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お前、私の国の騎士だよね?
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脅迫してくる嫁ぎ先の方が優しいとは思わなかったわ。
拘束を解かれた瞬間に逃げ出した私だが、さすがに隊列を組んで網羅的に探されたら捕まる。松明を持った王国帝国百名の騎士達による山狩りからは逃れられなかった。
奇襲に気をつけろ。相手を女と思うな。発見したら必ずスリーマンセルで捕獲にあたれ。
女じゃなくて、王女な。王女。立派な王位継承権第一位の王女だ。それをホイホイ他国にやるほうがおかしいんだぞ。わかっているのか?
背後から聞こえてくる陣営指揮にムカつきながら私は道を外れて藪に入り少し先で木の上でやり過ごそうとしたがめざとい騎士に見つかってしまい御用となった。
「いたぞ! 剣を抜け! 人員を集めろ!」
私は木の枝を激しく揺らして威嚇した。お前らは王女の扱いがなっていない。お前らの騎士道に礼儀というものはないのか。丸腰のか弱い女性に対して剣をなぜ抜く。
剣を躊躇無く抜いたのが自国の騎士で、戸惑っていたのが帝国の騎士だ。
「激昂している……。このままでは手がつけられない。吹き矢隊はまだか!」
吹き矢? と思った瞬間に腕がチクッとして全身が痺れてきた。やられた。木から落ちてしまったがなんとか着地はした。しかし、そこからは意識がない。
気がついたら豪華な内装の馬車で移送されていた。これは帝国の馬車だな。自国は平気で木の床に転がしてくるから、配慮のある豪華なベッドの上に寝かされている時点でお察しだ。
祖国、焼き払ってやる。疲れ切った顔をした帝国騎士が覗き込んできた。顔が良いからどこの国の騎士なのかすぐわかる。うちの騎士は拡大解釈すればイケメンというイケメン風だが、帝国の騎士は主君に及ばなくても美しい。
「大丈夫そうです。陛下」
「怯えさせてしまっただろうか……」
「違うと思います」
移送用の私の馬車の外では馬に乗って移動しながら皇帝陛下と王国の一団がなごやかに会話している。
私は久しぶりに与えられた食べ物でも食べるか、と黄色い果物にまだ痺れている手をのばした。消化にいいからバナナとか悪意を感じる。
自国はもっと反省するべきだ。淑女への礼をもって遇されるなら大人しくしてやらないこともない。
健康王国は糞ダサいが自分のものだという愛着がないわけではなかったのだ。今、自分の国ではなくなりそうだし、あまりの扱いに愛国心はなくなったが。
「花嫁殿、そんなに嫌だったのか? 俺の噂は聞いたことがなかったのか?」
確かに人ならざる者ではないように美しい皇帝陛下の話は聞いたことがあった。あまりの煩わしさにテーブルを蹴り倒すのが恒例の茶会の席で小耳に挟んだことはある。噂の数倍すごいじゃないか。
陛下の顔面は世界の宝。神の恩寵レベル。いや、そうか、美と愛の神の恩寵か。転生で産まれる国を間違えたかもしれない。
芸能人みたいにチヤホヤされる未来もあったのかな、と思うとバナナが苦い気がしてきた。いや、チヤホヤしろよ。仮にも一国の姫だぞ。
「嫁ぐのがそんなに嫌か?」
「皇帝陛下に嫁ぐのが嫌なわけがないですよ?」
私の心情を代弁するな、護衛騎士。お前、うちの国の騎士だよね?
「ああ、こちらを見てくれないものか」
「かなり気に入られておりますよ。皇帝陛下。暴れて送り返されると思っていたのに上手くいきそうで驚いています」
「そうだろうか?」
なんでそこで嬉しそうなんだ。その顔面なら嫁なんて選り取り見取りじゃないか。
「姫君は女性ではなく猛獣ですよ、猛獣。健康の神の寵児なだけあって素晴らしい身体能力をお持ちです」
「確かに美しい身のこなしだった……。素晴らしい回し蹴りで騎士をなぎ倒すとは……」
「理解のありそうな飼い主、じゃなかった嫁ぎ先でよかったですね! 姫様」
絶対に潰す。あいつ絶対に潰す。殺意もりもりでギロっとにらみつけた。
自由の身になったら絶対に潰しにいく。
「ところで、言いにくいのだが頼みたいことがある」
恥じらいながら大国の皇帝陛下は王国の騎士にお願いをされた。
「何用でございますか? 私めにお任せください」
お前王国の騎士だよな? 忠誠心高そうなムーブをするな。
「今夜、王女をいただいてもいいだろうか」
なんであいつを? という風に顔を歪ませたお前、覚えてろよ。
絶対に毛根、滅ぼしてやる。
拘束を解かれた瞬間に逃げ出した私だが、さすがに隊列を組んで網羅的に探されたら捕まる。松明を持った王国帝国百名の騎士達による山狩りからは逃れられなかった。
奇襲に気をつけろ。相手を女と思うな。発見したら必ずスリーマンセルで捕獲にあたれ。
女じゃなくて、王女な。王女。立派な王位継承権第一位の王女だ。それをホイホイ他国にやるほうがおかしいんだぞ。わかっているのか?
