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レジスタンス?

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  リンツさんの叔母さんの家を出て、酒場に向かった。

ほろ酔いで、人の良さそうな冒険者をさがす。

楽しそうに飲んでる2人を見つけ、テーブルにエールの入ったグラスを置きながら話しかける。

「すいません、僕この国に初めて来たので、少しお話し聞かせてもらっても良いですか?」

「おっ、兄ちゃん、ありがとな」
「何でも聞いてくれよ」

俺は、他の召喚者の事を聞く前に、気になっていた事を質問した。

「今の西の魔法使い以外の方の名前は、なんと言うのですか?」

「変わった事を聞く兄ちゃんだな」

「そんなもん決まってるさ、ずっと昔から東も西もほか全部、マグラ家の方々がなってるよ」

一族で全て仕切ってるのか。何が有った?

「この国で勇者の召喚をしたって本当ですか?」

「ああ、やったみたいだな、この国では、60年に1度やるみたいだからな」

「今回、何か変わった事はなかったですか?」
『アキ、誰か来るわ、敵意は無いみたい』

チャラい男が、俺の耳もとで小声で話す。

「この国でそんな事、堂々と話すと危険ですぜ、他の人達にも害が及びますし、話が聞きたいのなら俺が良い所を紹介いたしやす」


なるほど。

「いくら払えばいい?」

「これは話しが早い。俺には小遣い程度、その先にはチョイとかかります」

「分かった、頼む」と言って金貨1枚渡した。

「こいつは有難い、サービスするよう言っときますよ。では、そちらの席でお待ちを」

俺は「お話しありがとう御座いました」と言って、テーブルにエール2杯頼み、カウンターに座った。

しばらくすると別の男がカウンターに来て、ついてこいと目で合図する。

建て物の壁と壁の狭い間に入って行く、降りる階段を進むと小さな部屋が有った、中に入れの合図、黙って従う。


センスのいい服を着た男が座っていた、着こなしにもスキがない。

『アキ、この男出来るわよ』
『ハッカー何か面白いスキル有る?』
『アキが持って無いのは隠遁かな』
『気配遮断とどう違う?』
『隠遁は上位スキルだ』
『じゃ、交換で』
『了解』


