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第ニ章 全てはゲーム機の為に

第13話 ユーキって物で釣れば、簡単に落とせそう

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 闘技場での闘いが終わった翌日の宿屋。


「ええ! ゲーム機が欲しくて参戦したー?」
 メルクから事情を聞いたパティが驚いている。

「副賞にゲーム機が出た時に出て行きましたし、闘技場前の景品一覧を見た時もかなり気にしてましたから、多分」


 少し離れた場所で、涙目で膝を抱えて床に座っているユーキ。


「ふむ……つまり後1人で5人勝ち抜き成功だった所にまさかのパティ君が参戦して来て、ユーキ君の夢を打ち砕いたという訳か」
「い、嫌な言い方しないでよ!」

「だって……あたし、そんな事情知らなかったし……」
「いっそパティさんがあのまま5人抜きしてゲーム機をゲットしてたら問題無かったんですけどねー」

「アッサリ闘いを辞退してしまったからね」
「あ、あたしはただユーキの強さをみんなに見せつけようと……」

「それ自体パティ君の強さが際立った試合になってしまったがね」
「そ、それは最初の力比べで負けたから、その……あたしもちょっと意地になっちゃって……」

 恐る恐るユーキに近付くパティ。

「あのー……ユーキ? ご、ごめんなさい、あたしそんな事情知らなくて……」

 無言のままプイッと顔を背けるユーキ。

「えっと……今日またゲーム機が景品に出たら、あたしが絶対にゲットしてあげるから……ね?」
 表情が少し明るくなり、パティの方を見るユーキだったが。

「あのー、多分もう出ないと思います……限定数1ってなってましたから」
 ガーンと言う表情になり、またプイッと顔を背けるユーキ。
 キッとメルクを睨むパティ。
 アイバーンに隠れるメルク。

「ふむ……そのゲーム機なんだが、この国の王都トゥマールに行けば手に入れられるかもしれないぞ?」
 バッとアイバーンの方を見るユーキ。

「本当なの? アイ君!」
「ああ、元々そのゲーム機はノインツ大陸で作られている物なんだろう? 王都ならばここよりも遥かに交易が盛んだし、例え無くてもすぐに取り寄せる事は可能だろう」

「それもそうね……あたしは元々ゲームには興味無かったから、特には気にして無かったけど、確かにノインツなら……」
「そう言えばパティ君はノインツ大陸の出身だったね?」
「ええそうよ、大陸の端の小さい街だけどね」


「実は……先日は言いそびれてしまったが、我々がこの街に来た目的は、近々王都で開催される武闘大会の出場者をスカウトする為だったんだ」

「武闘大会?」
「ああ、今王国騎士団の団員がそれぞれに、これはと思う戦士を集める為に、大陸各地に散らばっている……そこで私が真っ先に候補に浮かんだのが、パティ君! 君なんだ」

「あ、あたし?」
「ああ、君ならば条件も強さも申し分ないからね……どうだろう、是非出場してくれないかね?」
「条件? 条件って何よ?」
 疑わしい目でアイバーンを見つめるパティ。


「そ、そこでだ、良かったらユーキ君にも出場してほしいんだが……」
「え? 僕?」

「こら! 話をそらすんじゃない!」
 アイバーンの頬を挟んでグイッと自分の方に向けるパティ。

「あ、いや……条件というか……国王の意向でね、どうせなら出場者はかわいい女の子が良いと……」
「……ふーん……何だか変わった王様ね?」
 まだ疑いはあるが、とりあえずは納得したパティ。

「どうだろうユーキ君! ワイバーンやパティ君との戦いで、君の強さは証明された……条件的には申し分ないと思うのだが?」
「でも、今回はゲーム機の為に出ただけだし……」

「先程も言ったが、王都になら幾らでもゲーム機はあるだろうし、何なら景品にしてくれるよう、私が手配してもいい」
「ホント? なら、出てみようかな!」

「ダメよっ!!」
 何故かパティがユーキの出場に反対する。

「どうしてだね? パティ君」
「今のままでは王都には行かせられないわ」
「もう、パティ嫌い……」
 ブスッとした顔で言うユーキ。

「え? い、いや違うわよ? 今のままではって言ったのよ?」
「ユーキ君はまだ力不足、と言いたいのかね?」

「それもあるけど、1番の問題は魔力量よ……カートリッジを充分確保して行くのは勿論だけど、ユーキは何より魔力レベルを上げる必要があるわ……そうすれば魔力量も増えるはずだし」


「まあ確かにその通りではあるが」

「だからあたしからの条件は2つ! 魔力レベルを最低2に上げる事! そしてその後、もう一度あたしと闘う事! 勝てとまでは言わないわ……せめてあたしを納得させる闘いをしなさい……いいわね!」

 まだブスッとしているユーキ。

「き、昨日の闘いであたしが勝ったんだから、何でも言う事を聞く約束よ?」
(く……ホントはこんな事に使いたくなかったけど)

「分かったよ……約束は守るよ……」
 ふてくされながら言うユーキ。

「それじゃあ今日からあたしと一緒に修行してもらうわ」
「え? 何で? 僕、修行ならメル君とやる」
「え、いや、あの……何でって……」
 オロオロしているパティ。


「じゃ、じゃあこうしましょう! 見事条件をクリアして王都に行ったなら、ユーキの好きな物何でも買ってあげるわ!」
 ピクッとなるユーキ。

「何でも?」
「そ、そう! ゲーム機でも何でも好きなだけ買ってあげる……それならどう?」
「ゲーム機も?」
「ゲーム機も!」
「好きなだけ?」
「そう! 好きなだけ!」
「うん! 僕、頑張る!」
 アッサリ機嫌が直るユーキ。



(ふう……チョロい娘で助かったわ)



「パティ君、悪い顔になってるぞ」
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