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約束する乾杯
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◇◆◇◆◇◆◇◆
時は遡る事4日前……
俺達は来たる魔王との最終決戦を前に、宿場にある居酒屋で円卓を囲みながら最後の宴に興じていた。
今までの苦難を語り合い、それも今となっては良い思い出だと話しに花を咲かせる。それをつまみに俺達の酒量はどんどんと増えていった。
「皆さん、飲み過ぎです。明日の朝には魔王城へ乗り込む為に宿を出発するんですよ?そろそろお酒は控えないと……」
まだ子供で、酒が飲めない少年発明家のラックが俺達の酒量を嗜めてくる。
「いやぁ~ん!ラックちゃんったら、おませさんなんだから!もう!」
「うわっ!」
何故だかいつも胸から肩にかけて開いた服を着ているエロババアこと黒魔術師のミネルバが、どろどろに泥酔をしながらラックの頭を抱え込み、張り裂けんばかりの乳袋にラックの顔を埋めさせていた。
ミネルバは「それそれぇ~」と言いながら、ラックの顔を胸でブリブリ擦りつける。
ラックは「うわぁ~」と言いながら多少の抵抗を試みているようだが、なされるがままになっていた。
……くそ、これだからショタ好きの三十路は……羨ましいぞラック!そこを変われ!
だが、そんな誰もが羨む光景を望ましく思っていない人物が一人いた。それは女僧侶のメリッサの事である。
神職について信心深いメリッサは、ラック同様にお酒を飲んでいない。
16歳で王国から聖女の称号を得ている彼女は、癒しの能力は天下一品である。
普段の立ち居振舞いも聖女の名に恥じず、清廉潔白、品性方正を地でいく模範的な僧侶だ。
それでいて寛容さも持ち合わせている為、酒の席でハメを外す事に対して普段からある程度理解をしてくれている。
しかし、眼前に繰り広げられている光景はあまりにも目に余るものがあったのだろう。メリッサはミネルバの行動を嗜めようとする。
「ミネルバさん!ヤメてください!ラックさんが苦しそうです!あと、少しお下品です!」
「あらぁ~、お堅いんだからぁ~。メリーちゃんもお酒を飲もうよぉ。別に僧侶だからってお酒を飲む事は戒律で禁止されてないんでしょ~?だったら飲もぉよぉ~」
ラックをおっぱいの沼から解放したミネルバは、今度はメリッサに抱きつきながらブリブリしはじめた。
メリッサは「やめてください!」と言いながら抵抗をするが、ミネルバは「飲もぉよぉ~」とか言ってメリッサから離れようとしない。
そんな光景を俺と一緒に笑って見ていた女性武術家のヨウランが、二人の間に口を挟む。
「飲んであげなよ、メリッサ。今日くらい酒を少し飲んだからって、女神様もメリッサの信心を疑わないって」
「いや、でも……」
「今日が最後の宴になるかもしれないんだ。魔王との戦いは熾烈を極めるはず。当然、命の保証なんてもんは何処にも無い。……だから、最後の宴になるかもしれない今日この日にメリッサと酒を酌み交わしたいんだよ、ミネルバは」
「ヨウランさん……」
本人の意図した所ではないだろうが、ヨウランの言葉により宴の席に沈黙としんみりとした空気が流れる。騒いでいたミネルバさえも言葉を失っていた。
ヨウランの言うとおり、魔王との戦いは激戦必至だ。仮に魔王を倒せても、皆が揃って生き残れるかどうかなんて分からない。
そうなれば、魔王を倒しても、このメンバーで行う宴はもう出来ない。皆、命の保証が無いのは覚悟の上ではあるが、それが頭にめぐってしまうと心に影が落ちてしまう。
ミネルバの泥酔も、そんな不安を誤魔化す為のモノであるのだろう。
だけど……
