ひめてん~姫と天使と悪魔と猫~

こーちゃ

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第一章 アイバーンとワイバーン

第12話 パティの魔装とユーキの1人コント

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 洞窟の奥のユーキとメルク。


「な、何だ? 今の物凄い音?」
「もしかしたら洞窟がどこか崩れたのかもしれません! 急いで2人の所に戻りましょう! ユーキさん」
「うん、そうだね」
 

 小道を抜けた先は岩の塊により、通路が塞がれていた。

「ユーキー!! メル君ー!!」
 岩壁の向こうより、かすかにパティの声が聞こえる。
「パティさん!!!!」
 メルクが大声で叫ぶ。

「メル君!! 無事!?」
「ええ!!    大丈夫です!!    僕もユーキさんも無事です!!   怪我もありません!!」
「そう!! 良かったわ!!」

「ところで、何かあったんですか!!?」
「ワイバーンよ!! 巨大なワイバーンが洞窟に入って来たのよ!!」
「え! ワイバーンが?」
「ええ!! そこから出られそう!!?」
「分かりません!!   でも空気は流れてるみたいなんで、呼吸は大丈夫です!!」
「そう!! なら良かったわ!!」

「出られないなら、いっそ2人はそこで隠れてなさい!!   あいつはあたしとアイ君で仕留めるから!!」
「ええ?   ワイバーンをたった2人でなんて、無茶ですよ!! パティさん!!」

 すでにパティは近くに居ないようだった。


「メル君! ワイバーンとか言ってたけど、それってヤバイ奴?」
「物凄くヤバイですよー! あの2人でも勝てるかどうか……せめて加勢に行けたら……」

 辺りを見回す2人。
「メル君、あの上!!」
 ユーキが指差した先に、光が漏れているのが見える。
「僕見て来ます!」
「うん、気を付けて!」
 岩山を登り始めるメルク。

 


 アイバーンの所に戻ってきたパティ。
 だがアイバーンは海パン一枚で倒れていた。


「ちょ、ちょっとアイ君! 何やってるのよ?」
「や、やあパティ君……ユーキ君達は無事かね?」
「ええ、2人共無事よ! 」
「それは良かった」
「あんたが大丈夫じゃないでしょ? 攻撃受けたの?」
「少しばかりね」
「もう、しょうがないわねー」

 魔装具を具現化させアイバーンの手を取り。
「フライ!!」
 パティが叫ぶと、パティとアイバーンは宙に舞い上がる。
 洞窟の奥の、狭い通路に降り立つパティ。
「ファントムウォール!」
 パティ達が入った通路の入り口を塞ぐように、壁が現れた。
「ヒーリング!」
 アイバーンを治療するパティ。

「いやーすまないね、パティ君」
「まったく、余計な魔力使わせないでよね」
「あのワイバーンとはどうにも相性が悪くてね」
「それはお互い様でしょ」

「メルクが居てくれれば何とかなるんだが」
「メル君は来れないわよ」
「なんだと?」
「さっきのブレスで天井が崩れて通れないのよ」
「なんという事だ、それでは私は戦えないではないか」
「しょうがない! あたしが何とかするしかないみたいね」
「1人で行くと言うのか? 無茶だ!! 2人がかりでも倒せるかどうか分からないというのに!!」
「3人が逃げる時間ぐらい作ってあげるわ」




 岩山の上に登ってきたメルク。
 どうにか通り抜けられそうな隙間が空いているのを確認して。


「ユーキさん! ここから出られそうですよ!!」
「分かった!! 僕も行くよ!!」

 メルク、洞窟の中を見渡し。
「ワイバーン!! 何て大きい……あれ? アイバーン様とパティさんの姿が見当たらない?」

 メルクが不安に感じていると、ユーキが登って来た。

「よいしょっと……ああ、ホントだ、これなら抜けられるね」
「え? ええ」

 ユーキ、洞窟の先に居るワイバーンを見つけ。
「げっ!! あれがワイバーン?」
「そうです」
「あんなに大きいの?」
「あ、いえ……あそこまで巨大な奴は稀です」
「大きさに差があるんだ?」
「ええ、使われた魔石のサイズや召喚士の魔力によって、同じ種類の魔獣でも結構個体差が出るんです」
「そうなのかー」


