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きっかけ
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「『三びきのこぶた』っていう童話知ってる?」
え…
心臓がドクンと鳴る。
「はい…」
ドクンドクン
「狼に襲われた三びきのこぶたが、それぞれワラの家、木の家、レンガの家を建てて狼から身を守ろうとする。
でもワラの家も、木の家も狼に吹き飛ばされて壊れてしまった。
でもレンガの家はびくともしなくて狼から身を守ることができたっていう話。
知ってる?」
「はい…」
ドクンドクン
「深影、小さい時にその本を読んでレンガ最強!って思ったんだって。
この世でレンガの家が一番強い、
だから俺はレンガの建物に憧れてるんだって」
ドクン
心臓が大きく跳ねているのが自分でわかる。
泣きそうになる。
鼻の奥がツンと痛い。
「ん?今永くん?どうした?」
ズッ…
「え?待って、なんで?なんで泣いてるの?どこか痛い?」
半井さんが慌ててる。
「…違うんです、違う…」
「大丈夫?」
「…はい、すみません」
リュックの中から本を取り出す。
それは読みすぎてあちこち補修してある、ボロボロになった絵本だった。
「それ、『三びきのこぶた』?」
「はい、持ち歩いてるんです。
俺も小さい時に読んでもらってレンガが一番強いから、大きくなったらレンガの家に住むんだ!ってずっと言ってたそうです」
「深影と同じ?」
「はい、レンガの家に憧れてます。
きっかけは『三びきのこぶた』です」
「マジか…」
「でも,俺が小学生になったくらいの時に祖父の家が区画整理で建て替えることになって、祖父が俺にどんな家がいい?って聞いてくれたんです。
俺、レンガの家がいい!強いから!って言ったんです」
「うん」
半井さんは俺の話をちゃんと聞いてくれる。
「その時に父が『お前、まだそんなこと言ってんのか?現実はな、レンガの建物は夏は暑いし、リフォームもなかなかできないし、地震に弱いんだよ。日本に向かない建物なんだよ。坪単価も固定資産税も高くなる。そもそも建てられる技術のある人が少ないんだぞって」
「お父さんに論破されたんだ」
「はい。俺、それがすごくショックで泣いたんです。
そうしたら祖父を始め、祖母や母が怒り狂って父を完膚無きまでに詰りました。
祖父は『子どもに対して現実突きつけるような論破をしてなにが楽しいんだっ!』と一番怒ってて、祖母も『育て方を間違えたわ』と呆れ、母は『その考えを改めないのなら離婚を視野に入れます』と子ども心に三人が怖かったのをよく覚えてます」
半井さんが笑いを堪えてる。
「祖父は俺に『全部がレンガの家は無理かもしれない、一部だけでもいいか?』って言ってくれました。
俺が頷くと本当に一部だけレンガの家を建てたんです。俺、すごく嬉しくて…
これでおじいちゃんの家は大丈夫だ、木の部分が心配だけど、レンガは強いんだぞって…」
恥ずかしい…こんな話、陽南にしか話してない…
東京駅の前で陽南にこの話をした時、陽南も笑いを堪えていた。でも、
「今の技術ならきっと地震に強いレンガの家が建てられるよ、エアコンもあるし。あ!そうだよ、新しいレンガを新しい材料で壮祐くんが作ればいいんだよね!素敵な家が建てられるといいね」
そう言って陽南は笑ったんだ。
笑って少し泣いてた。
子どもみたいって笑わないでくれたのが嬉しかった。
笑っていたのはじいちゃんたちの怒りの件だったから。
そしてあの時、陽南がなぜ泣いたのか今わかった。
レンガの家が好きな理由がお兄さんと同じだったからだ。
お兄さんと俺の価値観の一致に不安がよぎったのだろう。
え…
心臓がドクンと鳴る。
「はい…」
ドクンドクン
「狼に襲われた三びきのこぶたが、それぞれワラの家、木の家、レンガの家を建てて狼から身を守ろうとする。
でもワラの家も、木の家も狼に吹き飛ばされて壊れてしまった。
でもレンガの家はびくともしなくて狼から身を守ることができたっていう話。
知ってる?」
「はい…」
ドクンドクン
「深影、小さい時にその本を読んでレンガ最強!って思ったんだって。
この世でレンガの家が一番強い、
だから俺はレンガの建物に憧れてるんだって」
ドクン
心臓が大きく跳ねているのが自分でわかる。
泣きそうになる。
鼻の奥がツンと痛い。
「ん?今永くん?どうした?」
ズッ…
「え?待って、なんで?なんで泣いてるの?どこか痛い?」
半井さんが慌ててる。
「…違うんです、違う…」
「大丈夫?」
「…はい、すみません」
リュックの中から本を取り出す。
それは読みすぎてあちこち補修してある、ボロボロになった絵本だった。
「それ、『三びきのこぶた』?」
「はい、持ち歩いてるんです。
俺も小さい時に読んでもらってレンガが一番強いから、大きくなったらレンガの家に住むんだ!ってずっと言ってたそうです」
「深影と同じ?」
「はい、レンガの家に憧れてます。
きっかけは『三びきのこぶた』です」
「マジか…」
「でも,俺が小学生になったくらいの時に祖父の家が区画整理で建て替えることになって、祖父が俺にどんな家がいい?って聞いてくれたんです。
俺、レンガの家がいい!強いから!って言ったんです」
「うん」
半井さんは俺の話をちゃんと聞いてくれる。
「その時に父が『お前、まだそんなこと言ってんのか?現実はな、レンガの建物は夏は暑いし、リフォームもなかなかできないし、地震に弱いんだよ。日本に向かない建物なんだよ。坪単価も固定資産税も高くなる。そもそも建てられる技術のある人が少ないんだぞって」
「お父さんに論破されたんだ」
「はい。俺、それがすごくショックで泣いたんです。
そうしたら祖父を始め、祖母や母が怒り狂って父を完膚無きまでに詰りました。
祖父は『子どもに対して現実突きつけるような論破をしてなにが楽しいんだっ!』と一番怒ってて、祖母も『育て方を間違えたわ』と呆れ、母は『その考えを改めないのなら離婚を視野に入れます』と子ども心に三人が怖かったのをよく覚えてます」
半井さんが笑いを堪えてる。
「祖父は俺に『全部がレンガの家は無理かもしれない、一部だけでもいいか?』って言ってくれました。
俺が頷くと本当に一部だけレンガの家を建てたんです。俺、すごく嬉しくて…
これでおじいちゃんの家は大丈夫だ、木の部分が心配だけど、レンガは強いんだぞって…」
恥ずかしい…こんな話、陽南にしか話してない…
東京駅の前で陽南にこの話をした時、陽南も笑いを堪えていた。でも、
「今の技術ならきっと地震に強いレンガの家が建てられるよ、エアコンもあるし。あ!そうだよ、新しいレンガを新しい材料で壮祐くんが作ればいいんだよね!素敵な家が建てられるといいね」
そう言って陽南は笑ったんだ。
笑って少し泣いてた。
子どもみたいって笑わないでくれたのが嬉しかった。
笑っていたのはじいちゃんたちの怒りの件だったから。
そしてあの時、陽南がなぜ泣いたのか今わかった。
レンガの家が好きな理由がお兄さんと同じだったからだ。
お兄さんと俺の価値観の一致に不安がよぎったのだろう。
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