ひめてん~姫と天使と悪魔と猫~

こーちゃ

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第ニ章 全てはゲーム機の為に

第26話 ようやく次の街へ……いや、長いわー!

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 食料や、必要な物を買い込んだユーキ達。
 その後、念願のサーカスを見に行った5人。


「いやー、面白かったなー!」

 大満足のユーキ。

「あ、だけど、所々席が空いてたような?」

「みんなもう何度か見てるから、飽きて来たんじゃな……ぐぇ!」

 パティ必殺の、悶絶ボディブローがアイバーンの腹に突き刺さる。
「アイバーン様ー!!」

「ん? アイ君どうかしたの?」
 アイバーンの様子を見ようと、振り返ったユーキの視線を隠す様に立つパティ。
 その後ろで倒れているアイバーン。

「多分団体客の人達が、訳あって来れなかったのよ!」
「そう、なのかな?」
「そうなの!!」



 そして出発の朝。

 街の入り口の所に、レンタルした2頭立ての馬車が止めてある。
 荷台は大型の箱タイプで、5人が横になって寝ても、充分余裕のある広さだ。
 荷物は、大部分はセラの食料だった。


 どこで聞きつけたのか、大勢の人が見送りに来ていた。
 そこにはあの兄弟も。

「よお嬢ちゃん! 気を付けてな! 死ぬんじゃねえぞ!」
「ユ、ユーキさん……お、おいらもっとつ、強くなって、ま、またユ、ユーキさんにちょ、挑戦するッス」

「うん、頑張って! 待ってるよ!」



「セラちゃん!!」
「セラさん!!」
 馬車に乗り込もうとした時、セラを呼び止める声がした。

 だが振り返る事なく乗り込もうとするセラに。

「セラ? 誰か呼んでるよ?」
「気にしなくていいですぅ、早く行きましょぉ」
「え? でも知り合いなんでしょ? 挨拶ぐらいしてきなよ……あ、もしかして会いたくない人?」

「と、闘技場のぉ、救護班の人達ですぅ」
「ああ、セラがクビになったっていう……うーん、僕一言言ってくる」
「ああ、別にいいですよぉ!」

 引き止めようとするセラを振り切って、救護班の人達の所に行くユーキ。


「ねえ、あんたたち!」
「ん? 君は確か、闘技場に出てたユーキちゃん?」
「ねえ、何でセラをクビにしたのさ? あんな凄いヒーラーなのに」

「クビ? とんでもない! セラちゃんの方から辞めさせてくれって言って来たんだ! じゃないと、誰があんな優秀なヒーラーを手放すもんか! そりゃまあ、確かに食費は人一倍かかったけども」
「え? そうなの?」

「何でも、どうしても行かなくちゃいけない用が出来たからって言ってね……それが、君達について行く事だったのか?」

「あ、いや……詳しい事情は聞いてないんだけども……」
「とにかく、セラちゃんの事、よろしく頼むよ!」
「う、うん……」

 「ああそれと、用が済んだらいつでも戻っておいでって伝えて欲しい」
「分かった、伝えとくよ……それじゃ」

 何だか拍子抜けして馬車に戻るユーキ。


 無言でセラの横に座るユーキ。

「…………」

「何も聞かないんですかぁ?」
「いいよ別に……嘘ついたって事は、本当の事は言いたくないのか、何か言えない事情があるんだろうし」

「こんな嘘つきの私をぉ、信用するんですかぁ?」

「ハハ、正直うさんくさい所はあるけども……まあ、うさんくささで言ったら、僕の方がもっと怪しいしね」
「だって、異世界からやって来た元おっさんかもしれなくて? なぜか最高ランクの魔装具持ってて? 人の魔装をコピーして、自分の物にしちゃうとか? 終いには男にまで変身しちゃうし……怪しさ爆発だよ」

