失クシテ始まる聖剣物語 〜勇者追放?魔王をあと一歩の所まで追い詰めたが、魔王を唯一倒せる「聖剣」を無くした事に気づいた時にはもう遅い。

周瑜 こうき

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街へ戻る道中〜SM編〜

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 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 魔王城を出で、俺達は外に止めている車へと乗り込み、一旦ミーティアの街へ戻る事にした。
 ラックが開発した車という乗り物は八人乗れる仕組みとなっている。座る席は3列あり、一番前の列は車を操る席を含めて2席ある。2列目、3列目は三人ずつ座れる仕組みとなっている。
 ラック曰く、そんな車の仕様を''ワゴン''だとか言うらしい。
 ラックは操作する為に一番前の列に座っている。2列目にはメリッサとヨウラン、3列目には俺とミネルバが座っている。
 そんな帰りの道中、俺はミネルバからお仕置きを受けていた。

「……あのぉ~ミネルバさま?」

「あぁ?誰が勝手に喋ってよいと言った?」

「すいません……」

 俺は一番後ろの席で身ぐるみを剥がされパンツ一丁になり、ロープで亀の甲羅のように縛られて拘束されていた。
 おまけに目隠しもされて何も見えない。どうやら勝手に発言をする権利も失っているようだ。
 車が時折大きく揺れるたびに俺の体はビクッとなり、何も見えない事も相まって俺の心は恐怖に苛まれていた。

 あぁ、目隠しで拘束をされながら何処かに移動されるって、こんなに怖いんだ……

「勝手に喋った罰よ。これでも咥えておきなさい」

「ガフッ!」

 目が見えないので何を咥えさせられたか分からないが、何か丸いものを口に咥えさせられた。その丸いものにベルトを巻き、頭の後ろに固定されたようで、その丸いものを吐き出そうとしても吐き出す事ができない。
 口が開きっぱなしのせいで次第に顎が痛くなってきた。

 地味だけどなんて効果的な拷問方法なんだ……

「さぁ、泣いて喚きなさい」

 ジュゥ…

「むむむむむむむ!!!!」

 声にならない叫び声が車中に鳴り響く。味わった事もないような熱さが『ジュゥ…』と音をたてて俺の胸に襲いかかってきた。どうやら蝋燭ろうそくろうを胸に垂らされたようだ。

「ほ~ら、蝋燭の味はどうだい?私に教えてごらぁん?そしたら許してあげる」

 ジュゥ…ジュゥ…

「ムー!!ムー!!ムー!!」

「そうだった、今あんたは喋れないのだったわね。うっかりしてたわ!オーホッホッホッ!!」

 ジュゥ…

「ムゥゥゥゥゥ!!!!!」

 鬼だ悪魔だ……こいつは魔王よりよっぽど魔王してるよ……
 なんでこんな残虐ババアが勇者のパーティーに所属しているんだ?魔王軍にのしをつけてこいつを送りつけてやりたいぜ!魔族としてこいつなら立派にやっていけるよ!
 そんな光景を見かねてか、メリッサがミネルバを止めようとしてくれた。

「あのぉ~、ミネルバさん。もうそろそろ……勇者様も反省してますし……」

「甘いわ!メリーちゃん!メリーちゃんは優しくていい子だけど、こいつにそんな優しくしたってつけあがるだけよ!しっかりと罰を与えなきゃ!」

 ジュゥ…

「ムー!!!!!」

 しっかり反省してるからもう許してくれ!!蝋燭はもう嫌だ!
 喋る事が出来ない為、そんな俺の想いがミネルバに通じる訳は無く、蝋燭の蝋が俺の肌に『ジュゥ…ジュゥ…』と次々に襲いかかってくる。

「ねぇ、ミネルバ。ヨハンの反省はともかく、ラックの教育になんだか悪そうだし、そろそろそこらへんで止めておいたら?」

「僕の教育はどうでもいいんですが、そろそろ目障りなんで止めてほしいです」

 ヨウランとラックもミネルバにやめるよう促してくれた。さすがに三人に止められたらミネルバも言うことを聞かざるおえないようで、「わかったわよ」と言って蝋燭の蝋を垂らすのを止めてくれた。
 ついでに目隠しと口のボールを取り、ロープの拘束もほどいてくれた。体の自由がしばらくぶりに戻ってくる。

「はぁ……死ぬかと思った……」

「大袈裟ね。そんなに熱くならない蝋燭を使ってあげたのに。本当にヘタれなんだから」

「アレより熱いヤツがあるのかよ……」

 拷問の世界は奥が深い。先程の体験はその世界では上っ面の部分。氷山の一角でしかないという事だ。
 絶対に敵軍には捕まらないようにしよう……
 そんな事を考えていると、車を操っているラックがいつもの淡々とした口調で俺に質問をしてきた。

「ところでヨハンさん?宿を出る前に『デュランダル』を失くしたと言ってましたけど、宿がある『ミーティアの街』で失くした可能性は無いんですか?」

「いや、どうだろう……。実は宿で持ち物の確認をする前からアイテムボックスのカバーが空いていてな、もしかしたら何かの拍子でデュランダルが気付かずにアイテムボックスから飛び出てしまったのかもしれん」

「さすがに馬鹿のヨハンさんでも、あんなそこそこ大きさのある剣が、腰についてるアイテムボックスから飛び出して気付かないとは到底考えられませんけど……」

「オイ、馬鹿は関係ないだろ」

 ちくしょ~……自分が少し頭が良いからって人の事を馬鹿にしやがって……しかし、今は失態をおかしたばかりだ。ここは堪えねば……

「そうなると……本当に手がかりがありませんね……。一刻も早く他人の手に渡る前にデュランダルを見つけないといけないのに……」

「えっ、どうして?デュランダルって試練をクリアした俺以外に扱える奴はいないんだろ?デュランダルを悪用される心配もないし、そんなに焦らなくても……」

「はぁ!?何を言ってるんですか?『勇者』の資格を持っていたら誰だってデュランダルを扱えますよ!?」

「えっ、マジッすか!?」

 えっ、なんで?せっかく苦労して試練をクリアしたのに、他の人も扱えちゃうの?マジっすか?
 ラックの口から放たれた衝撃事実に、俺の頭は理解が追い付かずに混乱していた。
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