十の加護を持つ元王妃は製菓に勤しむ

水瀬 立乃

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進級試験①(ルフナ視点)

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母様に挨拶した後、二人は「想像していたのと違う」と口を揃えて、最後まで半信半疑のまま帰っていった。
俺達と入れ違いに店を出ていったお客さんも唖然としていたけど、きっと同じように思ったんだろうな。
こういう反応は今に始まったことじゃないし、今更何とも思わないけど…あのお客さんには何となく気の毒に思った。
それ以降も二人は俺の住む小ぢんまりとした家と母様のおもてなしが気に入ったみたいで、また何度か遊びに来た。
母様のことも会って話をする内に段々本当だとわかったのか、ある日「お前が俺達を騙そうとして顔の似た女性に頼んで芝居させてるのかと思ったけど、本当に母親だったんだな」と笑った。心外だ。
呼び方もいつの間にか「ステアさん」と「ステアお姉さま」に変わって、リゼはお菓子作りを教わったりして特に懐くようになった。
冬の休暇にはセインの生家――オータナル男爵家のカントリーハウスに招待されて、村以外の地域や貴族の邸宅を初体験した。

そうこうしている内にあっという間に新しい年を越して、学年末の進級試験週間が始まった。
試験期間は七日間で、初めの二日は筆記、残りの五日は校内外での実技試験となっている。
進級率は学年にもよるけれど毎年約六~七割前後で、九割以上が必ず進級する貴族学校と比べると試験の内容も審査も非常に厳しい。
筆記試験はほとんど座学の復習のようなもので、セインとしっかり対策もしたから特段難しくはなかった。
問題は実技試験で、当日に具体的な試験内容が聞かされるため日々どれだけの鍛錬を重ねてきたかで結果が変わる。
実技の一日目と二日目は、校内での剣術と射撃、武装障害走、防災演習。
三日目は早朝に校舎に集合して、約50km先にある軍の駐屯地まで八時間かけての長距離走の後、2チームに分かれての模擬騎馬戦。
翌日早朝には軍事用に飼育された猛禽の獣・イグラルを使役して魔物の森へ移動すると、試験官がランダムに選んだチームに分かれて索敵・実戦・野営演習を行い、五日目の日の出からそのままチーム戦のバトルロイヤルに切り替わった。
試験が終了した六日目の朝に、いつもの訓練前のトレーニングメニューをこなし終えた時の状態を見て、最終審査をするらしい。
実技試験で合格点を勝ち取る為には、目的遂行までの動作の効率化と、その先に起こりうるあらゆる可能性を見極めていかに上手く体力を分散・温存できるかにかかっている。
チーム内での協調性も大切で、仲間割れをするようなことがあれば絶対に勝ち残れない。
どの講義でも口酸っぱく言われているのだが、まだその真意を理解できていない生徒がいるようだ。
彼等も頭では理解はしているのかも知れない。
でもこうしてチームメンバーの俺に敵意を向けてくる辺り、腹落ちしていないのだろう。
感情と行動は別物という言葉が、この現状を形容するのにぴったりだと思った。

「俺達は貴様のような卑しい人間を仲間とは認めない!!」
「このまま何事もなく試験を終えられると思わないことですね…」
「お前は俺達の最初の敵だ」
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