十の加護を持つ元王妃は製菓に勤しむ

水瀬 立乃

文字の大きさ
21 / 89

おもてなしの計画

しおりを挟む
騎士学校に通い始めて間もなく、ルフナにお友達ができた。
オータナル男爵家のご子息のようだけれど、損得勘定なく仲良くしてくれているようだ。
私が息子を出産したことを夫や実家に知らせていれば、ルフナに平民の苦労をさせることも、身分のことで不自由な思いをさせることもなかった。
私の我儘でルフナは身分相応の生活ができなくて、通えるはずの貴族学校にも通えない。
それをずっと心のどこかで負い目に感じていたけれど、こうしてルフナを一人の人間として尊重し、友達付き合いをしてくれる人に出会えたことがとても喜ばしかった。
お友達の彼が家に遊びに来ることになったと聞いた時は、私の方が子どものようにはしゃいでしまった。
豪邸で生まれ育った貴族のご子息が、庶民を自宅に招くのではなく自ら狭くて小さな家を訪ねようと思うなんて、余程仲が良くなければ話題にも上らないし約束も交わしたりはしない。
その日はお店を定休日にすると言ったら、ルフナは苦笑いを浮かべて首を振った。
「そこまでしなくていいよ」と断られてしまったので、それならせめてアフターヌーンティーを楽しんでもらいたい。
私は早速、おもてなしの計画を立て始めた。

翌日、閉店後に雑貨店へ行って三段のケーキスタンドやお皿、来客用のティーセットを選び、人気の紅茶店でおすすめの茶葉をいくつか購入した。
途中で王家御用達の洋菓子店・マルティエヴァリスに立ち寄って、メープルフィナンシェとアイスボックスクッキーを手に取る。
あの頃、頑張った自分へのご褒美に食べると決めていた懐かしのお菓子だ。
ケーキスタンドに乗せるお菓子はできるだけ自分の手で作りたくて、店では使わない小麦粉や果物、チョコレートなども買っていたら、予想以上に大荷物になってしまった。
家まではそれほど遠くないし、ちょっと頑張れば大丈夫かと思って歩き出すと、たまたまお店の常連さんと会って運ぶのを手伝わせてしまった。
お店の外で会ったときにも、お客さんの時と同じように接してくれることが嬉しい。
貴族同士ではこんな風に親切心を分かち合うような関係はなかなか作れなかったし、その裏には必ず家名が持つ権力と懇意になりたいという意図が透けて見えた。
だからどんな小さなことでも、手伝ってくれたらすごく嬉しい。
お店でも親しくしてくれるお客さんにはついついサービスしてしまう。
二号店は村とは違っていろいろな人が来るのだから、程々にしなければとは思うのだけれど。
今度あのお客さんがお店に来たら、何かお礼をしよう。
荷物を二階まで運び、あらかた片付け終わったらお菓子作りに取り掛かる。
今日作るのは、スコーン。
米粉と小麦粉で二種類作ることにする。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた

今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。 レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。 不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。 レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。 それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し…… ※短め

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

辺境伯へ嫁ぎます。

アズやっこ
恋愛
私の父、国王陛下から、辺境伯へ嫁げと言われました。 隣国の王子の次は辺境伯ですか… 分かりました。 私は第二王女。所詮国の為の駒でしかないのです。 例え父であっても国王陛下には逆らえません。 辺境伯様… 若くして家督を継がれ、辺境の地を護っています。 本来ならば第一王女のお姉様が嫁ぐはずでした。 辺境伯様も10歳も年下の私を妻として娶らなければいけないなんて可哀想です。 辺境伯様、大丈夫です。私はご迷惑はおかけしません。 それでも、もし、私でも良いのなら…こんな小娘でも良いのなら…貴方を愛しても良いですか?貴方も私を愛してくれますか? そんな望みを抱いてしまいます。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 設定はゆるいです。  (言葉使いなど、優しい目で読んで頂けると幸いです)  ❈ 誤字脱字等教えて頂けると幸いです。  (出来れば望ましいと思う字、文章を教えて頂けると嬉しいです)

【完結】あなたに従う必要がないのに、命令なんて聞くわけないでしょう。当然でしょう?

チカフジ ユキ
恋愛
伯爵令嬢のアメルは、公爵令嬢である従姉のリディアに使用人のように扱われていた。 そんなアメルは、様々な理由から十五の頃に海を挟んだ大国アーバント帝国へ留学する。 約一年後、リディアから離れ友人にも恵まれ日々を暮らしていたそこに、従姉が留学してくると知る。 しかし、アメルは以前とは違いリディアに対して毅然と立ち向かう。 もう、リディアに従う必要がどこにもなかったから。 リディアは知らなかった。 自分の立場が自国でどうなっているのかを。

【完結】私に可愛げが無くなったから、離縁して使用人として雇いたい? 王妃修行で自立した私は離縁だけさせてもらいます。

西東友一
恋愛
私も始めは世間知らずの無垢な少女でした。 それをレオナード王子は可愛いと言って大層可愛がってくださいました。 大した家柄でもない貴族の私を娶っていただいた時には天にも昇る想いでした。 だから、貴方様をお慕いしていた私は王妃としてこの国をよくしようと礼儀作法から始まり、国政に関わることまで勉強し、全てを把握するよう努めてまいりました。それも、貴方様と私の未来のため。 ・・・なのに。 貴方様は、愛人と床を一緒にするようになりました。 貴方様に理由を聞いたら、「可愛げが無くなったのが悪い」ですって? 愛がない結婚生活などいりませんので、離縁させていただきます。 そう、申し上げたら貴方様は―――

【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜

ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。 しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。 生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。 それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。 幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。 「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」 初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。 そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。 これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。 これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。 ☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆

処理中です...