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続・エイプリルフール2
しおりを挟む山菜おばばが腰を痛めた。一大事だ。胡瓜の酢の物を見舞いの品に、山菜おばばを尋ねると、米の配達を頼まれた。
米を貰いに行く。米職人は、茅葺民家の屋根裏部屋に住んでいる。一番奥の部屋だ。聞けば、滅多に外には出ないらしい。引きこもりだ。
合鍵を使う。ずかずかと家へ上がり込む。
どんよりと暗い戸の前で、でんでん太鼓を叩いてみると、少しだけ引き戸が動く。指を挟み、一気に戸を開ける。勢いは大事だ。
バラバラと暗い色の半紙が宙を舞う。換気を随分していないようだ。窓も開ける。
米職人を探すと、鋸鎌を手に持って、隅で小さくなってる。事情を話すと、そうなら先に言って欲しいと、警戒を解いてくれた。よかった、よかった。
手のひら程の平皿と、水の入った壺を受け取る。襷を着物に引っ掛けて、なにやらよたよたと準備を始めた。
散らかった半紙を退ける。よく見ると、下へ続く扉があった。開けると田んぼが広がっていた。
小さな稲が植っており、薄く張られた水面が揺れる。春の田んぼだ。ハシゴを使って田んぼに降りる。
米職人が右手の指を、平皿に張った水に漬ける。目を閉じて、ゆっくりゆっくり円を描くように指を動かすと、指の先から乳白色が広がっていく。不思議だ。
白い筆で紙の上に点を打つ。丁寧に丁寧に。一つ一つ米を書いていく。点で真っ白になった紙を丸める。絞ると、じゃらじゃらと米が落ちる。結構手間がかかるのだなぁ。
驚かせてしまったお詫びも兼ねて、散らかった部屋を掃除した。米職人からおずおずと、いつかの胡瓜のぬか漬けが、美味かったのだと礼を言われた。通な奴だ。
今度酒でも飲みに誘おう。
◆◆◆◆◆
軒先で雨を眺めていると、何か飛んで来て壁に刺さった。危ない危ない、アスパラガスだ。
壁に刺さったアスパラガスは、硬くてとても食べられない。思い切り引き抜いて、ふかふかの土に植え直す。来年にはまた生えてくるだろう。
飛んで来なかったアスパラガスがこちら。
まだ飛んだことのないアスパラガスは、びっくりするほど大人しい。調理するなら今のうちだ。
豚肉を巻いて、胡椒を少々。酒と醤油で炒める。そこまで手間はかからない。
アスパラの肉巻きが出来た。シンプルだが、とても美味しい。
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