背後から聞こえてくる陣営指揮にムカつきながら私は道を外れて藪に入り少し先で木の上でやり過ごそうとしたがめざとい騎士に見つかってしまい御用となった。
「いたぞ! 剣を抜け! 人員を集めろ!」
私は木の枝を激しく揺らして威嚇した。お前らは王女の扱いがなっていない。お前らの騎士道に礼儀というものはないのか。丸腰のか弱い女性に対して剣をなぜ抜く。
剣を躊躇無く抜いたのが自国の騎士で、戸惑っていたのが帝国の騎士だ。
「激昂している……。このままでは手がつけられない。吹き矢隊はまだか!」
吹き矢? と思った瞬間に腕がチクッとして全身が痺れてきた。やられた。木から落ちてしまったがなんとか着地はした。しかし、そこからは意識がない。
気がついたら豪華な内装の馬車で移送されていた。これは帝国の馬車だな。自国は平気で木の床に転がしてくるから、配慮のある豪華なベッドの上に寝かされている時点でお察しだ。
祖国、焼き払ってやる。疲れ切った顔をした帝国騎士が覗き込んできた。顔が良いからどこの国の騎士なのかすぐわかる。うちの騎士は拡大解釈すればイケメンというイケメン風だが、帝国の騎士は主君に及ばなくても美しい。
「大丈夫そうです。陛下」
「怯えさせてしまっただろうか……」
「違うと思います」
移送用の私の馬車の外では馬に乗って移動しながら皇帝陛下と王国の一団がなごやかに会話している。
私は久しぶりに与えられた食べ物でも食べるか、と黄色い果物にまだ痺れている手をのばした。消化にいいからバナナとか悪意を感じる。
自国はもっと反省するべきだ。淑女への礼をもって遇されるなら大人しくしてやらないこともない。
健康王国は糞ダサいが自分のものだという愛着がないわけではなかったのだ。今、自分の国ではなくなりそうだし、あまりの扱いに愛国心はなくなったが。
「花嫁殿、そんなに嫌だったのか? 俺の噂は聞いたことがなかったのか?」
確かに人ならざる者ではないように美しい皇帝陛下の話は聞いたことがあった。あまりの煩わしさにテーブルを蹴り倒すのが恒例の茶会の席で小耳に挟んだことはある。噂の数倍すごいじゃないか。
陛下の顔面は世界の宝。神の恩寵レベル。いや、そうか、美と愛の神の恩寵か。転生で産まれる国を間違えたかもしれない。
芸能人みたいにチヤホヤされる未来もあったのかな、と思うとバナナが苦い気がしてきた。いや、チヤホヤしろよ。仮にも一国の姫だぞ。
「嫁ぐのがそんなに嫌か?」
「皇帝陛下に嫁ぐのが嫌なわけがないですよ?」
私の心情を代弁するな、護衛騎士。お前、うちの国の騎士だよね?
「ああ、こちらを見てくれないものか」
「かなり気に入られておりますよ。皇帝陛下。暴れて送り返されると思っていたのに上手くいきそうで驚いています」
「そうだろうか?」
なんでそこで嬉しそうなんだ。その顔面なら嫁なんて選り取り見取りじゃないか。
「姫君は女性ではなく猛獣ですよ、猛獣。健康の神の寵児なだけあって素晴らしい身体能力をお持ちです」
「確かに美しい身のこなしだった……。素晴らしい回し蹴りで騎士をなぎ倒すとは……」
「理解のありそうな飼い主、じゃなかった嫁ぎ先でよかったですね! 姫様」
絶対に潰す。あいつ絶対に潰す。殺意もりもりでギロっとにらみつけた。
自由の身になったら絶対に潰しにいく。
「ところで、言いにくいのだが頼みたいことがある」
恥じらいながら大国の皇帝陛下は王国の騎士にお願いをされた。
「何用でございますか? 私めにお任せください」
お前王国の騎士だよな? 忠誠心高そうなムーブをするな。
「今夜、王女をいただいてもいいだろうか」
なんであいつを? という風に顔を歪ませたお前、覚えてろよ。
絶対に毛根、滅ぼしてやる。
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