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第五章 五国統一
第57話 あたりめとスルメは同じ物らしい
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カオスの言葉に動揺して、完全に動きが止まるユーキ。
(2年前まではアイリスっていう人がこのトゥマールの王様だった? 2年前って言えば、僕が行方不明になった時期と同じ。仮に僕がそのアイリスだったとしたなら、マナ王女として過ごした記憶は偽物? いや、それを言ったら僕が向こうの世界で過ごした35年の記憶も怪しい訳だし……)
益々混乱して、頭を抱えてフラつくユーキ。
(いや待てよ!? さっきカオスは僕の中にアイリスが眠ってるって言ったよね? それは、僕自身がアイリスって訳じゃなくて、何らかの方法でアイリスが僕の中に居るって事?)
「おおっとどうしたユーキ選手!? フラついていますが、先程のダメージが大きいのか~!?」
「ああ、ゴメン。混乱させちゃったみたいだね、ユーキお姉ちゃん!? 分かりやすいように、もっとハッキリ言ってあげるよ! 僕の目的は、器であるユーキお姉ちゃん……いや、マナお姉ちゃんを殺して、アイリスを目覚めさせる事だよ」
目を見開き、冷静さを取り戻すユーキ。
「僕を殺してって言った? じゃあやっぱり僕自身がアイリスって訳じゃないんだね?」
「う~ん……その答えはイエスでありノーであるってとこかな?」
「何言ってんの? バカなの?」
「バカじゃないよ!! ホントにそうなんだから、仕方ないでしょ!?」
呆れ顔のユーキに、激しく否定するカオス。
「だけどアイリスってこのトゥマールの女王様だったんでしょ? パラスの国王である君からしたら敵国の王様になるんだよね? 目覚めさせてどうするのさ?」
「勿論、戦うのさ」
「!? また戦争でもするつもり?」
「ああ、違う違う! 国同士の戦いじゃなくて、単純にアイリスと1対1で戦いたいだけ」
「それ、だけ?」
「そうだよ。まあ、覚醒したマナお姉ちゃんの強さも相当なもんだったけど、アイリスの強さは別次元だからね。だからさ……」
離れた距離に居たカオスが強烈な殺気を放ちながら、いきなりユーキの目の前に現れる。
「死んでよ、お姉ちゃん……」
「いかんっ!!」
「やめるニャ!!」
その殺気を感じ取ったアイバーン達と子猫師匠が慌てて闘技場内に乱入する。
すぐさま攻撃しようとするユーキ。
「ぐうっ!」
しかし次の瞬間、カオスの手刀がユーキの胸を刺し貫いていた。
「ユーキ!!!!」
その光景を見たパティが、すぐさま控え室を飛び出す。
「ああああ!! トト選手の手刀がユーキ選手を貫いたあああ!! いくらユーキ選手が治癒魔法を使えるとはいえ、これは危険です!! ああ! そして客席から数名、闘技場に乱入して来る者が居ます! その中にはアイバーン団長とブレン副団長も居ます! やはり危険だと判断したのでしょうか!?」
「ユーキ君!!」
「セラさん!! 早く治癒魔法を!!」
「分かってます!!」
ユーキを治療しようと近付くセラと子猫師匠。
しかし、見えない壁に阻まれて、ユーキに近付けない。
「結界ニャ!? いつの間に!?」
子猫師匠を見て、ニヤリと笑うカオス。
「そんな所で漫才なんかやってるから気付かないんだよ? シャルお姉ちゃん」
「ムキイイ!! いくら子供の体を借りてるからって、いい加減その喋り方はやめるニャ!! それに、お前は何でそう事を急ぐニャ!? 慌てなくても魔法世界に戻って来た以上、時間をかければアイリス姉様は目覚めて行くニャ! むしろマナを殺す方がアイリス姉様に悪影響を及ぼす危険があるニャ! 何でそれが分からないニャ!?」
「心配無いよ。元は別々の存在だったんだから。なら、器のマナお姉ちゃんを殺せばアイリスが出てくる理屈じゃない」
「違うニャ!! あの時既にマナは……」
子猫師匠とカオスが言い争っているうちに、何とか結界内に入ろうとするアイバーン達。
「セラ君!! 何とか結界を破る事は出来ないのか!?」
「さっきからやってますけど、やっぱり私の魔力だけでは無理です!」
「くっ! レフェリー!! 試合を止めるんだ!! カオス、いや、トトはユーキ君を殺すつもりだぞ!!」