「そう言われればぁ、そうですねぇ」

「でもこんな僕を、パティ達は仲間だって言ってくれるし、何度も助けられた……とても感謝してる」

「セラだって、メル君を助けてくれた……あの時セラが居なかったら、メル君だけじゃなくて僕まで死んでたかもしれない……だから、嘘ついてまで残ってくれてありがとう」

「ホント、ユウちゃんはぁ、甘々ですねぇ……ユウちゃんを信用させる為にぃ、全部私が仕組んだ事、とは考えないんですかぁ?」

「え? 何で? だってセラはそんな事しないでしょ?」

「そういう可能性もあるってぇ、言ってるんですぅ……ユウちゃんはぁ、簡単に人を信用し過ぎですぅ」
「それはぁ、長所ではあるけどぉ、弱点にもなるんですよぉ?」

「心配してくれてありがと……フフッ、やっぱりセラは優しいね」

「ぶぅ! 茶化さないでくださいぃ」
「しょうがないですねぇ……じゃあユウちゃんにだけはぁ、特別にぃ、私の正体を教えちゃいますぅ」

「え、マジで? なになに?」
 おそらくは嘘だろうと分かっているが、あえて乗っかるユーキ。


「実は私はぁ……ユウちゃんを殺す為に雇われたぁ、暗殺者なのですぅ!」
「うん、だったらターゲットに正体バラしちゃダメだよね? ハイ却下ー」

「実は私はぁ……某国のお姫様でぇ、囚われの王子様を探す旅をしているのですぅ!」
「いや逆だよね? 普通は王子様がお姫様を助け出すもんでしょ? ハイ却下ー」

「実は私はぁ……神の化身でぇ、この世界を救う為に舞い降りて来たのですぅ」
「いやスケールでか過ぎるわ! もっと現実的な嘘つこうね? 却下ー」

「もぉー! 何で嘘だって決め付けるんですかぁ?」
「いや、どれも設定がぶっ飛び過ぎてるからさ」

「じゃあ、実は私はぁ……ユウちゃんの生き別れの姉なんですぅ」
「お? それ1番現実的な設定だね」
「そ、そうだったの? お姉ちゃん!」
 かなり芝居染みた口調で言うユーキ。

「そうなのよ! 会いたかったわ、妹よー!」
「お姉ちゃんー!」


「さっきから何2人で漫才やってるのよ?」
 冷めた目で馬車に乗り込んで来たパティ。

「あ、いや、暇だったもんで」
「楽しかったですぅ」


「全員乗っているね? ではそろそろ出発するとしようか」
 パティに続いて乗り込んで来るアイバーン。
 メルクは前で、馬の手綱を握っている。


「みんな乗りましたね? では出発しまーす!!」
「オー!!」


「気を付けてなー!!」
「また来いよー!!」
「ユーキちゃーん!! 絶対また挑戦するからなー!!」
「パティお姉様ー!!」

 見送りに手を振って応えるユーキ達。



 しばらくして、メルクが口を開く。

「今回は色々ありましたねー」
「ホントだよ! 僕からしたら、まだ1番始めの街なのに、いきなり色々あり過ぎだよ!」

「フフッ、先が思いやられるわね……何しろ魔獣だけでも、サイクロプス、ワイバーン、ガーゴイルにレイスまで……ああ、あとあたし達が討伐に行ったウロボロスなんかも……」

「あっ!!」
 いきなり大声をあげるメルク。

「どうしたんだ? メルク」
「ウロボロスで思い出しました……討伐に行く前、確かアイバーン様僕に何か言いたい事があるとか言ってませんでしたか?」

「あ、ああ、あれか……いや、別に大した事では無いからいいんだ」

「えー? 何か気になるじゃないですかー!」
「そうよ、言いなさいよ!」

「う、うむ……いや何、メルクの顔立ちは結構女性的だと思うんだ」
「まあそうよね」
「だから、女装させたら似合うのではないかと、ふと思ってね」

「んなっ!!」
 それを聞いたメルクが絶句する。

「意味深な表情するから何かと思えば、そんーなくっだらない事だったんですか? ハアッ……僕は今までアイバーン様の変態ぶりは、あくまで照れ隠しなんだとばかり思ってましたが、まさか本物の変態だったとは」

「いや、ちょっと思っただけではないか」
「そう思う事が問題なんです……この際、パティさんも何か言ってやってくださいよ」

「いや……アリね」
「え? パティさん?」
「ハイー、いいと思いますぅ」
「セラさんも? ちょっとユーキさん! 2人の暴走を止めてくださいよー!」

「メル君なら似合うと思うよ?」
「ユーキさんまで?」

「じゃあリーベンに着いたら、色々服着せて1番似合う服を探しましょう」
「賛成ぇー!」
「それイイね」
「ふむ……楽しみだ」



 
「いや、絶対着ませんからねー!!」




 馬車は次の街、リーベンを目指す。


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