「あれ? パティとアイバーンは?」
「それが……僕もさっきから探してるんですが、見当たらないんです」

「おそらくどこかに隠れてるんじゃないかとは思うんですが」


 辺りを見渡していると、突然何も無い岩壁からパティが飛び出して来た。

「あ!! パティさん!!」
「え? あ、ホントだ!! いったいどこから?」
「おそらくあの辺りにある横穴に、幻術魔法で隠れていたんですよ」
「幻術?」
「ユーキさんを助けた時に使ってた奴です」
「ああ、あれかー!」
 2人がイキナリ目の前に現れた時の事を思い出すユーキ。

「という事は、もしかしてアイバーン様もあそこに」
「僕、行ってきますね!!」

 そう言って隙間を潜り、岩山を降りて行くメルク。
「あ、僕も行くよー!! 」
 ツルッ!!
「うわあ!!」
「むぐっ! う! がっ! あーーーーーー!!」
 メルクの後を付いて行こうとしたユーキだったが、足を滑らせてそのまま元いた場所まで滑り落ちる。

 うつ伏せ状態のユーキ。
「ムギュウ……ふりだしに戻ってしまった……ガクッ」



 パティが出てきた辺りの壁を目指すメルク。
「メル君?」
 パティがメルクに気付く。
「パティさん!! アイバーン様は?」
「その辺の壁に隠れてるわ!! 探してみて!!」
「はい!! ありがとうございます!!」

「ええっと、確かこの辺りだったような……」
 壁を手で探りながら入り口を探すメルク。
 ある場所でフッと手が壁の中に入りこんだ。
「ここだ!」
 入り口と思われる所を入って行くと、アイバーンが座っていた。

「アイバーン様!」
「やあメルク! 無事でなによりだ!」
「アイバーン様の方は無事じゃなさそうですね?」
「いやあ、面目ない! どうにも炎は苦手でねー」
「ホント、水が無いと役立たずなんですから」
「ハハ! 今日も辛辣だなー、メルク!」

 魔装具を具現化させるメルク。
 銀色の弓の形をした魔装具が現れた。
「ヒールレイン!」
 メルクが静かに叫ぶと、アイバーンの頭上から雨が降り注ぐ。
「ああ、心地良い! 生き返るようだ」
「早く回復してパティさんを助けに行ってあげて下さい」
「ああ、分かっているとも」




 その頃ワイバーンは、目を閉じじっと動かずにいた。

 その様子を見ているパティ。

(目はつぶってるけど、寝ている訳でもないみたいね……魔力を吸収してるってとこか……)

「じゃあ、気合い入れて行くわよ!!」

 杖を頭上に掲げ、回転させ始めた。
 その上に魔法陣が現れ、パティの周りから発生した風がゆっくり回りながら魔法陣に巻き上げられていく。
 杖の回転を止めて右斜め下に振り下ろし叫ぶ。
「魔装!!」

 魔法陣が風を放ちながら下に降りて来てパティの体を通り抜けると魔装衣が装着されていく。
 黒を基調とした魔法使い風のローブにマントと帽子がある。
 服そのものに金属的装飾品は無く、腰の部分にカートリッジを多数入れておけるベルトが付いている。

 魔力に反応してワイバーンが体を起こし、パティの方を見る。
「やっぱり気付いたわね……さあ!! かかってきなさい!!」




 一方ユーキは、再び岩山の上まで登って来ていた。
 そしてパティを見つけ。

「え? あれってパティだよね? 魔装してる、のか!?」
「僕の魔装と似てるなー……色は違うけど」
「同じ魔法使いだからかな?」
 

「ここからだと見えにく」
 ズルっ!!
「え?」
 またしても足を滑らしたユーキ。
「う、嘘!! ニャーーーーーーーー!!!!」
 再び岩山を滑り落ち、また元の場所に戻ってしまったユーキ。




「僕、こんなのばっかり……もう、いや……ガクッ」



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