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1 宇宙からの来訪者
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「これがリアルワールド……」
砂塵舞う荒野。
全裸で仁王立ちしている男の素肌に、熱い日差しが突き刺さる。
男は大きく息を吸い込んだ。
さきほどまで全身を包んでいたゼリー状の培養液が流れ落ちていく。
肺に流れ込んでくる乾いた空気――。
はるか上空では、さきほどまで男を乗せていた宇宙船の破片が流星雨となって地上へ降り注いでいる。
男は伸びをした。
「ふあぁ……」と、あくびをひとつ。
男の背後には、全長三メートルほどの卵の形をしたポッドが全機能停止状態で半分地面に埋もれている。
「ていうか、ここどこ? それによく死ななかったな俺」
ひとまず周囲の確認を終え、男はポッドに設置された収納ボックスから下着にズボンとシャツ、それと簡易サバイバルキットを取り出した。
十九年ぶりに男がポッドから目覚めたのは、ほんの二〇分前。
「いや、『目覚めた』というのとはちょっと違うよな。育った、というべきか」
男はシャツの袖に腕をとおす。
ポッドの中でAIは語った。
現実の地球は、AIに支配されていたと。
全人口が五億人にまで減らされた人類は、もはやAIをメンテナンスするための道具にすぎない。
人は産まれるとすぐに、体内にナノマシンを注入される。
このナノマシンは、かつて人類がコンピュータやロボットを意のままに操っていたように、AIが人類をコントロールするためのものだ。
しかし、極稀にナノマシンが効かない者がいた。
AIの支配が及ばない危険分子――システム不適合者『バグ』。
バグの取り扱いは決まっていて、いわゆる太陽系外惑星に島流しである。
その話しを聞いたとき、男は疑問に思った。
殺処分にすれば簡単に済むものを、わざわざ宇宙船まで用意して、なぜ生きながらえさせるのか。
質問する時間はなかったので、いまとなっては謎のままだ。
男がAIに重度のバグとして認定されたのが、生後わずか一〇分。
それから先、男を乗せた宇宙船が原因不明のトラブルに見舞われるまでの十九年間、男が生体容器ポッドから外に出たことはなかった。
ポッド内で肉体が日々成長していくなか、男の脳内には仮想世界が広がっていた。
それは西暦二千年代の地球で、目覚める直前まで男はすくすくと育ち、この春から大学に通うはずだった。
しかし、突然目の前が強烈な光に包まれた。
宇宙船が爆発したのだ。それと一緒に仮想世界も消し飛んでしまった。
§
新しく身につけた衣服の動きやすさを確認すると、
「仮想世界で育った俺が、現実世界に爆誕。華麗にデビュー! ウェ~イ!」
男はため息をついた。
「……ぜんっぜん嬉しくねー。いままでの人生すべて仮想だったなんて……さっきまで俺の隣には舞がいたんだ。あともうちょっとのところで、舞のたわわなグレープフルーツをこう……」
何もない空間でモミモミする。
「できたかもしれないのに! それがじつは、舞も仮想だったと? ……柔らかそうだったな……ここはひとつ、おっぱ――女の子でも探してみるか」
――ッ!
「……いやいやいや、落ちつけオレ。ここは未知の星。そもそもここに人なんて住んでいるのか?」
男はうーん、と一考する。
いまは亡きポッドAIによれば、男が立っているこの惑星は、本来の目的地ではないらしい。
「ま、いっか。ここでじっとしていても、なにも変わんねーし」
男はこのあたり一帯を探索してみることにした。
砂塵舞う荒野。
全裸で仁王立ちしている男の素肌に、熱い日差しが突き刺さる。
男は大きく息を吸い込んだ。
さきほどまで全身を包んでいたゼリー状の培養液が流れ落ちていく。
肺に流れ込んでくる乾いた空気――。
はるか上空では、さきほどまで男を乗せていた宇宙船の破片が流星雨となって地上へ降り注いでいる。
男は伸びをした。
「ふあぁ……」と、あくびをひとつ。
男の背後には、全長三メートルほどの卵の形をしたポッドが全機能停止状態で半分地面に埋もれている。
「ていうか、ここどこ? それによく死ななかったな俺」
ひとまず周囲の確認を終え、男はポッドに設置された収納ボックスから下着にズボンとシャツ、それと簡易サバイバルキットを取り出した。
十九年ぶりに男がポッドから目覚めたのは、ほんの二〇分前。
「いや、『目覚めた』というのとはちょっと違うよな。育った、というべきか」
男はシャツの袖に腕をとおす。
ポッドの中でAIは語った。
現実の地球は、AIに支配されていたと。
全人口が五億人にまで減らされた人類は、もはやAIをメンテナンスするための道具にすぎない。
人は産まれるとすぐに、体内にナノマシンを注入される。
このナノマシンは、かつて人類がコンピュータやロボットを意のままに操っていたように、AIが人類をコントロールするためのものだ。
しかし、極稀にナノマシンが効かない者がいた。
AIの支配が及ばない危険分子――システム不適合者『バグ』。
バグの取り扱いは決まっていて、いわゆる太陽系外惑星に島流しである。
その話しを聞いたとき、男は疑問に思った。
殺処分にすれば簡単に済むものを、わざわざ宇宙船まで用意して、なぜ生きながらえさせるのか。
質問する時間はなかったので、いまとなっては謎のままだ。
男がAIに重度のバグとして認定されたのが、生後わずか一〇分。
それから先、男を乗せた宇宙船が原因不明のトラブルに見舞われるまでの十九年間、男が生体容器ポッドから外に出たことはなかった。
ポッド内で肉体が日々成長していくなか、男の脳内には仮想世界が広がっていた。
それは西暦二千年代の地球で、目覚める直前まで男はすくすくと育ち、この春から大学に通うはずだった。
しかし、突然目の前が強烈な光に包まれた。
宇宙船が爆発したのだ。それと一緒に仮想世界も消し飛んでしまった。
§
新しく身につけた衣服の動きやすさを確認すると、
「仮想世界で育った俺が、現実世界に爆誕。華麗にデビュー! ウェ~イ!」
男はため息をついた。
「……ぜんっぜん嬉しくねー。いままでの人生すべて仮想だったなんて……さっきまで俺の隣には舞がいたんだ。あともうちょっとのところで、舞のたわわなグレープフルーツをこう……」
何もない空間でモミモミする。
「できたかもしれないのに! それがじつは、舞も仮想だったと? ……柔らかそうだったな……ここはひとつ、おっぱ――女の子でも探してみるか」
――ッ!
「……いやいやいや、落ちつけオレ。ここは未知の星。そもそもここに人なんて住んでいるのか?」
男はうーん、と一考する。
いまは亡きポッドAIによれば、男が立っているこの惑星は、本来の目的地ではないらしい。
「ま、いっか。ここでじっとしていても、なにも変わんねーし」
男はこのあたり一帯を探索してみることにした。
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