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依田の結婚 その3 黒川薫
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「こっちは更にでかかった。『絵里香は一人娘だから依田くんに黒川の姓を名乗ってもらうことはできないか?』って」
「婿養子ってことか!」
「それは……」
「さすがになあ」
「うん、俺も俺一人のことではないのですぐに返事できませんって言ったよ」
「うん」
「絵里香とお義母さんは『断ってくれていい、気にしないで』って言ってくれたけど、お義父さんも兄弟いないんだって」
「あーだからか」
「完全に途絶えるわけか」
「そこはお義父さんも理解してるみたいで「無理を言ってるのは重々承知している。
こんなことに拘る人間じゃないと思っていたし、君に押し付けて先延ばししているだけなのもわかってるつもりだ、済まない。それでも許されるのであれば……一度ご両親にご挨拶を兼ねてお会いしたい』って両家顔合わせすることになった」
「なんか凄そう」
「俺さ、お義父さんが理仁さんってことは言わずにうちの親と兄貴に会わせたんだよ。
親父と母さんはあわあわ言ってた」
「普通の反応だよな」
「俺でもそうなる」
「俺の親父、ジーノのファンクラブ入ってるくらい好きだから失神するかも」
「禄郎の親父さん、ロック好きだもんなw」
「ロックンロール禄郎ww」
「うるせえよ!」
「兄貴はあんまり詳しく知らなかったみたいで、ふーんって反応だった」
「兄貴、強い……」
「顔合わせは和気藹々としていい雰囲気だったんだよね。
そんな中、お義父さんが婿養子の話を切り出した。
一気に場の空気が変わったのがわかったよ」
「やっぱり婿養子は無理か」
「さすがになあ」
「俺の親父は『薫は次男だし、たとえ覚も婿養子に行って依田姓を継がなかったとしても、俺の弟や甥がいるし、甥には子どももいるから全く問題ない』って」
「へえ! 反対されなかったんだ」
「母さんも構いませんって言うし、兄貴もいいんじゃね?って軽いし」
「兄貴が強すぎるんだよなあ」
親父に『そもそも薫はどう思ってるんだ?』って聞かれた」
「そうだよ、依田はどうなんだよ」
「それな」
「どうなの?」
「俺は別にどっちでもいいですって言った。主体性がないって言われそうだけど、絵里香が望む方にしたいって言った」
「お前、漢だな」
「かっけえ」
「だから絵里香に聞いたんだ。依田絵里香になりたくはない? 黒川絵里香のままでもいい? 絵里香が思う方を言って欲しいって聞いた」
「うん」
「絵里香は『正直言うと依田絵里香になりたかった。でも私がお父さんとお母さんにできる親孝行はこれしか残ってないから、叶えてあげたい』って」
「いい子……」
「俺の嫁にする」
「おいっ! 曽川てめえ、手出すなよ!」
「俺の両親も『絵里香ちゃん、それでいいの?』って確認したんだ。絵里香は『はい。でも薫くんの実家に遊びに行った時だけ依田絵里香になってもいいですか?』って言ってさ。俺の両親も絵里香の両親も号泣w」
「いい子すぎる……」
「やっぱり俺の嫁に……」
「曽川、殺すぞ」
「ちなみに兄貴は?」
「『いいんじゃね?』だって」
「兄貴最強w」
「でもお義父さんとお義母さんは暗い顔しててさ、『薫くん、絵里香、ありがとう。でもそれで薫くんを苦しめるかもしれない……』って言うんだよね」
「何で苦しむのよ?」
「お義父さん黙っちゃって。
代わりにお義母さんが答えてくれたんだけど……」
「なになに?」
「『私がお父さんと結婚した時にも言われたことだけど『どんな手を使って理仁を丸め込んだんだ』とか『どうせ金目当て』とか言われたの。
気にしないようにはしてたけど辛かった。
薫くんが絵里香と結婚して黒川姓を名乗るのがどこかで漏れたら薫くんも同じことを言われかねない。それを私たちは心配してるの』って」
「あ、そうか……」
「あることないこと言われそうだな」
「『俺がどんなことをしても守るけど辛い思いはさせてしまうかもしれない。絵里香だけでなく薫くんまでそんな目に遭わせるわけにはいかない』ってお義父さん悩んでるんだ」
「嬉しいことなのに辛いな」
「理仁さんもお母さんも心配なんだな」
「空気が重くなっちゃってどうしよう……って思ってたら兄貴が『別に大丈夫だよな? 薫』ってのほほんと言い出してさ」
「兄貴!」
「『いろいろ言われるかもしれないけど、薫と家族がわかってれば大丈夫でしょ。それに何のために弁護士いるんだよ、いざとなったら使えよ』だって」
「そうだった! 弁護士いたわ!」
「兄貴すげえ!」
「やるなあ」
「兄貴のおかげでみんなホッとしてさ。
和やかな顔合わせになったよ。
ということで、俺は黒川薫になりました。どうぞよろしく」
「なんかかっこよくね?」
「依田薫も収まりが良かったけど、黒川薫かっこいいな」
「でもな、絵里香と連名にすると姉妹みたいになるんだよ」
