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俺と陽南とお兄さん
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放課後、靴を履き替え校舎を出る。
遅くなった、急ごう。
駅の改札近くの柱の影にポツンと立っているのは陽南だ。
西日が暑くて日射しを避けてる。
「陽南」
名前を呼ぶとパッと顔を上げ、かわいらしい笑顔を見せる。
「ごめん、待たせちゃった」
「ううん、そんなに待ってないよ、日直の仕事、大変なんだね」
「一週間雑用させられた感じ」
「出席番号順だと回ってくる回数多いよね」
「そう、新学期にリセットされちゃう」
「壮祐くん、お疲れ様でした」
「はい、疲れました」
ふっ
ふふっ
自然と手を繋ぐ。
それが当たり前かのように。
バイト先で知り合った陽南とは4ヶ月くらい前から付き合っている。
バイト仲間として普通に仲は良かったけど、同学年で話す機会も多く、周りから
「気が合うみたいだし付き合っちゃえば?」
なんて言われて、なんとなく二人ともその気になってきて、
「付き合う?」
「うん」
みたいな感じで付き合い始めた。
最初こそふわっとしてたけど一緒にいると楽しくて、陽南を知れば知るほど好きになっていく。
高校が違う陽南とは放課後に待ち合わせて週に三日は会っている。
陽南の家とバイト先が同じS区で、俺が通っている高校もその区内なので、その最寄駅であるS駅でよく待ち合わせる。
ちなみに俺の家は二駅先だ。
そのまま二人でバイトに行くこともある。
同伴出勤と揶揄われるけど、それすらも嬉しかったりする。
今日は二人ともバイトが休み。
金曜日だしちょっと足伸ばす?と話していたら陽南が、
「うちに来ない?」
と言ってきた。
19時くらいまで両親とも帰宅しないらしい。
陽南の家に行くのは初めてだ。
なんか照れる。
「壮祐くん、なんで赤くなってんの?」
と陽南が揶揄う。
「なんでもない」
ふふっ
「えっちなことしないからね」
と耳元で言う。
「陽南がしたいんでしょ?」
とこっちもやり返す。
陽南、真っ赤。
「なんでそういうこと言うかなあ」
と手をギュッと握る。
かわいい。
陽南とは付き合って3ヶ月くらい経った頃にセックスした。
体を重ねると陽南が一層愛おしくなった。
お互い初めてではないけど、別にそれは気にしない。
今、俺を好きでいてくれるならそれでいい。
陽南の家に着く。
「どうぞ、上がって」
「お邪魔します」
4月の終わりだというのに初夏を思わせるような日が続いていて暑い。
家の中も暑くなっている。
陽南の部屋に通される。
ドアを閉めると、陽南がまた手をギュッと握る。
「陽南」
そう呼んで抱きしめる。
陽南と見つめ合う。
唇を重ねる。
何度も触れた陽南の唇。
ちゅっちゅっと重ねるうちにもっと欲しくなってくる。
舌を入れると応じてくれる。
俺を抱きしめてくれる腕に力が籠る。
夢中になってキスしていると、陽南から熱い吐息が漏れる。
「壮祐くん…」
唇を離してまた見つめ合う。
制服のニットベストの上から胸を触る。
「こら…ダメ」
と窘める。
「部屋暑いね、飲み物持ってくるね」
するっと俺から逃げて笑う。
本当かわいい。
「エアコンつけないとダメかな?
窓開けようか」
そう言って窓を開ける。
ふっとタバコの匂いがした。
「なんでいるの!?」
陽南が声を上げる。
どうした?
またタバコの匂いがする。
「もう!ここで吸わないで!」
誰かいるのか?
「なんだ、陽南、男連れ込んでんのか?」
「ちょっとやめてよ!」
「どれどれ、今度はどんな男かなあ?」
「お兄ちゃん!」
お兄ちゃん?
