レンガの家

秋臣

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役目

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翌朝、朝食までご馳走になってしまい、恐縮したまま陽南の家を出る。
「急に押しかけた上、泊まらせていただいてありがとうございました」
「あと2年頑張ってね」
「まだ結果出てませんが頑張ります」
「体に気をつけてな」
「はい」
お父さんとお母さんが声をかけてくれた。

「そろそろ行かねえと乗り遅れるぞ」
「壮祐くん、行こう」
「本当にありがとうございました、失礼します」

深影さんと陽南が車で東京駅まで送ってくれる。
「お兄ちゃん、ありがとう」
「かわいい壮祐くんのためだからね」
「そこはかわいい妹のためでしょ!」
二人で朝からギャーギャー言ってる。
俺は兄弟がいないから、こういうの羨ましい。

東京駅に着く。
「深影さん、送っていただいてありがとうございました」
「おう」
「お兄ちゃん、ちょっとだけ待ってて」
「少しな」
陽南が車を降りる。
「壮祐くん、来てくれてありがとう。
院試受かるように祈ってる」
「ありがとう、陽南」
「結果が出たら、そっちに遊びに行ってもいい?」
「うん、おいで、待ってる。楽しみだ」
「待っててね」

「陽南」
「ん?」
「俺、頑張るから、期待してて」
陽南の顔がパッと明るくなる。
そして満面の笑みを浮かべて
「うん!」
と言って抱きつく。
しっかり陽南を抱きしめる。
かわいい顔して俺を見上げるから、
ちゅっとキスする。

「こらこらこらこら!
俺の目の前で、公衆の面前で、
大事な壮祐くんになにしてるんですかね?」
「そっち!?」
「そっちだよ」
「あはははは!」

「陽南、またね」
「うん、遊びに行くね」
「待ってるよ」
「元気でな」
「深影さん、いろいろありがとうございました」
「ちゅーする?」
「じゃあね、陽南」
「うん」
「おい、こら、人の話聞け」
「あはははは!」

俺は8時の新幹線で仙台に戻った。

数日後、院試の結果が出る。
自信はあったが狭き門なのもわかっている。
緊張する。

結果は合格。
すぐ陽南に知らせる。
電話の向こうで大騒ぎしてる。
どうやらBothにいるようだ。
輝哉さんの声も聞こえる。
少し時間ができた陽南は卒業までの間、Bothを手伝ってるそうだ。

両親と祖父母にも連絡する。
みんな喜んでくれた。
院に進みたいと相談した時、誰も反対しなかった。
深影さんと同じように、
「やりたいことを好きなだけやりなさい」
と言ってくれた。
母さんに一つだけ条件を出された。
「たまにはこっちに来なさい」
東京に戻ってもすぐに陽南に会いに行ってしまうから呆れているようだ。

じいちゃんとばあちゃんに連絡を入れた時に、
「こっちに来た時に話したいことがある」
と言われた。
同じことを父さんと母さんにも言われた。
なんだろう。

一応尚希にも知らせた。
「よっしゃ!まだ遊びに行ける!」
相変わらずで笑った。


院生になって益々研究に没頭した。
進んでよかったと思う、楽しい。
きついこともあるけど楽しいが上回るのはいい兆候だと思う。
深影さんが言っていた、理想と現実が今のところはバランスよく並走してくれている。

陽南はGSとして忙しくしている。
制服の写真を二枚送ってくれた。
いつもはふわっとした雰囲気だが、制服を着るとキリッとしてかっこいい。
よく似合っている。
一枚は一人で、もう一枚は凛ちゃんと並んで写ってる。
輝哉さん一家が沖縄に旅行に行く時に空港で撮ったらしい。
凛ちゃんは今年小学生になった。
少し前に会った時大きくなっててびっくりした。
お土産を渡すと、
「そうくん、ありがとう」
としっかりした声で礼を言っていた。
そう、凛ちゃんは俺のことを『そうくん』、陽南のことは『ひなちゃん』と呼ぶ。
ちなみに深影さんのことは 『みかげ』と呼び捨て。ウケる。
輝哉さんが呼び捨てしてるから、それが移ったらしい。

凛ちゃんは三年前にお姉ちゃんになった。
弟の蓮くんが生まれたのだ。
凛ちゃんは公佳さんにそっくりだが、蓮くんは輝哉さんにそっくりだった。
「はんちゃんが赤ん坊になったみたいで不気味だな」
と深影さんがいうくらい似てる。

凛ちゃんに毎年ダイヤをプレゼントしている深影さんは、蓮くんにも毎年プレゼントしようといろいろ考えたようだった。
「男の子にダイヤはなあ」
と悩んだ挙句、
「レンガを毎年10個ずつプレゼントする。
二十歳になったらピザ窯作れるぞ」
と輝哉さんに伝えると、
「いらねえよ!」
と一蹴されていた。
深影さん、レンガは深影さんと俺しか喜ばないよ、きっと。

結局毎年24金のインゴット1gをプレゼントすることにしたらしい。
「ダイヤは夢があるけど金だと生々しいんだよなあ」
とブツブツ言っていたけど、親友の子にそこまでできることがすごいと思うんだけど。

深影さんが羽振りがいいのはカフェバーが順調なことや蓄えによるものもあるが、副業が要因だ。
手先が器用らしく、お店や企業のロゴマークやSNSで使用するアイコンなどのデザインを引き受けている。
結構いい稼ぎになると言っていた。
副業だけで食べていけるくらいの収入があるそうだ。
Bothのロゴマークも深影さんが手掛けたものだ。
それを見て依頼してくる顧客が多いらしい。

深影さんは20年間積立はできなかったが、陽南の二十歳の誕生日にダイヤのピアスと大きな一粒ダイヤのネックレスをプレゼントしていた。
陽南はすごく喜んで、ここぞという時はいつも身につけている。
シンプルなデザインが陽南によく似合っている。
それを陽南にプレゼントした深影さんが、
「指輪はお前の役目だからな」
と俺に耳打ちした。

はい、必ず。
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