アイバーンが結界の中に居るレフェリーに試合を止めるよう指示する。
「え!? ハ、ハイ!! あ、いえ! その前にユーキ選手の状態の確認を……」
「そんな悠長な事を……!?」
レフェリーを叱責しようとしたアイバーンだったが、ふとある一点を見つめて動きが止まる」
「ユ、ユーキ……君!?」
その視線の先には、何事も無かったかのように立っているユーキの姿があった。
しかも先程カオスに貫かれた筈の胸も、傷はおろか魔装衣まで完全に修復されていた。
「ユーキ選手! 大丈夫か!?」
恐る恐るユーキに尋ねるレフェリー。
何も言わずに虚ろな目でレフェリーの方を見つめて、ただコクリとうなずくユーキ。
「ユーキ君! き、傷は大丈夫なのかね!?」
アイバーンの問いに、優しい笑顔で答えるユーキ。
「私は大丈夫です。だけど、彼に少々お仕置きをしなければいけないようです。危ないので、皆さんは離れていてくださいね」
「え!? き、君は本当にユーキ君なのか!?」
「ユーキさん、何だか喋り方も雰囲気もおかしいです」
「マナの口調とも違う……何だ!?」
アイバーン達がユーキの雰囲気に違和感を感じていると、その雰囲気を感じ取ったカオスが振り返り、ユーキを見てニヤリと笑う。
「フフ、どうやら上手くいったみたいだね」
「カオス……私の事を思ってくれるのは嬉しいんですが、マナちゃんを殺そうとするのはいただけませんね」
「なら、どうするんだい?」
「悪い子はお仕置きです」
様子のおかしいユーキを見た子猫師匠が、少し目を潤ませていた。
「まさか……アイリス姉様ニャ?」
しかし、子猫師匠が感傷に浸る間も無しに、ユーキからカオスを遥かに凌ぐ強大な魔力が溢れ出す。
その様子を見た子猫師匠が、慌ててアイバーン達に避難を呼びかける。
「ハッ!? いかんニャ! お前達、早く客席に避難するニャ!!」
そこへ、控え室から飛び出して来たパティがやって来る。
「ユーキ!!」
「パティ!? お前、何しに来たニャ!?」
「ユーキを助ける為に決まってるでしょ!! どいてよ師匠!!」
「待つニャ!! 今行ってはダメニャ!!」
パティにしがみついて止めようとする子猫師匠。
だが、激しく動揺しているパティは、子猫師匠を引きずりながらもユーキの元に行こうとする。
「ど・い・てっ・て! 言っ・てる・で・しょおおお!!」
「な、何てパワーニャ!? お、落ち着くニャパティ! 落ち着いてユーキを見るニャ! どこもケガなんかしてないニャ!!」
「え!?」
子猫師匠の言葉にようやく冷静になり、ユーキの無事を確認するパティ。
「ホント、だ……ユーキ、どこもケガしてない……良かったあ」
「良くないニャ! カオスのバカのせいで、今ユーキがどエライ事になってるニャ!」
「どエライ事って……え!? な、何なの? このデタラメな魔力は?」
「ユーキの中で眠っていたアイリス姉様が目覚めたせいニャ!」
「え!? どういう事よ?」
「あ、ええと……あ、後で教えるニャ!!」
「そう言っていつも逃げるじゃないのよ~!!」
「こ、今度はちゃんと教えるニャ!! と、とにかく今はここから離れないと、ここに居たらあたし達まで巻き添えを食うニャア!!」
「シャル様だけ、巻き込まれればいいのに……」
「フニャ!?」
子猫師匠の背後で、フィーがポツリと呟く。
「ホントよ。師匠は1度痛い目に合えばいいのよ」
「フニャアア!?」
ついでに乗っかるパティ。
「お、お前達!? この非常時に師匠が巻き込まれればいいだの、痛い目に合えだの、何て事言うニャ!?」
「いいえ、宅配便が来るのを待ち焦がれているって言ったんです」
「そうよ、あたりめを注文したって言ったのよ」
「ネット通販!?」
(2年前まではアイリスっていう人がこのトゥマールの王様だった? 2年前って言えば、僕が行方不明になった時期と同じ。仮に僕がそのアイリスだったとしたなら、マナ王女として過ごした記憶は偽物? いや、それを言ったら僕が向こうの世界で過ごした35年の記憶も怪しい訳だし……)
益々混乱して、頭を抱えてフラつくユーキ。
(いや待てよ!? さっきカオスは僕の中にアイリスが眠ってるって言ったよね? それは、僕自身がアイリスって訳じゃなくて、何らかの方法でアイリスが僕の中に居るって事?)
