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世界観の違う食べ物は祖国が滅ぶからやめた方が良い

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つまみ食いできるなら悪くない。

隣にいる慎ましそうな美しい男となら少しぐらいしてもいい。
本当に挿されるのは嫌だし、覚悟が決まらないけれどちょっとぐらい遊ぶなら美味しい話だ。その服の下に隠された肉体美を拝見してみたいと思う。肉料理をつまみながら今夜の遊び相手となる方を伺ってみれば透明な魚の煮込み料理のようなものを食べていた。
「陛下はそんなに私のことをお気に召したのですか?」
気になって近づいてみたら妖艶に微笑まれてしまった。
「正直、情欲を感じたのは初めてだよ」
私の長い髪をとって挑戦的に口に寄せる陛下はギラギラしていた。芸術品もギラギラするものなのだな、と妙に感心する。
「ところで、その料理は何の魚ですか?」
「これか?」
「あまりみたことのないものなので」
「すっぽん」
すっぽん。ここは本当に日本の観光地なのか。私はあたりを見渡したが西洋風の異世界だ。
「精がつくんだよ」
にっこり笑ってせっせとすっぽん料理を食べる皇帝陛下を前に私はどうリアクションして良いかわからない。
一つ、確かなのは皇帝陛下に似合わないすっぽん料理を食べさせることになった。
祖国は滅ぶべきだ。なぜか、素直にそう思えた。

薔薇の花で飾られた初夜の床に侍女たちに置き去りにされた。
神殿のような石造りの部屋の中心にベッドが置かれて上品ながらいやらしい感じのレースのキャノピーがはられているのが伝統的な皇家の初夜の床だそうだ。美と愛の神の美意識感じる。正直、耽美すぎて趣味が合わない。
「待たせたな」
寝てる気にもなれなくてベッドの上で膝を抱えて待っていたら、恥ずかしそうに立て襟の夜着を纏って美貌の皇帝陛下がやってきた。

神か。

信仰する宗教の変更を検討すべきだ。大国の意味がわかる。
蝋燭の明かりに照らされた素晴らしい御髪が男性としては奇抜なほど長いのは切れる人がいないからじゃないか。ボーッと眺めていたら初夜の床にいそいそとあがってきた。
皿と箱を持っているのを目に止めたら嬉しそうに説明してくれた。
「この砂糖菓子を花嫁に食べさせることで婚儀は成立する」
なんて効率的なんだ。今までに出席した結婚式にない手際の良さだ。神に誓うことすらしないらしい。花を忠実に再現した砂糖菓子はピンク色で白い皿の上に恭しく置かれていた。
「結婚したくなかったら食べないことだけど」
妖艶に笑う美の神の化身は少し意地悪そうに微笑んだ。
「無理だと思うから早く食べてね」
この方には敵わない。
本能が告げた突然の寒気に私は身震いをした。
闘技場でライオンと戦わされる奴隷の気分だ。こんなところに送り込んだ祖国。いつか、爆破する。
「絶対にして欲しくないことがあるのだけどいいかしら」
「なんだい? 俺の花嫁さん?」
歌い出しそうな雰囲気の皇帝陛下はいそいそと私の夜着をつまみに来ている。
「乳首がすごいピンクでも笑わないでね」
ちらっと夜着を開けて見せたら、ビザステリオ様が真顔になった。
すっぽんは効いているらしい。
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