っ?!」
だが、フローラの計画は実行されなかった。王太子の隣に、あり得ない顔を見つけたからだ。
(あ、アイリス……?どうしてここに?なぜあたしのルシフェル様の隣にいるの?)
一見しただけでわかる上質な装い、高価で上品なアクセサリー、磨き上げられた肌。フローラの知る哀れな女とはまるで違う、自信に満ちた女の姿がそこにあった。
それに、なぜか人垣の中心にいて、あろうことかルシフェル王太子にぴったりと寄り添っている。
(まさか…まさか。ルシフェル様のお妃って……)
考えたくなかった。王太子の新妻の名はこの会場に来て知ったが、アイリスなんてよくある名前だから、気にもしていなかった。
けれど、フローラの疑念は、確信に変わらざるを得なかった。皆がアイリスに向かって妃殿下と呼びかけ、ルシフェル王太子がその手をとり、広間の中央へと進んだから。
ほう……。
楽団が優雅な音楽を奏でる。ふたりが踊り始めると、会場の方々からため息が漏れた。
しかし、花が舞い散るように踊るふたりを、フローラは見ていなかった。身体中をどす黒い感情が渦巻き、息すらできないほどだったからだ。
ゆるせない、ゆるせないわ、アイリス……!
アバンドール家から追い出されて、貧しく惨めな人生を送っているはずだったのに。よりによって、世界一の男を手に入れて、幸せそうに微笑んでいるなんて。
フローラの中に、黒い決意がみなぎった。必ず、必ずあの女から、王太子を奪ってやる……!
「お心遣いに感謝いたします。両国の友好が永遠に続かんことを」
結婚式からひと月後。アイリスはルシフェル王太子とともに、諸国外遊の途についていた。新婚旅行を兼ねて、諸外国へ次代のグロリア国王夫妻をお披露目しようというわけだ。
『本当に美しいお二人。まるで太陽神と月女神のようですわ』
王太子夫妻は、どこの宮廷でも賞賛の的だった。優雅で気品に溢れる身のこなし、機知に富んだ話術。魅力あふれるふたりに、どの国の社交界も夢中になったのだった。
(なにあれ、つまんなぁい!あたしがこのパーティの主役になるはずだったのぃ)
熱烈に歓迎されるグロリア王太子夫妻を遠巻きに眺めながら、派手な装いの女がひとり壁際で苦虫を噛み潰していた。
大胆に胸元の開いた真っ赤なドレス、華やかに結い上げた金髪。派手ではあるが見事な脚線美と豊かな胸元を持つこの女が、人目を引く美女であることは確かだった。
「ね、ベティちゃん、素晴らしいパーティだよね。気に入ってくれたでしょ?」
(んもうなによ、こいつ。王家のパーティに連れてってくれるっていうから付き合ってあげたけど、遠すぎてルシフェル様のお顔も見えないじゃなぁい)
「うん、ありがと。こんな華やかな場所初めてよ。あたし、うれしいぃ♡」
本心はおくびにも出さず、笑顔を作って男の腕に腕を絡めた女は、あのフローラだった。この国では、ベティという名を騙っているらしい。
落ちぶれたロイを見捨てた後、金持ちの男たちを乗り換えながら国を渡り、今は遠い異国でこの貴族男をカモにしているのだった。
「べ、ベティちゃん、じゃあぜひ、僕の両親に…」
(ふん、こいつともそろそろね。まあまあお金はあるけどブサイクだもの)
「じゃ、あたしはパーティを楽しんでくるわ。あなたも楽しんでねぇ」
「べっ、ベティちゃんっ?」
戸惑う男を無視して、人混みをかき分け会場の中心へと進んで行く。そして大きな人垣の中心に、目的の人物を見つけて目を輝かせた。
(いたわ、ルシフェル殿下!ああ、なんて美しいの。絵姿よりも何倍もすてき……)
新婚旅行中?そんなことは関係ない。知り合うきっかけさえあればこっちもの。今までだってそうやって、狙った男を虜にしてきたのだから。
「……っ?!」
だが、フローラの計画は実行されなかった。王太子の隣に、あり得ない顔を見つけたからだ。
(あ、アイリス……?どうしてここに?なぜあたしのルシフェル様の隣にいるの?)
一見しただけでわかる上質な装い、高価で上品なアクセサリー、磨き上げられた肌。フローラの知る哀れな女とはまるで違う、自信に満ちた女の姿がそこにあった。
それに、なぜか人垣の中心にいて、あろうことかルシフェル王太子にぴったりと寄り添っている。
(まさか…まさか。ルシフェル様のお妃って……)
考えたくなかった。王太子の新妻の名はこの会場に来て知ったが、アイリスなんてよくある名前だから、気にもしていなかった。
けれど、フローラの疑念は、確信に変わらざるを得なかった。皆がアイリスに向かって妃殿下と呼びかけ、ルシフェル王太子がその手をとり、広間の中央へと進んだから。
ほう……。
楽団が優雅な音楽を奏でる。ふたりが踊り始めると、会場の方々からため息が漏れた。
しかし、花が舞い散るように踊るふたりを、フローラは見ていなかった。身体中をどす黒い感情が渦巻き、息すらできないほどだったからだ。
ゆるせない、ゆるせないわ、アイリス……!
アバンドール家から追い出されて、貧しく惨めな人生を送っているはずだったのに。よりによって、世界一の男を手に入れて、幸せそうに微笑んでいるなんて。
フローラの中に、黒い決意がみなぎった。必ず、必ずあの女から、王太子を奪ってやる……!
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