ひめてん~姫と天使と悪魔と猫~

こーちゃ

文字の大きさ
33 / 298
第ニ章 全てはゲーム機の為に

第11話 夢見るユーキ、番外編(ユーキと天使と悪魔と猫)

しおりを挟む
 ユーキを降ろすパティ。
「ほら、待っててあげるから、早く傷を治しなさい」
「う、うん」

 傷の治療を始めるユーキ。

「しかし、どうもユーキ君は何か焦っている様に見える」
「焦り、ですか?」
「ああ、第4戦までは冷静に戦略を練って闘っていたようだが、今回に限っては不用意過ぎる……特に先程のアローズにしても、おそらくはパティ君に特性を聞いただろうに、ろくに加速も強化もせずに放った」
「そう言われればそうですね」

「相手がパティ君だから動揺しているのか、もしくは魔力がもう……」


 アイバーンが危惧していた通り、突如ユーキの魔装が解ける。
「くそ! 保たなかったか……」


「ああっとー!! 傷の治療をしていたユーキ選手の魔装が解けてしまったー!! これはもしや魔力が尽きたのかー!!」


「やはり魔力が限界だったか……」
「ユーキさん、せっかくここまできたのに……」


「やっぱりこの辺が限界だったみたいね……ユーキ!! 魔装無しじゃ勝ち目はないわ、降参しなさい!」
「やだっ!!」
「どうして? このまま続けても無駄に怪我が増えるだけよ?」

「僕はこの闘い、絶対に負けられないんだ!!」
「何でそこまで……」
「…………」
「そう……言えない理由があるのね……分かったわ、なら最後まで闘いましょう」
 大見得を切った以上、今更ゲーム機の為とは言えないユーキであった。


(とは言ったものの……魔力が尽きた以上、とてもじゃないが勝ち目はない……何か……何か手は無いのか?)
 色々考えていると、ある作戦を思い付くユーキ。
 だがそれを実行するには、かなりの抵抗があった。
(いや、さすがにこれはマズイよねー)

「いいじゃねえか、やれよ」
(え? 誰?)
 ユーキの脳内イメージで、悪魔風の姿のヤマトが囁きかけてくる。
(もしやこれは、漫画とかでよくある、心の中の悪魔? と言う事は……)

「そんな事をしてはいけません」
 天使風の姿のユーキが現れる。
(やっぱり出た!)

「何だよ、どうせこのままだと負けるんだ、ならやるしかねえだろ?」
(うん、確かに)

「しかし、試合である以上正々堂々と闘うべきです!」
(それもそうだ)

「正々堂々? さっきパティは卑怯にも後ろから攻撃して来たぞ?」
(はっ! そう言えば)

「あ、あれは勝負である以上、警戒を怠ったこちらが悪いんです」
(まあそうだよねー)

「そ、それに先程はパティに命を救われたではありませんか」
(うん、あれは助かった)

「ああん? そもそも空中戦になるよう仕向けて来たのはパティなんだぜ?」
(言われてみれば)

「大体最初の力比べだってパティから提案して来たんだ……まんまとパティのペースに巻き込まれたんだよ」
(そ、そうだったのか)

「彼女の戦闘センスが上だったと言う事です」
(パティ、センスあるもんなー)

「だからってこのまま負けていいのか? ゲーム機を諦めるのか?」
(諦めたくない)

「それは、そうですが……でもそんな事をしたらパティ、怒りますよ?」
(パティ、怒ると怖いもんなー)

「大丈夫だって……パティはユーキにベタ惚れなんだぜ? 後で謝れば許してくれるって」
(許してくれるかなー?)

「でも恩を仇で返すような真似は……」
(したくないよねー)

「今、この機会を逃したら、今度はいつ手に入れられるか分からないんだぜ?」
(分からないよねー)

「そうニャ! やるなら今ニャ!」
(いや、お前誰だよ?)
 いきなり猫耳のユーキが割って入ってきた。

「あたし? あたしは猫ニャ」
(いや、天使と悪魔は分かるよ……猫って何だよ? 猫って)

「猫も知らないのかニャ? 4足歩行でニャーと鳴く、この世で1番愛らしい生き物ニャ」
(いや、猫の説明を聞いてんじゃねーよ! てか何だ? こいつの喋り方、妙にイラっとするんだが?)