「うははは!」
「確かにw」
「姉妹w」
「無事に終わってよかったな」
「これで終わりじゃなかったんだよ」
「は?」
「婿養子ってことか!」
「それは……」
「さすがになあ」
「うん、俺も俺一人のことではないのですぐに返事できませんって言ったよ」
「うん」
「絵里香とお義母さんは『断ってくれていい、気にしないで』って言ってくれたけど、お義父さんも兄弟いないんだって」
「あーだからか」
「完全に途絶えるわけか」
「そこはお義父さんも理解してるみたいで「無理を言ってるのは重々承知している。
こんなことに拘る人間じゃないと思っていたし、君に押し付けて先延ばししているだけなのもわかってるつもりだ、済まない。それでも許されるのであれば……一度ご両親にご挨拶を兼ねてお会いしたい』って両家顔合わせすることになった」
「なんか凄そう」
「俺さ、お義父さんが理仁さんってことは言わずにうちの親と兄貴に会わせたんだよ。
親父と母さんはあわあわ言ってた」
「普通の反応だよな」
「俺でもそうなる」
「俺の親父、ジーノのファンクラブ入ってるくらい好きだから失神するかも」
「禄郎の親父さん、ロック好きだもんなw」
「ロックンロール禄郎ww」
「うるせえよ!」
「兄貴はあんまり詳しく知らなかったみたいで、ふーんって反応だった」
「兄貴、強い……」
「顔合わせは和気藹々としていい雰囲気だったんだよね。
そんな中、お義父さんが婿養子の話を切り出した。
一気に場の空気が変わったのがわかったよ」
「やっぱり婿養子は無理か」
「さすがになあ」
「俺の親父は『薫は次男だし、たとえ覚も婿養子に行って依田姓を継がなかったとしても、俺の弟や甥がいるし、甥には子どももいるから全く問題ない』って」
「へえ! 反対されなかったんだ」
「母さんも構いませんって言うし、兄貴もいいんじゃね?って軽いし」
「兄貴が強すぎるんだよなあ」
親父に『そもそも薫はどう思ってるんだ?』って聞かれた」
「そうだよ、依田はどうなんだよ」
「それな」
「どうなの?」
「俺は別にどっちでもいいですって言った。主体性がないって言われそうだけど、絵里香が望む方にしたいって言った」
「お前、漢だな」
「かっけえ」
「だから絵里香に聞いたんだ。依田絵里香になりたくはない? 黒川絵里香のままでもいい? 絵里香が思う方を言って欲しいって聞いた」
「うん」
「絵里香は『正直言うと依田絵里香になりたかった。でも私がお父さんとお母さんにできる親孝行はこれしか残ってないから、叶えてあげたい』って」
「いい子……」
「俺の嫁にする」
「おいっ! 曽川てめえ、手出すなよ!」
「俺の両親も『絵里香ちゃん、それでいいの?』って確認したんだ。絵里香は『はい。でも薫くんの実家に遊びに行った時だけ依田絵里香になってもいいですか?』って言ってさ。俺の両親も絵里香の両親も号泣w」
「いい子すぎる……」
「やっぱり俺の嫁に……」
「曽川、殺すぞ」
「ちなみに兄貴は?」
「『いいんじゃね?』だって」
「兄貴最強w」
「でもお義父さんとお義母さんは暗い顔しててさ、『薫くん、絵里香、ありがとう。でもそれで薫くんを苦しめるかもしれない……』って言うんだよね」
「何で苦しむのよ?」
「お義父さん黙っちゃって。
代わりにお義母さんが答えてくれたんだけど……」
「なになに?」
「『私がお父さんと結婚した時にも言われたことだけど『どんな手を使って理仁を丸め込んだんだ』とか『どうせ金目当て』とか言われたの。
気にしないようにはしてたけど辛かった。
薫くんが絵里香と結婚して黒川姓を名乗るのがどこかで漏れたら薫くんも同じことを言われかねない。それを私たちは心配してるの』って」
「あ、そうか……」
「あることないこと言われそうだな」
「『俺がどんなことをしても守るけど辛い思いはさせてしまうかもしれない。絵里香だけでなく薫くんまでそんな目に遭わせるわけにはいかない』ってお義父さん悩んでるんだ」
「嬉しいことなのに辛いな」
「理仁さんもお母さんも心配なんだな」
「空気が重くなっちゃってどうしよう……って思ってたら兄貴が『別に大丈夫だよな? 薫』ってのほほんと言い出してさ」
「兄貴!」
「『いろいろ言われるかもしれないけど、薫と家族がわかってれば大丈夫でしょ。それに何のために弁護士いるんだよ、いざとなったら使えよ』だって」
「そうだった! 弁護士いたわ!」
「兄貴すげえ!」
「やるなあ」
「兄貴のおかげでみんなホッとしてさ。
和やかな顔合わせになったよ。
ということで、俺は黒川薫になりました。どうぞよろしく」
「なんかかっこよくね?」
「依田薫も収まりが良かったけど、黒川薫かっこいいな」
「でもな、絵里香と連名にすると姉妹みたいになるんだよ」
「うははは!」
「確かにw」
「姉妹w」
「無事に終わってよかったな」
「これで終わりじゃなかったんだよ」
「は?」
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