陽南から兄がいるとは聞いていた。
ベランダからひょっこり顔を覗かせると、その人は、
「どうも!陽南の兄の深影と言います」
と笑顔で自己紹介した。
「壮祐くん、ごめんね、これ、お兄ちゃん」
「これってなんだよw」
「居るなんて聞いてない!」
「はんちゃんに夜と代わってくれって言われてさ、これから店に行く」
「違う!なんで家に居るの?」
「いいじゃん、いたって。実家なんだから」
「来るなら予め言って!」
「そうだよな、こうやって男連れ込めないもんなw」
「もう、やめて!」
言い争いをしているのか、戯れているのかよくわからない。
「あの」
「はい?」
「初めまして、今永壮祐と言います。
陽南さんとお付き合いさせていただいてます」
「俺、葦原深影ね、よろしくね」
「もういいでしょ!あっち行って!」
「なんでよ、居てもいいよね?今永くん」
「構いません」
「ほら」
「私が嫌なの!」
「陽南さんの部屋にいるのはご家族なので好きにしてください」
「お?」
深影が興味深そうに壮祐を見る。
「なにか言いたそうだね」
「はい」
「どうぞ、言ってみて」
「お兄さんがここにいる、それは構わないのですが、陽南さんの過去に関することは聞きたくないのでやめてください」
「ん?」
「『今度はどんな男かな』というのは何人か、少なくとも一人と会ってるということですよね?そんな話聞きたくないです」
「壮祐くん、ごめんなさい…」
「どうして陽南が謝るの?陽南はなにも悪くないでしょ?謝らなくていいんだよ」
「でも…」
「俺の前でこんなことを言ったら陽南さんの立場がない、陽南さんを傷つけるようなことは言わないでください」
「へえ…今永くん、面白いね」
「なにか面白いこと俺言いましたか?言ってるつもりありませんが」
「くくく…面白いじゃん、全然俺に対して物怖じしないし」
「初対面で無礼だとは思いますが、陽南さんを傷つけないで欲しい、他の男の話は聞きたくない、そう言ってるだけです」
「ふうん」
「お兄ちゃん…やめて」
「陽南?」
「俺、今永くん気に入っちゃった」
深影が笑う。
「やめて!」
「どうしたの?陽南」
「壮祐くんはダメ…」
「陽南?」
「絶対ダメ…」
「俺、そろそろ行くわ」
深影はそう言うと陽南の頭を撫でる。
「画集取りに来ただけだし、またな」
「……」
陽南は何も答えない。
「今永くんもまたね。初対面で嫌われちゃったかな?」
「いえ…」
ふっ
「じゃあね」
深影は手をひらひらさせて陽南の部屋を出て行った。
遅くなった、急ごう。
駅の改札近くの柱の影にポツンと立っているのは陽南だ。
西日が暑くて日射しを避けてる。
「陽南」
名前を呼ぶとパッと顔を上げ、かわいらしい笑顔を見せる。
「ごめん、待たせちゃった」
「ううん、そんなに待ってないよ、日直の仕事、大変なんだね」
「一週間雑用させられた感じ」
「出席番号順だと回ってくる回数多いよね」
「そう、新学期にリセットされちゃう」
「壮祐くん、お疲れ様でした」
「はい、疲れました」
ふっ
ふふっ
自然と手を繋ぐ。
それが当たり前かのように。
バイト先で知り合った陽南とは4ヶ月くらい前から付き合っている。
バイト仲間として普通に仲は良かったけど、同学年で話す機会も多く、周りから
「気が合うみたいだし付き合っちゃえば?」
なんて言われて、なんとなく二人ともその気になってきて、
「付き合う?」
「うん」
みたいな感じで付き合い始めた。
最初こそふわっとしてたけど一緒にいると楽しくて、陽南を知れば知るほど好きになっていく。
高校が違う陽南とは放課後に待ち合わせて週に三日は会っている。
陽南の家とバイト先が同じS区で、俺が通っている高校もその区内なので、その最寄駅であるS駅でよく待ち合わせる。
ちなみに俺の家は二駅先だ。
そのまま二人でバイトに行くこともある。
同伴出勤と揶揄われるけど、それすらも嬉しかったりする。
今日は二人ともバイトが休み。
金曜日だしちょっと足伸ばす?と話していたら陽南が、
「うちに来ない?」
と言ってきた。
19時くらいまで両親とも帰宅しないらしい。
陽南の家に行くのは初めてだ。
なんか照れる。
「壮祐くん、なんで赤くなってんの?」
と陽南が揶揄う。
「なんでもない」
ふふっ
「えっちなことしないからね」
