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意外な仲裁人(ルフナ視点)
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その翌日から、なぜか先輩達の俺への態度が一変した。
昨日までは少し雑談をすることもあった先輩は話しかけるなオーラを漂わせているし、一部の先輩方からは親の仇かのような視線を向けられる。
挨拶は一方通行で、ちらちらとこちらを気にするくせに目が合うと逸らされる。
ガシャっと軽い金属同士がぶつかる音がして手元を見ると、トレーの上でカップが倒れて中身が昼食のプレートの上にかかっていた。
「気をつけろよ新人」
食堂で座る席を探していたら向かいから歩いてきた先輩の肩とぶつかった。
すみません、と頭を下げる。
そんなに狭い通路でもないはずだけど、きょろきょろして前をちゃんと見ていなかった俺も良くなかったな。
ビスケットは水浸しになったけど、カスレとチキンのソテーは無事だった。
空いていた窓側の席に座って、ふやけたビスケットをカスレと混ぜて食べる。
(うん、こうしても美味しい)
俺が食べているところを見て指を差す先輩もいた。
「見ろよ…貧民がエサ食ってるぞ」
「うわ…マズそー…あんなもん食べれるなんて舌おかしいんじゃないのか?」
彼等は貴族の出身だから食べ物に困ったことはないんだろうな。
俺も母様と母さんのおかげでひもじい思いをしたことはないけど…。
午前中の訓練でもやたら顔を狙われたり足を払われそうになったりで、何度か続くとさすがの俺も意地悪をされているんだろうなと気が付いた。
こういうのは慣れていたつもりだけど、一人だと意外と堪えるものなんだな…と豆を咀嚼しながら考える。
騎士学校でも同じようなことはあったけど、セインが一緒だったからそんなに気にならなかった。
四面楚歌みたいな状況だけど、でも不思議と悲観的な気持ちにはならない。
この場にいないだけで騎士団にはコストルさんやグレイル様がいるし、団は違うけどセインもいる。
家に帰れば母様がいて、セリウスもリゼもブライトマン様達もいる。
俺が生きている場所は騎士団(ここ)だけじゃない。
それに俺は騎士としてやりたいこと、やらなきゃならないことがある。
こんなつまらないことで足を止めるつもりはない。
昼食を終えると、午後からは警備の為に王宮へ入った。
先輩達に交代の時間になったことを告げると、露骨に顔を顰められて目を瞬かせる。
何かをした覚えはないので、不機嫌そうに見えるのは体調不良なのかも知れないと思い当たって気遣ったら殴られてしまった。
「口の利き方に気をつけろ!」
大丈夫ですか?と聞いたのがまずかったかも知れない。
目上の人に尋ねるのだから友達のように聞いてはいけなかったな。
「申し訳ありません。顔色が優れないようにお見受けしたもので、つい稚拙なご機嫌伺いをしてしまいました」
「フン、そうやって団長にも取り入ったんだろう。いけ好かない奴だ」
そう言われてはじめて、先輩方の変化の理由に思い当たった。
昨夜、陛下の私室から宿舎に戻る途中まで俺はグレイル様と一緒にいた。
仕事の話ではなかったからお互いに雰囲気も穏やかだったし、それを見られていたのかも知れない。
グレイル様との関係が嫉妬を買う原因だとわかっていたのに軽率だった。
これ以上目を付けられると色々やりづらくなるし、ほとぼりが冷めるまで耐えるしかないな。
先輩の気が済むまで拳を受けながら内省していると、その場に似つかわしくない高い声が響いた。
「わたくしの部屋のそばで何をしているの?」
昨日までは少し雑談をすることもあった先輩は話しかけるなオーラを漂わせているし、一部の先輩方からは親の仇かのような視線を向けられる。
挨拶は一方通行で、ちらちらとこちらを気にするくせに目が合うと逸らされる。
ガシャっと軽い金属同士がぶつかる音がして手元を見ると、トレーの上でカップが倒れて中身が昼食のプレートの上にかかっていた。
「気をつけろよ新人」
食堂で座る席を探していたら向かいから歩いてきた先輩の肩とぶつかった。
すみません、と頭を下げる。
そんなに狭い通路でもないはずだけど、きょろきょろして前をちゃんと見ていなかった俺も良くなかったな。
ビスケットは水浸しになったけど、カスレとチキンのソテーは無事だった。
空いていた窓側の席に座って、ふやけたビスケットをカスレと混ぜて食べる。
(うん、こうしても美味しい)
俺が食べているところを見て指を差す先輩もいた。
「見ろよ…貧民がエサ食ってるぞ」
「うわ…マズそー…あんなもん食べれるなんて舌おかしいんじゃないのか?」
彼等は貴族の出身だから食べ物に困ったことはないんだろうな。
俺も母様と母さんのおかげでひもじい思いをしたことはないけど…。
午前中の訓練でもやたら顔を狙われたり足を払われそうになったりで、何度か続くとさすがの俺も意地悪をされているんだろうなと気が付いた。
こういうのは慣れていたつもりだけど、一人だと意外と堪えるものなんだな…と豆を咀嚼しながら考える。
騎士学校でも同じようなことはあったけど、セインが一緒だったからそんなに気にならなかった。
四面楚歌みたいな状況だけど、でも不思議と悲観的な気持ちにはならない。
この場にいないだけで騎士団にはコストルさんやグレイル様がいるし、団は違うけどセインもいる。
家に帰れば母様がいて、セリウスもリゼもブライトマン様達もいる。
俺が生きている場所は騎士団(ここ)だけじゃない。
それに俺は騎士としてやりたいこと、やらなきゃならないことがある。
こんなつまらないことで足を止めるつもりはない。
昼食を終えると、午後からは警備の為に王宮へ入った。
先輩達に交代の時間になったことを告げると、露骨に顔を顰められて目を瞬かせる。
何かをした覚えはないので、不機嫌そうに見えるのは体調不良なのかも知れないと思い当たって気遣ったら殴られてしまった。
「口の利き方に気をつけろ!」
大丈夫ですか?と聞いたのがまずかったかも知れない。
目上の人に尋ねるのだから友達のように聞いてはいけなかったな。
「申し訳ありません。顔色が優れないようにお見受けしたもので、つい稚拙なご機嫌伺いをしてしまいました」
「フン、そうやって団長にも取り入ったんだろう。いけ好かない奴だ」
そう言われてはじめて、先輩方の変化の理由に思い当たった。
昨夜、陛下の私室から宿舎に戻る途中まで俺はグレイル様と一緒にいた。
仕事の話ではなかったからお互いに雰囲気も穏やかだったし、それを見られていたのかも知れない。
グレイル様との関係が嫉妬を買う原因だとわかっていたのに軽率だった。
これ以上目を付けられると色々やりづらくなるし、ほとぼりが冷めるまで耐えるしかないな。
先輩の気が済むまで拳を受けながら内省していると、その場に似つかわしくない高い声が響いた。
「わたくしの部屋のそばで何をしているの?」
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