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王都ヘ ①

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『なんで献上をするの』

「この先、自分のしたい事をするには、後ろだてが有った方が良いと思ったからだよ」

『それは言えるな』
「次のダンジョンが有る所でもするつもりだ」


伯爵の屋敷に着いたので、門番に要件を告げ紹介状を見せると、すんなり通してくれた。

屋敷の前で待っていた執事の人が、ドアを開けてくれる、中に入ると赤いドレスを着たメルクさんが立っていた。

「メルクさん?」

「アキ様、お待ちしておりました、どうぞこちらへ」

いつもは、髪を乱雑に後ろでまとめているが、今日のメルクさんは髪をおろし、お姫様の様な髪型で、金色の髪がまたすごくマッチしている。

もちろん、耳のもふもふは、言うまでも無い。

大きく胸元が開いたドレスも素敵で、つい見とれてしまう。

「ご主人様?」

「あ、失礼しました」
「クスッ」

笑われてしまった、恥ずかしい。

通された部屋でソファーに座りハーブティーを飲んでいるとメイドさんがドアを開け、伯爵とメルクさんが入ってきた。

俺とセシルは、慌てて立つ、こういうのは苦手だな。

「待たしてすまんな、私がエディンバラだ。」

全員、ソファーに座る。

「それで、用件は何かな?」

俺は、マスターの紹介状を渡す。

「君が、ダンジョンの制覇者で国王に宝物を献上したいと?」

「はい、その前にこちらを伯爵様に」

伯爵が好きな物は調査済み。

・伯爵様には古代アスカの壺

・奥様には貴婦人サテラのネックレス

・お嬢様には流星の剣

「これらの物をお納め下さい」

「おお、この壺は、なんと素晴らしい」

「アキ様、この様な貴重な物を、よろしいのですか?」

「はい、全部魔法効果が付与されてます。使えば皆さまの、お役に立つ事でしょう」

「ふむ」

「父上、アキ様は、信用が出来る御方です」

「よろしい、私が国王に手紙を送り日程の調整をしよう」

「ありがとう御座います」

執事のサジェスさんが入って来た。

「旦那様、オリル様との会食のお時間で御座います」

「分かった。すまんなアキ君、行かねばならぬ様だ。メルクが、君の来るのを楽しみにしていてね、ゆっくりしていってくれたまえ」

「おそれいります」

「では、また会おう」

エディンバラ伯爵が去った後、メルクさんに声をかける。

「メルクさん、驚きましたよ」

「それは、こっちのセリフだ、アキ。あの後、直ぐにダンジョンを攻略したのだな」

「ええ、おかげ様で」

「それにしても、宝物を献上とはな」

「さっきは、援護の口添え助かりますました」

「何か考えが有るのだろう?」

「俺も、やらなくてはいけない事がありますから」

「ふふ、面白そうだな。私も、いや私達も、何かあれば協力するぞ」

「よろしくお願いします」

「食事を用意してある、食べていってくれ」

「ご馳走になります」


昼食をご馳走になり、お屋敷を後にした。


「ご主人様、お肉美味しかったね」
「そうだね」
『あれはコカトリスの肉で、高級品だ』

「コカトリスの肉だって、今度捕まえるか?」
「はい、やります」

『セシルは、まだ色気より食い気だな』

『メルクさん綺麗だったわね』
「本当にそうだね。びっくりした」
『女性は、男で変わるのよ』

「また、卑弥呼さんはそう言う事を」

『とりあえず、今日は予定通りと言うところか』

「ああ、これからマグラとは真っ向勝負になって行くだろう」

『しばらくは、この街で連絡待ちだな』
「仕方無いね」


〈またアキのファンが増えそうだな〉
〈それは仕方無いわね〉




 王都アストベルンから使者が返事を持って来たのは伯爵に会ってから22日後だった。

そのお陰で、ギルドの職員の人達や冒険者の人達と仲良くなれたので良かったと思う。




王都に行く日程を決めると言う事で、伯爵のお屋敷で王都からの使者を紹介された。

