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ちょっとエッチなことしたら王国を滅ぼしにいけるらしい

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女どころか男も落とせそうな色気を纏って皇帝陛下は足音もなく近づいていた。足音を立てるのは貴人らしくないからそういうものかもしれないが、その気配の無さは武人としてもかなりできる方なのだと知らせていた。
「ヘーゼル王女」
「こんばんは、陛下」

少し笑ったのはこちらを安心させるための仮面だ。芸術的なマスクだから少し笑えば国民は貢ぎ物をもち大挙して押し寄せるだろう。なんて効率的なシステムなんだ。私はアイドル皇帝か、なんてくだらないことを考えた。
「ビザステリオと呼んでくれ」
「それはちょっと」
呼び捨てにすることを要求してくるなんてグイグイくるな。

床に寝そべる用の青の絨毯が敷かれているところでくつろぎながらグラスを傾けるのをやめずに挨拶をする。シャツにサーコートを引っかけた同じく風呂上がりの陛下もここで休憩するのだろうか。
断りを入れて同じ絨毯に載ってきたビザステリオ様は侍女から私の飲んでいるのと同じだろうグラスを受け取った。

「なにか食べるものも持ってこさせよう。夕食はここでとるといい」
「いいのですか?」
堅苦しい晩餐の席が用意されるかと思って覚悟していた私は免れたことを確かめてしまった。
「疲れただろう? 過酷な旅だったはずだ。ヘーゼル王女は大丈夫なのか?」
「ええ、神の恩恵がありますから」
健康の神の寵児である私は元気だった。しかし、風呂上がりは少し眠たい。クッションに思いっきり身体をあずけると非常に身体が休められる。
「今夜、俺を寝床に招いてくれ。そこで少し儀式をすれば婚姻は成る」
「お断りしたいのですが」
「おっと」
近づいてきて私の髪を一房取り口を寄せ決定事項のように伝えてくるので私は拒否の構えだ。
だって、いきなり結婚なんて経験もなければ覚悟もないのにできない、と思う。小国の王女を娶るぐらいだから余裕はあるのだろうけれど、それならば私でなくてもいいはずだ。健康の問題なら、祖国を訪れればある程度加護が得られる。気難しい神でもないから大丈夫だ、
教えてあげよう。

「しかし、この出会いを俺は逃すつもりはないよ。ヘーゼル」
嫌だな。美人が雄の顔をしている。それでも芸術的であることに変わりは無く力で解決しようとする気は起きなかった。
「皇帝陛下がそうおっしゃるのであればそういたします」
「だからといって嫌がる子を抱く趣味はないんだ」
自分の容姿をわかっている方なのだろう。流し目が色っぽく、強い意志をもっていないと流されてしまいそうだ。

「寝所には花婿として招いてくれ。そこで俺が貴女を落としてみせる。落ちたら貴女は俺のもの。閨事に自信はあるんだよ」
少し頷いて先を促せば饒舌な皇帝陛下はご褒美を口にした。

「もし、貴女が俺を必要とせずに一夜過ごせたなら、俺は貴女を解放しよう」
ふむ、ちょっとエッチなことをして皇帝に解放されたあとは祖国にリベンジだ。ふふふ。楽しみだ。覚えていろよ。祖国。滅ぼしてやる。
完全に何かを見誤っていた私は祖国の未来について想像して悦に入っていた。だからあまり深いことを考えずに快諾したのだ。
「わかりました」
「我慢できなくて俺を欲したら、その場で結婚だよ。ヘーゼル王女」
「お受けいたします。ビザステリオ皇帝陛下」

嬉しそうなビザステリオ様は食べ物を色々勧めてくれて、久しぶりに美味しいご飯をいただいた。
大丈夫、だと思ったんだ。だって経験無いし処女は感じにくいというし、男が欲しいだなんて我慢できなくなるとは思えない。

こうして、軽率にも愛の国の実力を見誤っていた私はこうして床に花婿を招くことになった。
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