レンガの家

秋臣

文字の大きさ
18 / 54

夏休み

しおりを挟む
1学期が終わると本番は半年先でも受験生は焦り始める。
俺は予備校通いになったし、陽南も夏休み前にバイトを辞めて夏期講習を受けたり、知り合いの人に家庭教師をしてもらっているようだ。
全然会えなくなってしまった。

こんなに長い間、会わずにいたことがなかったので戸惑う。
陽南がいない生活を俺は甘く見ていたことを痛感する。
これは予想以上にきつい。
今からこんな調子で合格して本当に遠距離になったら俺はどうなってしまうのか…
しかし、優先させるべきは勉強なので、陽南と我慢の日々を過ごしている。
耐えるしかない。

夏休みは大きな祭りがあるのでそれに行くことは二人で決めた。
陽南は、
「暑いからプールにも行きたい」
と言っていたが却下。
「なんで?プール行きたい」
と引かないが絶対ダメ!
他の男どもに陽南の水着なんて絶対見せたくない。許さない。
陽南にそう言うと、
「壮祐くんってそういうタイプだったっけ?」
と面白くなさそう。
「ダメって言ったらダメです」
「ケチ!」
「なんとでも言え、陽南のことジロジロ見られるの嫌だし、俺がヤキモチ焼くから絶対行かない」
「妬いてくれるんだ」
ちょっと嬉しそう。
「俺、ヤキモチ焼きなんで」
「ふふふー」
陽南がすごく嬉しそうに笑ってる。
ということでプールはダメ!

今年は大きなイベントは祭りだけにして、会える時は『Both』で待ち合わせて会うことにした。
最初陽南から提案された時は、気乗りしなかったけど、
「お店ににいる方がお兄ちゃんも迂闊に手を出せないでしょ?」
と不敵に笑う。
なるほど、その手があったか。
聞き上手な半井さんにも会いたいし、 何より建物をじっくり見たい。

喜んだのはもちろんお兄さんだ。
「壮祐くんから来てくれるなんて!」
と感激していたらしい。
ぬか喜びさせて申し訳ないが、目の前で陽南と存分にいちゃつかせてもらうので、あしからず。

しかし、そうは言っても自分の中で少しだけ気持ちが変化していることに気づかないほど鈍くはない。
断っておくが、お兄さんを好きになったわけではない。
半井さんに言われた、
「深影と似ている根っこの部分を似ていて嬉しいって思ってあげて」
という言葉はそのとおりではないかと思っている。
そこだけは認めたい。
幼い頃に強烈に刷り込まれた感覚、その感覚が同じ人がいるという喜びは何ものにも代え難い。
それが大好きな陽南のお兄さんなら、俺は嫌いになることは絶対ないと思うんだ。
恋愛的な意味では決して好きにならないけど、陽南が心配しないでいられるような関係になれるんじゃないかと密かに思ってる。
そうなりたい。
陽南とお兄さんが兄妹で良かったと思える日がきっと来ると思ってるから。


陽南は推薦を狙いつつ、その先を見つめている。
Bothに来る目的は俺と会うことでもあるけど、ここで英語を教えてもらってる。
半井さんの奥さんの公佳さんは外国語学部だったそうで、英語が堪能らしい。
ただ陽南に教えてる時間がなかなか取れないので、同期だった帰国子女の友達、逢生さんを紹介してもらい、英語や英会話を教えてもらっている。
TOEIC対策も含めその先の目標のためだ。
陽南は着実に動き出している。
俺と離れるのが寂しいと泣くけれど、
ちゃんと自分の力と足で立ち上がる。
そんな陽南がいいなと思う。
そんな陽南だから好きなんだ。

陽南が逢生さんに英会話を習っている間、俺は毎回飽きずにレンガを眺めている。
見ていると積み上げるのにどれくらいの時間を要したのだろうかとか、どこから調達したレンガなのだろうか、名のある人の邸宅に使われる色が均等で綺麗なレンガもいいけど、一つ一つ色が異なるレンガも好きだなとか、自分でも不思議なくらい飽きないんだ。
その様子を見て満足げな顔をしてるのはお兄さん…深影さんだ。
満足げついでにさり気なく肩を抱いてきたり、尻を撫でてきたり、あわよくばキスしようと試みるが当然全て跳ね除ける。
「レンガも好きだけど、やっぱり俺は壮祐くんが好きだな」
と当たり前のように口説くが無視する。
受け入れるのは深影さんの豊富なレンガに関する見解や知識だけだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

放課後の保健室

一条凛子
恋愛
はじめまして。 数ある中から、この保健室を見つけてくださって、本当にありがとうございます。 わたくし、ここの主(あるじ)であり、夜間専門のカウンセラー、**一条 凛子(いちじょう りんこ)**と申します。 ここは、昼間の喧騒から逃れてきた、頑張り屋の大人たちのためだけの秘密の聖域(サンクチュアリ)。 あなたが、ようやく重たい鎧を脱いで、ありのままの姿で羽を休めることができる——夜だけ開く、特別な保健室です。

処理中です...