と耳元で言う。
「陽南がしたいんでしょ?」
とこっちもやり返す。
陽南、真っ赤。
「なんでそういうこと言うかなあ」
と手をギュッと握る。
かわいい。
陽南とは付き合って3ヶ月くらい経った頃にセックスした。
体を重ねると陽南が一層愛おしくなった。
お互い初めてではないけど、別にそれは気にしない。
今、俺を好きでいてくれるならそれでいい。
陽南の家に着く。
「どうぞ、上がって」
「お邪魔します」
4月の終わりだというのに初夏を思わせるような日が続いていて暑い。
家の中も暑くなっている。
陽南の部屋に通される。
ドアを閉めると、陽南がまた手をギュッと握る。
「陽南」
そう呼んで抱きしめる。
陽南と見つめ合う。
唇を重ねる。
何度も触れた陽南の唇。
ちゅっちゅっと重ねるうちにもっと欲しくなってくる。
舌を入れると応じてくれる。
俺を抱きしめてくれる腕に力が籠る。
夢中になってキスしていると、陽南から熱い吐息が漏れる。
「壮祐くん…」
唇を離してまた見つめ合う。
制服のニットベストの上から胸を触る。
「こら…ダメ」
と窘める。
「部屋暑いね、飲み物持ってくるね」
するっと俺から逃げて笑う。
本当かわいい。
「エアコンつけないとダメかな?
窓開けようか」
そう言って窓を開ける。
ふっとタバコの匂いがした。
「なんでいるの!?」
陽南が声を上げる。
どうした?
またタバコの匂いがする。
「もう!ここで吸わないで!」
誰かいるのか?
「なんだ、陽南、男連れ込んでんのか?」
「ちょっとやめてよ!」
「どれどれ、今度はどんな男かなあ?」
「お兄ちゃん!」
お兄ちゃん?
陽南から兄がいるとは聞いていた。
ベランダからひょっこり顔を覗かせると、その人は、
「どうも!陽南の兄の深影と言います」
と笑顔で自己紹介した。
「壮祐くん、ごめんね、これ、お兄ちゃん」
「これってなんだよw」
「居るなんて聞いてない!」
「はんちゃんに夜と代わってくれって言われてさ、これから店に行く」
「違う!なんで家に居るの?」
「いいじゃん、いたって。実家なんだから」
「来るなら予め言って!」
「そうだよな、こうやって男連れ込めないもんなw」
「もう、やめて!」
言い争いをしているのか、戯れているのかよくわからない。
「あの」
「はい?」
「初めまして、今永壮祐と言います。
陽南さんとお付き合いさせていただいてます」
「俺、葦原深影ね、よろしくね」
「もういいでしょ!あっち行って!」
「なんでよ、居てもいいよね?今永くん」
「構いません」
「ほら」
「私が嫌なの!」
「陽南さんの部屋にいるのはご家族なので好きにしてください」
「お?」
深影が興味深そうに壮祐を見る。
「なにか言いたそうだね」
「はい」
「どうぞ、言ってみて」
「お兄さんがここにいる、それは構わないのですが、陽南さんの過去に関することは聞きたくないのでやめてください」
「ん?」
「『今度はどんな男かな』というのは何人か、少なくとも一人と会ってるということですよね?そんな話聞きたくないです」
「壮祐くん、ごめんなさい…」
「どうして陽南が謝るの?陽南はなにも悪くないでしょ?謝らなくていいんだよ」
「でも…」
「俺の前でこんなことを言ったら陽南さんの立場がない、陽南さんを傷つけるようなことは言わないでください」
「へえ…今永くん、面白いね」
「なにか面白いこと俺言いましたか?言ってるつもりありませんが」
「くくく…面白いじゃん、全然俺に対して物怖じしないし」
「初対面で無礼だとは思いますが、陽南さんを傷つけないで欲しい、他の男の話は聞きたくない、そう言ってるだけです」
「ふうん」
「お兄ちゃん…やめて」
「陽南?」
「俺、今永くん気に入っちゃった」
深影が笑う。
「やめて!」
「どうしたの?陽南」
「壮祐くんはダメ…」
「陽南?」
「絶対ダメ…」
「俺、そろそろ行くわ」
深影はそう言うと陽南の頭を撫でる。
「画集取りに来ただけだし、またな」
「……」
陽南は何も答えない。
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「いえ…」
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