「何だか面白そうな事してたから、邪魔しに来たニャ」
(邪魔するんなら帰れ!)

「ああ、楽しい会話だったニャ……また来るニャ……っておいっ! どこかの新喜劇みたいな事やらせるニャ!!」
(自分で勝手にやったんだろ)

「うるせーぞ猫! 引っ込んでろ!」
「フニャ!」
「そうよ、引っ込んでなさい!」
「こっちもニャ?」
(ややこしくなるから引っ込んでろ!)
「ユーキまでニャ!」

「せっかく来たのに、酷い扱いニャ」
(いや、そもそも呼んでねーし、関係ねーし)


「さあ、決断しろ! ユーキ」 
「決断するニャ!」
(うーん……やっぱり欲しい!)

「なら可能性に賭けようぜ!」
「賭けてみるニャ!」
(うん、賭けてみる! てか猫うるせー!)

「もう、どうなっても知りませんからね」
「よし、やれ!」
「やるニャ!」
(やるぞ! そして猫邪魔!)
 悪魔の誘惑に負け、猫の喋りにイラつくユーキであった。


「さあ、最後まで闘うと言うのなら、かかって来なさい! ユーキ!」


「ユーキ選手、最早魔力も尽きて勝ち目はないと思われますが、まだ闘うつもりなのか?」


「ぐっ! うあああああ!!」
 突然胸を押さえて苦しみ出すユーキ。
「え? ユーキ、どうしたの?」

「あっと、これはどうした事か? ユーキ選手、苦しそうに胸を押さえている……大丈夫なのか?」


 崩れる様にして、仰向けに倒れるユーキ。
「ユーキ!!」
 慌ててユーキの元に駆け寄るパティ。
「ねえ! 大丈夫なの? しっかりして、ユーキ!!」


「な、何と! とうとう倒れてしまったユーキ選手!! 今、レフェリーが確認を取りに行きます!!」

 
 観客も心配そうだ。
「どうしたんだ? 大丈夫なのか? ユーキちゃん」
「何か苦しがってたぞ? どこかダメージ受けたんじゃないのか?」
「早く助けてあげてー!!」

「アイバーン様!! ユーキさんが大変です!!」
「ん? あ、ああ……だがどうも不自然だったのだが……」


 ユーキのそばまで来たパティ、だが次の瞬間、両足でパティの胴を挟み込むユーキ。
「フハハハハハ!! 掛かったなパティ!!」
「え? ユーキ? ええ? 何これ?」

 いきなりの事態に驚いているパティ。
 その隙を突いて、パティの片腕を取り、首に両足を絡ませて三角絞めの体勢に入るユーキ。
「ぐっ! 絞め技?」


「ああっとー!! 何とユーキ選手、死んだフリだー!! パティ選手も我々も見事に騙されましたー!!」


「ユーキ君、何て作戦を……」
「なりふり構わず、ですね」


「こんな物! すぐに解いて……」
 パティが脱出しようとすると、ユーキが何か小声で魔法を発動させる。
 その直後、体からガクッと力が抜け崩れ落ちるパティ。


「もしかしてユーキさん……パティさんの魔力を吸収してるんじゃ?」
「ユーキ君……それは邪法だ……」
 頭を抱えるアイバーン。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

【完結】魔法大戦 〜失われた古代魔法で無双する!〜

加瀬 一葉
ファンタジー
 王立魔法学校。高等部に編入してきた冴えない生徒ラフィト。エリートが集うこの学校で、辺境出身のラフィトは落ちこぼれの劣等生なのだが……。  実は彼は、失われたはずの古代魔法を操る一族の末裔。魔族の脅威が増す時代に、ラフィトは人類を救うことができるのか?  過去と現在が交錯する、魔法ファンタジー。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

処理中です...