「おおっとどうしたユーキ選手!? フラついていますが、先程のダメージが大きいのか~!?」
「ああ、ゴメン。混乱させちゃったみたいだね、ユーキお姉ちゃん!? 分かりやすいように、もっとハッキリ言ってあげるよ! 僕の目的は、器であるユーキお姉ちゃん……いや、マナお姉ちゃんを殺して、アイリスを目覚めさせる事だよ」
目を見開き、冷静さを取り戻すユーキ。
「僕を殺してって言った? じゃあやっぱり僕自身がアイリスって訳じゃないんだね?」
「う~ん……その答えはイエスでありノーであるってとこかな?」
「何言ってんの? バカなの?」
「バカじゃないよ!! ホントにそうなんだから、仕方ないでしょ!?」
呆れ顔のユーキに、激しく否定するカオス。
「だけどアイリスってこのトゥマールの女王様だったんでしょ? パラスの国王である君からしたら敵国の王様になるんだよね? 目覚めさせてどうするのさ?」
「勿論、戦うのさ」
「!? また戦争でもするつもり?」
「ああ、違う違う! 国同士の戦いじゃなくて、単純にアイリスと1対1で戦いたいだけ」
「それ、だけ?」
「そうだよ。まあ、覚醒したマナお姉ちゃんの強さも相当なもんだったけど、アイリスの強さは別次元だからね。だからさ……」
離れた距離に居たカオスが強烈な殺気を放ちながら、いきなりユーキの目の前に現れる。
「死んでよ、お姉ちゃん……」
「いかんっ!!」
「やめるニャ!!」
その殺気を感じ取ったアイバーン達と子猫師匠が慌てて闘技場内に乱入する。
すぐさま攻撃しようとするユーキ。
「ぐうっ!」
しかし次の瞬間、カオスの手刀がユーキの胸を刺し貫いていた。
「ユーキ!!!!」
その光景を見たパティが、すぐさま控え室を飛び出す。
「ああああ!! トト選手の手刀がユーキ選手を貫いたあああ!! いくらユーキ選手が治癒魔法を使えるとはいえ、これは危険です!! ああ! そして客席から数名、闘技場に乱入して来る者が居ます! その中にはアイバーン団長とブレン副団長も居ます! やはり危険だと判断したのでしょうか!?」
「ユーキ君!!」
「セラさん!! 早く治癒魔法を!!」
「分かってます!!」
ユーキを治療しようと近付くセラと子猫師匠。
しかし、見えない壁に阻まれて、ユーキに近付けない。
「結界ニャ!? いつの間に!?」
子猫師匠を見て、ニヤリと笑うカオス。
「そんな所で漫才なんかやってるから気付かないんだよ? シャルお姉ちゃん」
「ムキイイ!! いくら子供の体を借りてるからって、いい加減その喋り方はやめるニャ!! それに、お前は何でそう事を急ぐニャ!? 慌てなくても魔法世界に戻って来た以上、時間をかければアイリス姉様は目覚めて行くニャ! むしろマナを殺す方がアイリス姉様に悪影響を及ぼす危険があるニャ! 何でそれが分からないニャ!?」
「心配無いよ。元は別々の存在だったんだから。なら、器のマナお姉ちゃんを殺せばアイリスが出てくる理屈じゃない」
「違うニャ!! あの時既にマナは……」
子猫師匠とカオスが言い争っているうちに、何とか結界内に入ろうとするアイバーン達。
「セラ君!! 何とか結界を破る事は出来ないのか!?」
「さっきからやってますけど、やっぱり私の魔力だけでは無理です!」
「くっ! レフェリー!! 試合を止めるんだ!! カオス、いや、トトはユーキ君を殺すつもりだぞ!!」
アイバーンが結界の中に居るレフェリーに試合を止めるよう指示する。
「え!? ハ、ハイ!! あ、いえ! その前にユーキ選手の状態の確認を……」
「そんな悠長な事を……!?」
