『ハズレ』召喚者『氣功術師』ののんびり異世界旅行!!

メガネの助

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謁見とトラブル。

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 遂に謁見の日になった。
 長かった。
 まさか1ヵ月も待たされるとは思ってもみなかった。
 リョータはそこまでではなかったが、リル達はかなり苛ついていた。
 皇帝の住まいする帝城に向かう馬車の中でも不機嫌さを隠しもしない。
 謁見の間に入ると、左右に並んだ貴族達の何とも言えない視線にはリョータも辟易した。
 人化スキルを使わずに元々の姿をしているリル達に向けた密やかに呟く声が聞こえてきた。

 "たかが獣風情が何を偉そうに"

 とか、

 "剥製にして売ればかなりの額になるな。良し、そうしよう"

 とか、

 "ドラゴンの肉はかなりの美味だと言うぞ。食ってみたくはないか?

 とか。
 マシな囁きは、

 "さすがに威風堂々たる姿だ"

 とか、

 "あの者達が本気で怒ったら、この国は一夜にして灰燼と化すだろう"

 とか。
 どうやらこの場の貴族達の半分は自殺願望が強いらしい。
 爵位が高ければ高い程に良識ある貴族が多いが、中にはそうでない者もいる。
 
 後で必ずブッ殺す。
 
 抑えに抑えた殺意を抱きながら皇帝陛下を待っていると、

「皇帝陛下のお成り!」

 という声と同時に貴族達が一斉に臣下の礼を取って跪いた。
 ザンギグラス帝国皇帝フレデリック=ベルツ=ザンギグラス陛下が皇后であるナターシャ殿下と一緒に入ってきた。
 リョータ達は別に皇帝の臣下でもなんでもないし、そもそも呼ばれてきた客人的な感じなので、跪く必要性を感じていなかった。
 すると、

「貴様、平民!!陛下の御前であるぞ、跪ずかぬか!!不敬であるぞ!!」

 1人が咎めると、その後は蛙の合唱。

 "平民の分際で生意気な"
 "無礼討ちにしてくれん"
 "所詮は獣だ!剥製にしてやる"

 命要らずの輩が多い事、多い事。
 リョータはクスクスと笑いながら言った。

「皇帝陛下。この者らは帝国を滅ぼしたいらしいが…構わいませんよね?」
「い、い、いや、とんでもない事だ!儂が代わりに謝罪するので、この国を滅ぼすのだけはご容赦ありたい!我が国は貴殿らと争う気は微塵もないのだ!」
「ふ~ん…そうですか。なら、馬鹿者共の首だけで許して差し上げましょう」
「温情に感謝を。それ、不届者共を捕縛せよ。抗うならば斬り捨てよ!!」

 皇帝の命令に、謁見の間にいた近衛騎士団が不敬な発言をした貴族共を次々に縛っていく。
 縛られた侯爵級の貴族が、

「建国以来の名門にして、これまで帝国のために鉄血の貢献を成してきた私に縄目の恥辱を与えるとは…このような犬畜生共と私とどっちが大切なのですか!?」

 と騒ぐ輩もいたが、フレデリック皇帝陛下は見向きもしないで受牢を言い渡した。
 地下牢に収容された貴族は、侯爵家2家、伯爵家3家、子爵家9家、男爵家3家、騎士爵家8家に上り、近衛騎士団からも6人の騎士に受牢の沙汰が下った。

「リョータ殿。これでお許しいただけないだろうか。これが今の儂にできる精一杯の謝罪なのだ」

 そこには皇帝陛下ではなく、この国の将来を命に替えても守り抜こうとする1人の"漢"がいた。

 良い面構えだな。

 リョータの怒りはスウッと鎮まった。

「陛下。ご案じなさるな。我々としても悪戯に事を構える気はありません。今回は不幸な行き違いがあっただけの事と、お互いに水に流そうではありませんか」
「宜しいのか?」
「はい」

 皇帝陛下を始め、謁見の間に残っていた貴族達もホッと息を吐いた。

「時に、陛下。私から…面倒臭いな。俺から友好の証しとして、少々贈り物があるんだが…受け取ってもらえると嬉しいのだが?」
「友好の証しの贈り物…如何なる物かな」
「なに。それ程の物でもないんだが…これだ」

 リョータはアイテムボックスから贈り物が詰まっている宝箱を幾つも取り出した。
 フレデリック皇帝陛下が近衛騎士団に目配せすると、騎士数名が宝箱を開ける。
 そこには何と、

「こ、こ、これはっ!!??」

 フレデリック皇帝陛下もナターシャ王妃殿下もこれでもかと言うくらいに目を見開いて驚いている。
 贈り物の内容は、

 [グリーンドラゴンの牙×10本]
 [グリーンドラゴンの皮100枚]
 [グリーンドラゴンの肉1,000kg]
 [|九頭邪毒竜《ナインヘッド・ヒュドラードの額石×9個]
 [ミスリル製短剣×5本]
 [グレートガーディアンスパイダーの布地×ドレス50着分]
 [ピンクダイヤモンド(大)×2個]
 [ピンクダイヤモンド(中)×5個]
 [ピンクダイヤモンド(小)×10個]
 [ルビーの指輪×5個]
 [ルビーのネックレス×5個]
 [サファイアの指輪×5個]
 [サファイアのネックレス×5個]
 [エクストラポーション×10本]
 [身代わりのブローチ]
 [身代わりのネックレス]

 という前代未聞のとんでもない物だった。

「…こ、これは…!?…その…本当に…?」
「おや。お気に召しませんでしたか?」

 皇帝陛下は首が千切れるのではないかという勢いで横に振った。

「それは何より。ああ、そうだ!もう1つありました」

 側にいた近衛騎士に小さな宝箱を渡すと、小声で「中身は?」と訊かれたのでリョータも小声で「エリクサー(劣)が5本だ」と答えると、その騎士はフラフラっと膝から崩れ落ちそうになるのを騎士の誇りと意地で何とか耐えた。
 その異常さに皇帝陛下も貴族達も不審気に見つめている。
 騎士はフラつく足取りで、震える手で陛下に差し出した。
 騎士から中身を小声で教えられた皇帝陛下は卒倒しかけたが、それこそ皇帝としての意地で正気を保つ事ができた。
 そして、そんな皇帝陛下に意味あり気に首を横に振ると、皇帝陛下も欲しかった応えに頷いた。
 これでこの日の謁見は終了した。
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