十の加護を持つ元王妃は製菓に勤しむ

水瀬 立乃

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新たなお友達

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店の中で暴れ、ショーケースや壁や床などを滅茶苦茶に壊した男達に真意を問い質すと、どうやらピルルーシアというパン屋の店主に命じられてしたことのようだった。

「パン屋さんがなぜこんなことを?」
「そのぉ……ここの店が繁盛してるってんで、その所為で客が来ねぇから…邪魔だからっつーことで……」

なんと、ホワン二号店はこの一年の間に他のお店から逆恨みをされていたらしい。
商品に納得がいかなかったお客様が犯人かも知れないと思っていたので、呆気に取られてしまった。
それはルフナも同じだったようで、思わず二人で顔を見合わせる。
そうとわかれば、これ以上聞きたいことはない。
彼らはそのパン屋さんの店主に雇われただけのようなので、そのままお帰りいただくことにした。
ぞろぞろと大人しく店を出ていく大男達を見送って、私はブライトマン様ご一家に頭を下げた。

「お騒がせして大変申し訳ございませんでした。お怪我はございませんでしたか…?」
「ええ…大丈夫よ。でも驚いた。あなた意外とお強いのね!」
「お恥ずかしいところをお見せしました…。とにかく夢中で…」

人が変わりすぎた自覚はあるので、敬遠されるかと心配だったけれど…杞憂だったみたいでほっとする。

「それにしても、あのまま帰してよろしかったのですか?きっとこれが初めてではありませんよ」
「ええ、恐らくそう思います。でも、本当に裁かれるべきなのは彼らを雇った人間ですから…」
「それはそうでしょうけど…」

私が諦めたように微笑むと、ブライトマン様は目を瞬かせた。

「これも、きっと神のお導きです。しばらく店を休むようにということでしょう」
「通報しないのですか?」
「これで相手の気が済むのなら、大したことではありません。大切なお店を壊されたことは悲しいですし、怒りも湧きますが…。この場に居合わせた大切なお客様が無事でしたので、それで手打ちにすることにします」
「…なんと神々しい……」

話の途中で、彼が突然恍惚とした表情になって呟いた。
息子さんに肘で小突かれてすぐに元に戻ったけれど。

「? すみません。いま何とおっしゃいましたか?」
「い、いえ!寛大なお方ですね、ステアさんは…ハハハ」
「それはブライトマン様の方ですわ。このような目に遭ったというのに、非難されるどころか心配してくださるなんて。本当にありがとうございます」
「そっ…そんな…!」
「奥様にもご子息にも、感謝の申し上げようもございません。何かお礼ができればよいのですが…」
「それなら、私とお友達になってくださらない?」

奥様のお申し出に、何故かまた涙目になっていたブライトマン様が慌てたように声を上げた。

「なっ…何を突拍子もないことをおっしゃって…!」
「ほら、こうして夫はいつも私のことを束縛するのよ。だから私、結婚してからずっとお屋敷に閉じ込められてしまって、お友達がいないの」
「エリしゃっ…!」
「あなたのお友達なら、私達もお友達になっていいわよね?」

彼女は有無を言わせない笑顔でご主人を黙らせると、私には人懐こくて可愛らしい笑みを向けて来た。
ブライトマン様は女性を束縛するような男性には見えないし、どちらかというと尻に敷かれているような気がするのだけれど、人は見かけによらないものだから奥様の言う通りなのかも知れない。

「私はエリニスよ。この子はセリウス。まだ14歳なの。よろしくお願いするわね」
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