俺は流れる沈黙を断ち切るかのように席を勢いよく立ち、皆の視線を俺に向けさせた。
「大丈夫だ!このメンバーは誰一人欠ける事無く、必ず魔王を倒せるさ!必ずそうなる!」
俺のいきなり行なわれた宣言に、皆は唖然としている。
「ヨハンさん。それはなんの根拠があってですか?」
ラックは呆れた顔をして質問をするが、俺は胸を張って堂々と答えた。
「それはこの勇者"ヨハン・プリテンダー"様が率いる最強無敵のパーティーだからだ!最強の勇者と最強の精鋭が集まったこのパーティーに、怖いものなど何も無い。それに、皆に降りかかる火の粉は勇者である俺様が必ず振り払ってやる!だから、このパーティーの誰もが欠ける事なく、必ず魔王を倒すのだ!」
俺はそう言った後、高らかに「ハハハハハ!」と大笑いをわざとらしくしてみせた。
「……僕は根拠を聞いたんですよ?それは根拠の無い自信と言うんです。馬鹿ですか?」
ラックは更に呆れた様子で、眉間に手をあてながら「はぁ~」とため息をもらした。しかし、そんなポーズとは相反して口元に少し笑みがこぼれているように見えた。
いつのまにか他の皆にも笑顔が戻っている。
「そうだね……ヨハンの言う通りだ。皆で生き残って魔王を倒し、またこのメンバーで勝利の宴をやろうじゃないか」
ヨウランはそう言って立ち上がり、右手にビールが入っているジョッキを持って、テーブルの真ん中へとジョッキを突き出した。
俺はそれを見て、ヨウランと同様にジョッキを手に持って突き出す。
「……ハハハ、そうよ!また皆で飲みましょう!今日が最後の宴なんかじゃないわよ!」
ミネルバもたわわな胸を揺らしながら勢いよく立ち上がり、ジョッキを持って円卓に突き出した。
「はぁ~……今日だけですよ?……店員さん、スイマーン!ビールを一つ持ってきてくださぁ~い」
―はぁ~い!―
「メリーちゃん……」
メリッサが店員さんにビールを注文する姿を見て、ミネルバが可愛い小型犬のように瞳を潤わせている。メリッサは本当に優しいなぁ。
「僕は子供ですから、オレンジジュースで勘弁してください」
そう偉そうな口調で喋るラックも、両手でグラス持って円卓に突き出してくれた。
そして、しばらくしてメリッサの手元にもビールが届き、皆は片手にジョッキかグラスを持って席を立ち、乾杯の態勢をとった。
そんな光景に、周りの席にいる客達はなんだ?と思いながら俺達に視線を向けている。
俺はその視線を意識しながら「コホン」と一回咳払いをした。
「いいか?今日のこの日に行われているこの宴は最後の宴なんかじゃ無い!皆が生き残って魔王を倒し、英雄となった俺達が再び酒を酌み交わす事を約束する為の宴だ!この約束は絶対である!必ず勝利を納めて世界に平和をもたらし、民衆からチヤホヤされようじゃないか!!」
俺の冗談まじりの素晴らしい演説にメリッサは、「なんですか、それ?」と笑みを浮かべながらツッコミをいれる。俺はそれを微笑みで返した。
「それでは皆、この勇者ヨハン・プリテンダーの名のもとに、約束の乾杯をしようじゃないか!……約束に……乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
俺達はジョッキとグラスを合わせて乾杯をし、飲み物に口をつけはじめた。
そんな光景を見ていた周りの客達から、やんややんやの大喝采が送られてくる。
「いいぞー!!」
「勇者さまぁ~!頑張って!!」
「勇者様!俺達に平和をもたらしてください!」
周りの客席からの声援に俺は手を振って応える。
ミネルバも喜んでプリプリ手を振っていて応えており、ヨウランも満更では無い表情で胸を張っていた。
ラックは無表情で席に座り、声援に応える事なく落ちいた様子だ。
対するメリッサはうつむいて恥ずかしいがっている様子である。