「こちらが、宮廷で式典などを取り仕切っているバリオス一級政務文官だ」

「アキと申します。この度は、お忙しい中、足をお運び下さりありがとう御座います」

「君がアキか若いな。で、どの様な品を国王様に献上するつもりだ」

俺は、献上する宝物の目録を渡した。

「これはまた凄いな。私などは、聞いた事も無い物ばかりだ。しかも魔法効果などが書かれていて、気が利いて良くできている」

「おそれいります」

「最近の若い者は、気が回らないのでな。どうじゃ、冒険者など辞めて私の部下にならんか?」

「それは……」

「バリオス殿、アキ君が困っておるではないか」

「はは、すまんな許せ。それでは、5日後に、ここを出発と言う事でどうですかな?」

「良いですな。アキ君、どうかな?」

「かしこまりました。」


 それから1時間ほど、日程の細かい打ち合わせをして俺達は宿に戻った。     


「ああいう席は、肩がこるな」

『これからは、こういう事が増えるのだろう?慣れるしかないな』

「確かに」

『次のダンジョンは、どこになるの?』

「ボルチスカ王国だ」
「ご主人様、お腹が空きました」

「悪い、悪い、昼まだだったな」


「そう言えば、この国には海が有ったな、魚料理を食べたいな」

「海って何ですか、ご主人様?」

「しょっぱい水が、たくさん有る大きな水溜まり。セシルは、海を見たこと無い?」

「無いです。私には、砂と岩山だけの記憶があるだけです」

「そうなのか。セシルの事は、聞くと悪いと思ってたからな」

「私は、ご主人様の為なら何でもします。ですから、何でも言って下さい」

「ありがとう、分かったよ。良し、取り敢えず飯だ、宿のおかみさんにお店の事を聞いて見るか」



おかみさんに教えてもらった、シーフードの店に行く事にした。


「ここだ、ここ。レッド・タバスター」

中に入ると、いきなり名前を大声で呼ばれた。

「アキさ~ん。こっち、こっち」

烈風の牙の3人だ。

「変な所で、会いますね」

「メルク姉さんに、仕事があるって呼ばれたの」

「それって?」

「聞いたわよ、王都に行くのですって」

「ひと月もかからず、ダンジョン制覇って何よ!」
「凄いでござる」

「私達ともう1つのパーティーが護衛よ」

「よろしくお願いします」
「必要が有るのかしらねぇ?」

「そんなにいじめ無いで下さい」

「冗談よ。なんでこの店に?」

「この国に海があるのを思い出して、魚が食べたくて」

「そうなの、港街に行けば、もっと新鮮な魚介類が食べれるわ」

「行こうと思ってます。セシルに海を見せたいし」

「本当ですか、ご主人様?」

「優しいご主人様で、良かったわね、セシルちゃん」

「はい、海を見たこと無いので」
「セシルちゃん、もしかして砂の民なの?」

「砂の民?小さい時の事は、あまり覚えて無いのです」

「そうなのね」

なんか、色々ありそうだね、今度聞いて見よう。

「ご主人様、おいひいですぅ!」

泣きながら食べてる。器用だ。

確かに美味い、見た目は海老に似ているが、カニみそ見たいで最高だ。

「じゃ、出発の日にね!」
「はい、頼みます」

3人と別れて宿へもどる。

「ご主人様、今日は、頭も洗いますね」
「うん、ありがとう」


嬉しそうだ。明日、旅の服とドレスを買いに行く事になってるからな。


「さあ、ご主人様、早く寝ましょう」
「分かった、分かった」

本当、可愛いもんだ。

出発の日が来た。

「貴方、行ってらっしゃいませ」
「旦那様、お気をつけて」

「うむ、行ってくる」

「留守は頼んだぞ、ディアス」
「はっ、お任せ下さい。エディンバラ様」

馬車は二台、王都から来た騎士10名が馬に乗り先導する、1台目に使者のバリオス氏、後は王都の冒険者4人のパーティー。

2台目に伯爵、メルクさんと俺達、前に伯爵の騎士6人、後に烈風の牙と4人のパーティーだ。


10日間の旅が始まった。

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