「質問1つにつき金貨10枚だ」
「金貨は持って無いが、これでどうかな?」
俺はアイテムBOXから漆黒の剣を出して見せた。

「それは、珍しい物をお持ちですな。確認しても?」

「もちろん」
机の上に剣を置いた。

「信じられん、呪われていない漆黒の剣なんて初めて見る。しかも本物に間違い無い、どこでこれを?」


「それはナイショ!」

「君は何者です?おっと、これは失礼、今のは聞かなかった事にしてくれ。……よろしい、何でも聞いてくれ」


「有難い、では、始めにこの国の歴史から質問だ。昔いた東、南、北の魔法使いはどうなった?」


「本当に面白いね君は、そこからかい? では教えよう、大賢者フェデス様を殺したのは3人の魔法使いだと言うジャギンに、3人は殺された」


はいィー、そんな馬鹿な。ジャギンの奴、でっち上げたな。

「フェデスさんの子供か、その人達の子供や子孫は?」

「子供は居たが全員殺されたとされている」

「分かった。今回、召喚された勇者はどうなった?」

「取り込まれた男女2人以外は全員逃げたよ」

男女2人か?大学生のカップルみたいだな。

これはどうしようもないか、女子高生達は逃げたようだし、ひとまず安心だな。

「では、今の国王の名前は?」

「ジャルロ・シュタイン・マグラ」

「ジャギンはいつ死んだ?」

「今から259年前だ」

「勇者を召喚する目的は?」

「マグラ家の目的は、クロゴスにあるダンジョンから古代の魔道具を探す事と、それに使う宝珠を他の4つの国にあるダンジョンで手に入れる事だ」

「どんな魔道具ですか?」

「時空間を造り出す物らしいが、詳しくは判らない。マグラ家の秘伝の書に書いてあるそうだ」


「今まで召喚された勇者はどうなりました?」

「逆らえば始末され、逃げれば刺客を送られ殺される。逃げきれた勇者がいたかは私達には分からないが、裏社会の者に聞けば面白い話しが聞けるかも知れないよ」


くそっ、外道め。

「ありがとう、以上で終了です。では」

「少しお待ちを、これをどうぞ」

魔法陣が刻み込まれた金貨だ。

「もし、また聞きたい事があれば、あの酒場のマスターに見せてくれ。但し、人には見せない方がいい、特にこの国では」

「分かった、気をつけるよ」


ーーーー



「何者ですかね、あの兄ちゃん」

「まあ、いずれにせよ敵にはしたくは無いな」

しかし気になる、フェデス様の事をまるで親しい友の様に、フェデスさんと言った事が。

ーー

「魔道具が有れば、元の世界に戻れるかもな」

『可能性は十分に有るな』

「ハッカー、あの人ただの情報屋じゃ無いでしょ?」

『そうだ、レジスタンスだね』
「レジスタンス? 何にたいして?」

『おそらくマグラ家』

ハッカーあんた名探偵かよ。

「ジャギンの子孫に対してか? 面白い話だ、リンツさんの叔父さんもレジスタンスと言う事か」

『そうなるな』

ジャギンに恨みがあるのは、フェデス、3人の魔法使い、異世界人とそれぞれの子孫と言う事になるけど。


俺は宿に帰って寝る事にした、今日は疲れた。


翌日、俺が宿の食堂で朝飯を食べていると、リンツさんがテーブルに来た。


「アキさん、昨日はすいませんでした」
「いいえ、大変でしたね」

「叔母は私の住む街、サザンビに行く事になりました」

「サザンビですか?」
「ええ、この国とクロゴス王国との国境にある街です」

「クロゴス? ダンジョンのある?」

「はいそうです」
「……俺も一緒に行っても良いですか?」

「えっ!もちろん良いです。心強いです」


出発は、2日後のサザンビ行きの馬車で行くことになった。

俺達3人の他に3人が乗る、計6人だ。

護衛は、馬車の運営商会が雇った冒険者4人がつくそうだ、今回も長旅になるけど、クロゴス王国にあるダンジョンには興味がある。

それに、胸くそが悪いので、マグラ家の思い通りにはさせたく無い、奴らの探している魔道具と宝珠を先に押さえるつもりだ。

ダンジョンに行けば、取り込まれた勇者に会う機会もあるだろう。


道中、リンツさんの両親は、ポーションとか魔道具を作ってた錬金術師だと分かった、家に帰ったら、叔母さんとお店をやっていくそうだ。


途中、パンセル、ジュレンの街で宿をとり、出発してから20日後にマドラに戻って来た。


「懐かしいですね」
「そうですね、あの時は本当にありがとう御座いました」

「いいえ、そう言えば冒険者としてまだ何もしてないですね」

「ふふ、このままでは、登録が失効してしまいます。サザンビに戻ったら、店の合間に依頼を受け無くては」


「本当ですね、俺も頑張らないと」

『彼女、けっこう素質が有るぜ。火、水、風、土の全属性だしな』

『そうなのか』

『スキルは錬金術、索敵、魔力圧縮まだスキルレベルが低いけどな、そしてユニークでリアクター、これは本人も使い方が分かって無い』


『そんな事って有るのか?』

『アキだってオレ達に聞かなかったら、分からずに遠回りしたのでは?』

『あっ、そうか』

『お話し中悪いけど、来たわよ』
『けっこういるな、盗賊だ。20人以上いる』

「風の弾丸の皆さん、20人以上の盗賊が来ます」

「なに! 分かった、みんな迎撃の用意だ」
「がってんだ!」

「リンツちゃん」
「叔母さん、大丈夫よ、アキさん?」
「心配入りませんよ、リンツさん」
「はい」

 盗賊達は、護衛の人達に簡単に倒されていく。

卑弥呼さんが、盗賊どもの意識を半分飛ばしていたもんね。



盗賊どもを倒してサザンビに着いたのは、5日後だった。

俺はしばらくここで暮らしながら、帰る方法を探す事にする。




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