活気に溢れ、盛り上がる居酒屋。俺達の士気はそれと比例するかのようにどんどん高まっていく。溢れる想いを胸にしまい込み、楽しい宴の時間は刻々と過ぎていった。
時は遡る事4日前……
俺達は来たる魔王との最終決戦を前に、宿場にある居酒屋で円卓を囲みながら最後の宴に興じていた。
今までの苦難を語り合い、それも今となっては良い思い出だと話しに花を咲かせる。それをつまみに俺達の酒量はどんどんと増えていった。
「皆さん、飲み過ぎです。明日の朝には魔王城へ乗り込む為に宿を出発するんですよ?そろそろお酒は控えないと……」
まだ子供で、酒が飲めない少年発明家のラックが俺達の酒量を嗜めてくる。
「いやぁ~ん!ラックちゃんったら、おませさんなんだから!もう!」
「うわっ!」
何故だかいつも胸から肩にかけて開いた服を着ているエロババアこと黒魔術師のミネルバが、どろどろに泥酔をしながらラックの頭を抱え込み、張り裂けんばかりの乳袋にラックの顔を埋めさせていた。
ミネルバは「それそれぇ~」と言いながら、ラックの顔を胸でブリブリ擦りつける。
ラックは「うわぁ~」と言いながら多少の抵抗を試みているようだが、なされるがままになっていた。
……くそ、これだからショタ好きの三十路は……羨ましいぞラック!そこを変われ!
だが、そんな誰もが羨む光景を望ましく思っていない人物が一人いた。それは女僧侶のメリッサの事である。
神職について信心深いメリッサは、ラック同様にお酒を飲んでいない。
16歳で王国から聖女の称号を得ている彼女は、癒しの能力は天下一品である。
普段の立ち居振舞いも聖女の名に恥じず、清廉潔白、品性方正を地でいく模範的な僧侶だ。
それでいて寛容さも持ち合わせている為、酒の席でハメを外す事に対して普段からある程度理解をしてくれている。
しかし、眼前に繰り広げられている光景はあまりにも目に余るものがあったのだろう。メリッサはミネルバの行動を嗜めようとする。
「ミネルバさん!ヤメてください!ラックさんが苦しそうです!あと、少しお下品です!」
「あらぁ~、お堅いんだからぁ~。メリーちゃんもお酒を飲もうよぉ。別に僧侶だからってお酒を飲む事は戒律で禁止されてないんでしょ~?だったら飲もぉよぉ~」
ラックをおっぱいの沼から解放したミネルバは、今度はメリッサに抱きつきながらブリブリしはじめた。
メリッサは「やめてください!」と言いながら抵抗をするが、ミネルバは「飲もぉよぉ~」とか言ってメリッサから離れようとしない。
そんな光景を俺と一緒に笑って見ていた女性武術家のヨウランが、二人の間に口を挟む。
「飲んであげなよ、メリッサ。今日くらい酒を少し飲んだからって、女神様もメリッサの信心を疑わないって」
「いや、でも……」
「今日が最後の宴になるかもしれないんだ。魔王との戦いは熾烈を極めるはず。当然、命の保証なんてもんは何処にも無い。……だから、最後の宴になるかもしれない今日この日にメリッサと酒を酌み交わしたいんだよ、ミネルバは」
「ヨウランさん……」
本人の意図した所ではないだろうが、ヨウランの言葉により宴の席に沈黙としんみりとした空気が流れる。騒いでいたミネルバさえも言葉を失っていた。
ヨウランの言うとおり、魔王との戦いは激戦必至だ。仮に魔王を倒せても、皆が揃って生き残れるかどうかなんて分からない。
そうなれば、魔王を倒しても、このメンバーで行う宴はもう出来ない。皆、命の保証が無いのは覚悟の上ではあるが、それが頭にめぐってしまうと心に影が落ちてしまう。
ミネルバの泥酔も、そんな不安を誤魔化す為のモノであるのだろう。
だけど……
俺は流れる沈黙を断ち切るかのように席を勢いよく立ち、皆の視線を俺に向けさせた。