レフェリーを叱責しようとしたアイバーンだったが、ふとある一点を見つめて動きが止まる」
「ユ、ユーキ……君!?」
その視線の先には、何事も無かったかのように立っているユーキの姿があった。
しかも先程カオスに貫かれた筈の胸も、傷はおろか魔装衣まで完全に修復されていた。
「ユーキ選手! 大丈夫か!?」
恐る恐るユーキに尋ねるレフェリー。
何も言わずに虚ろな目でレフェリーの方を見つめて、ただコクリとうなずくユーキ。
「ユーキ君! き、傷は大丈夫なのかね!?」
アイバーンの問いに、優しい笑顔で答えるユーキ。
「私は大丈夫です。だけど、彼に少々お仕置きをしなければいけないようです。危ないので、皆さんは離れていてくださいね」
「え!? き、君は本当にユーキ君なのか!?」
「ユーキさん、何だか喋り方も雰囲気もおかしいです」
「マナの口調とも違う……何だ!?」
アイバーン達がユーキの雰囲気に違和感を感じていると、その雰囲気を感じ取ったカオスが振り返り、ユーキを見てニヤリと笑う。
「フフ、どうやら上手くいったみたいだね」
「カオス……私の事を思ってくれるのは嬉しいんですが、マナちゃんを殺そうとするのはいただけませんね」
「なら、どうするんだい?」
「悪い子はお仕置きです」
様子のおかしいユーキを見た子猫師匠が、少し目を潤ませていた。
「まさか……アイリス姉様ニャ?」
しかし、子猫師匠が感傷に浸る間も無しに、ユーキからカオスを遥かに凌ぐ強大な魔力が溢れ出す。
その様子を見た子猫師匠が、慌ててアイバーン達に避難を呼びかける。
「ハッ!? いかんニャ! お前達、早く客席に避難するニャ!!」
そこへ、控え室から飛び出して来たパティがやって来る。
「ユーキ!!」
「パティ!? お前、何しに来たニャ!?」
「ユーキを助ける為に決まってるでしょ!! どいてよ師匠!!」
「待つニャ!! 今行ってはダメニャ!!」
パティにしがみついて止めようとする子猫師匠。
だが、激しく動揺しているパティは、子猫師匠を引きずりながらもユーキの元に行こうとする。
「ど・い・てっ・て! 言っ・てる・で・しょおおお!!」
「な、何てパワーニャ!? お、落ち着くニャパティ! 落ち着いてユーキを見るニャ! どこもケガなんかしてないニャ!!」
「え!?」
子猫師匠の言葉にようやく冷静になり、ユーキの無事を確認するパティ。
「ホント、だ……ユーキ、どこもケガしてない……良かったあ」
「良くないニャ! カオスのバカのせいで、今ユーキがどエライ事になってるニャ!」
「どエライ事って……え!? な、何なの? このデタラメな魔力は?」
「ユーキの中で眠っていたアイリス姉様が目覚めたせいニャ!」
「え!? どういう事よ?」
「あ、ええと……あ、後で教えるニャ!!」
「そう言っていつも逃げるじゃないのよ~!!」
「こ、今度はちゃんと教えるニャ!! と、とにかく今はここから離れないと、ここに居たらあたし達まで巻き添えを食うニャア!!」
「シャル様だけ、巻き込まれればいいのに……」
「フニャ!?」
子猫師匠の背後で、フィーがポツリと呟く。
「ホントよ。師匠は1度痛い目に合えばいいのよ」
「フニャアア!?」
ついでに乗っかるパティ。
「お、お前達!? この非常時に師匠が巻き込まれればいいだの、痛い目に合えだの、何て事言うニャ!?」
「いいえ、宅配便が来るのを待ち焦がれているって言ったんです」
「そうよ、あたりめを注文したって言ったのよ」
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