『ハズレ』召喚者『氣功術師』ののんびり異世界旅行！！

一晩貸しますので（説教を）ご自由に。

　商業ギルドに近づくにつれビクビクしていたレンファは、商業ギルドに到着すると、肩がビクッと震えた。
　俺がドアを開け、受付嬢のマーサさんにギルマスのサリナさんに面会を求めると、マーサさんはレンファの顔を不思議そうに見ていたが、直ぐに面会手続きをしてくれた。
　その間にバルバン達の商業ギルドへの登録を済ませる。
　ちょうど登録が終わった頃にマーサさんが戻ってきて、サリナさんの執務室に案内してくれた。

「ナジン、リリー。バルバン達を頼んだ」

　執務室に入るとサリナさんは書類仕事をしていたが、

「いらっしゃいませ。本日はい…ッ！？」

　いかがされましたかという言葉が途切れた。
　無理もない。
　だって俺の隣りに、

「レンファ…！？」

　そう。妹のレンファがいたのだから。

「ひ、久しぶりね。お姉ちゃん」

　レンファはビクビクしながら冷や汗をかいている。
　それを見逃すようならギルマスは務まらない。

「リョータさん。どうして妹と一緒なんですか？」
「ん～？買ったから」
「買った？買ったって…まさか奴隷！？」
「正解です」

　レンファに足の裏を見せるように命令すると、そこにある奴隷紋を確かめたサリナさんはプルプルと肩を震わせて、いきなりレンファの左頬を平手打ちではなく、拳でぶん殴った。
　腰の回転と捻った拳がクリーンヒットして、レンファは執務室の壁まで吹っ飛んだ。

「リョータ様。この愚妹を一晩お借りしてもよろしいでしょうか？」
「どうぞ、ご自由に。但し、傷が残るような事はご勘弁を」
「承知致しました。傷が残らないようにします」

　俺達に縋るような目で見ていたレンファの顔が絶望の色に染まった。

「じゃあ、明日の昼頃に迎えにきますから。あ、そうだ。これを差し入れしときますね」

　アイテムボックスから帝都で購入したウィスキーを5本取り出してテーブルの上に置くと、

「じゃあ、レンファ。また明日な」

　手を振りながら執務室を出ていく。