「大丈夫だ!このメンバーは誰一人欠ける事無く、必ず魔王を倒せるさ!必ずそうなる!」
俺のいきなり行なわれた宣言に、皆は唖然としている。
「ヨハンさん。それはなんの根拠があってですか?」
ラックは呆れた顔をして質問をするが、俺は胸を張って堂々と答えた。
「それはこの勇者"ヨハン・プリテンダー"様が率いる最強無敵のパーティーだからだ!最強の勇者と最強の精鋭が集まったこのパーティーに、怖いものなど何も無い。それに、皆に降りかかる火の粉は勇者である俺様が必ず振り払ってやる!だから、このパーティーの誰もが欠ける事なく、必ず魔王を倒すのだ!」
俺はそう言った後、高らかに「ハハハハハ!」と大笑いをわざとらしくしてみせた。
「……僕は根拠を聞いたんですよ?それは根拠の無い自信と言うんです。馬鹿ですか?」
ラックは更に呆れた様子で、眉間に手をあてながら「はぁ~」とため息をもらした。しかし、そんなポーズとは相反して口元に少し笑みがこぼれているように見えた。
いつのまにか他の皆にも笑顔が戻っている。
「そうだね……ヨハンの言う通りだ。皆で生き残って魔王を倒し、またこのメンバーで勝利の宴をやろうじゃないか」
ヨウランはそう言って立ち上がり、右手にビールが入っているジョッキを持って、テーブルの真ん中へとジョッキを突き出した。
俺はそれを見て、ヨウランと同様にジョッキを手に持って突き出す。
「……ハハハ、そうよ!また皆で飲みましょう!今日が最後の宴なんかじゃないわよ!」
ミネルバもたわわな胸を揺らしながら勢いよく立ち上がり、ジョッキを持って円卓に突き出した。
「はぁ~……今日だけですよ?……店員さん、スイマーン!ビールを一つ持ってきてくださぁ~い」
―はぁ~い!―
「メリーちゃん……」
メリッサが店員さんにビールを注文する姿を見て、ミネルバが可愛い小型犬のように瞳を潤わせている。メリッサは本当に優しいなぁ。
「僕は子供ですから、オレンジジュースで勘弁してください」
そう偉そうな口調で喋るラックも、両手でグラス持って円卓に突き出してくれた。
そして、しばらくしてメリッサの手元にもビールが届き、皆は片手にジョッキかグラスを持って席を立ち、乾杯の態勢をとった。
そんな光景に、周りの席にいる客達はなんだ?と思いながら俺達に視線を向けている。
俺はその視線を意識しながら「コホン」と一回咳払いをした。
「いいか?今日のこの日に行われているこの宴は最後の宴なんかじゃ無い!皆が生き残って魔王を倒し、英雄となった俺達が再び酒を酌み交わす事を約束する為の宴だ!この約束は絶対である!必ず勝利を納めて世界に平和をもたらし、民衆からチヤホヤされようじゃないか!!」
俺の冗談まじりの素晴らしい演説にメリッサは、「なんですか、それ?」と笑みを浮かべながらツッコミをいれる。俺はそれを微笑みで返した。
「それでは皆、この勇者ヨハン・プリテンダーの名のもとに、約束の乾杯をしようじゃないか!……約束に……乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
俺達はジョッキとグラスを合わせて乾杯をし、飲み物に口をつけはじめた。
そんな光景を見ていた周りの客達から、やんややんやの大喝采が送られてくる。
「いいぞー!!」
「勇者さまぁ~!頑張って!!」
「勇者様!俺達に平和をもたらしてください!」
周りの客席からの声援に俺は手を振って応える。
ミネルバも喜んでプリプリ手を振っていて応えており、ヨウランも満更では無い表情で胸を張っていた。
ラックは無表情で席に座り、声援に応える事なく落ちいた様子だ。
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