『ハズレ』召喚者『氣功術師』ののんびり異世界旅行!!

メガネの助

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帝都までの道中〜3〜。

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 『八頭毒竜ヒュドラ』は単体で『Aランク討伐種』に指定されていて、それの上位種である『八頭毒邪竜ヒュドラード』であれば『Sランク』に指定されている。
 そして、今回依頼されたのはヒュドラードだった。
 普通に考えてCランク冒険者のリョータに依頼するなんて『死んでこい』『喰われてこい』と言っているのと同じ事なのだが、リョータは普通のCランク冒険者じゃない。何しろ、レッドドラゴン(エレノア)、フェンリル(リル)、グリフォン(クリフ)、ユニコーン(マーベラス)、エンペラースライム(ティア)、バトルホース(バルザック)を従魔にしている実質Sランク…いや、それ以上の冒険者なのだから。
 レイチェル達は、

「師匠。私達も一緒に」

 と言ってきたのだが、さすがに今回ばかりは連れて行かなかった。
 討伐対象が勉強や修行などと言ってられない相手だからだ。
 『魔境の森』にいた頃に何度も討伐しているとは言え、あまりにも危険すぎた。
 リーマス侯爵領領都オズワルドから馬車で二時間の場所にある『リンドの森』の奥にいるというヒュドラードを探して森の手前で足を止めたリョータは、自分より優れた探知能力を持つクリフに頼むと、

「ここから一時間の場所に三体います」

 という事が分かった。

「おいおい。一体じゃなかったのか?」

 とボヤくリョータにエレノア達は、

「旦那様を騙したのね!?」
「我らの旦那様に舐めた真似を!」
「あの人間を許すまじ!」
「ユニコーンの証したるこの角で串刺しにしてくれん!」
「お兄ちゃんを騙すなんて悪い子なの。私の酸弾で骨も残さないようにしてやるの!」
「『あの者を我が蹄で踏み潰してやりましょうぞ!』」

 と怒り心頭で、今にも領都に取って返しそうとするのを何とか宥めて(ドラゴンステーキ大盤振る舞いを約束して)ヒュドラード討伐に向かった。
 森の奥に近づくに連れて邪気、瘴気、毒気が濃く、強くなっていて、草木が生気を失い、枯れ果てている。

「ここまでとは…旦那様。もしかすると、このヒュドラードは…?」
「うん。『九頭毒邪竜ナインズヘッド・ヒュドラード』だね」

 ナインズヘッド・ヒュドラードとは、ヒュドラの上位種であるヒュドラードの変異種で、地竜アースドラゴン種の中でも一番強い竜種だ。
 まあ、レッドドラゴンに比べたら容易い相手ではあるが、リョータがまだ誰も従魔にしていなかった時に出会し、苦戦に苦戦を重ね、左腕を犠牲にしてやっと討伐した程の相手であった。
 その後は、エンペラースライムのティアと従魔契約をし、そしてティアが奇跡の雫エリクサーを生成できるようになるまでは片腕のままだった。
 それ程の強敵だが、今回はエレノア、リル、クリフ、マーベラス、ティア、バルザックがいるので、何があっても大丈夫だという安心感があるので、精神的負担がなく、思う存分楽しんで戦える。

「旦那様。もう直ぐです」

 クリフの警告を受けて、眼に"氣"を纏い、奥を覗くと、九頭毒竜が寛いでいる様子が見えた。
 大きい九頭毒竜が二体と小さい九頭毒竜が一体。

「親子、か?」
「そのようですね。如何なさいますか?」
「如何も何も、依頼通りに討伐するだけさ」

 こちらの気配を察知されないギリギリまで近付いたリョータは左手で三発の"氣弾連弾"を三体の九頭毒竜の近くに放つと、九頭毒竜が頭をもたげたのと同時に右手で"氣斬刃"を放って三体分、二十七個の頭を一気に斬り刎ねた。
 討伐時間、僅か十秒。
 あまりにも呆気ない討伐成功に実感が湧かないリョータだったが、初めての戦いからどれくらい強くなっているのかを考えれば、この結果に頷かないわけにはいかなかった。

「俺、こんな雑魚を相手に左腕を失ったのか?」

 呟くリョータだったが、次の瞬間、身体中に電気のようなものが走った。これはLvが上がった時に感じるものだ。
 感覚的に、全てのステータスが倍増した感じだ。
 リル達もそれを察知したが、リョータの呟きのほうが気になり、

(どこの世界に九頭毒竜を雑魚呼ばわりできる奴がいるのだろうか)

 と首を傾げた。
 しかしまあ、『自分達の旦那様だから』と考えを切り替えた。

「旦那様。依頼は完了かの?」
「いや、まだ残ってる」
「何が残ってるのじゃ?」
「決まってるだろう?ギルドに戻って、バルドランにお仕置きだ」

 その時のリョータの顔は邪な色に染まっていた。
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