恋人ごっこはおしまい

秋臣

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変化

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確実に避けられてる。
学校に行ってもなんとなく距離がある。
普通に接しているように見えるが、絶妙に俺と目を合わせない。

なんだよ、言いたいことあるなら言えよ。
京佐に合鍵を返されてからはセックスもしていない。
京佐の部屋には入れないし、俺の部屋にも来ないし。
フラストレーションと性欲が溜まって爆発しそうになっている。

それなら俺が仕掛けてやる。

俺は何もなかったかのように京佐に話しかける。
話のついでのように。

「ああ、そうそう。京佐、ほら、鍵」
俺は京佐に俺の部屋の合鍵を渡す。
しかし京佐は受け取らない。
「……要らないよ」
「要らないってなんだよ。
鍵持ってた方が便利だろ?」
「要らないって言ってる……」
「だからなんでだよ。あ、じゃあ、京佐の部屋の鍵くれよ。これ、使えねえんだよ」
使えなくなった京佐の部屋の鍵を見せる。
その鍵を京佐が奪い取ろうとする。
「なにすんだよ!」
「返せよ」

「なになに~? なにしてんの?」
曽川と依田が合流した。
「なんの話?」
依田が聞く。
「京佐が部屋の鍵くれないんだよ」
「あらあらあら、そういうこと? お二人さん」
曽川が揶揄う。
「そういうことってどういうことだよw
京佐のやつ、俺の部屋の鍵も受け取らねえし、自分の部屋の鍵もくれねえの」
「拒否w」
「まあ嫌なんだろ、諦めろ」
「そうそう、合鍵は特別なものよ」
と曽川が気持ち悪い顔してうっとりしてる。

「合鍵なんて大したもんじゃねえじゃん」

「……そういうところだよ」

京佐は俺にそう言うとリュックを手にし、そのまま学食を出て行った。

らしくなかった。
あんなに冷たい京佐、初めて見た。
胸がザワザワする。

「京佐!」
京佐を追おうとしたら、依田に手で制された。
「俺が行く、禄郎はここにいて」
静かにそれでいて強く、俺にそう言った。
依田が京佐を追う。
依田……
それを見ていた曽川が、
「きょうさには依田が付いてるから大丈夫だよ」
と俺を宥める。
「でも……」
「禄郎はここにいろ、話がある」

いつもヘラヘラしてる曽川の真顔も俺は初めて見た。

「……なんだよ、話って」
「そうなあ、なにがいいかなあ~
俺オススメの漫画の話、レンタカー借りて横浜までチャーハン食いに行った話、トイレでうんこしたら水流弱すぎて全然流れなくて焦った話……」
後ろのテーブルの女二人が、
「ちょっと!」
と怒ってる。
「あ、すんません」
と曽川がいつものようにヘラヘラ謝る。
「もう! 最低!」
女たちは怒って席を離れてしまった。
「怒られちゃった」
と悪びれもなくヘラヘラしてる。
「ということでどれがいい?」
「なんなんだよ、どれも興味ねえよ」
ちょっとチャーハンとうんこの話は面白そうだなと思ったけど学食で聞きたくはない。
「そう? じゃあ最近観たゲイビの話とかどうよ?」
曽川がにやっと笑う。
「……」


「禄郎、あのDVDのタイトル知ってるか?」
「タイトル?『恋人ごっこ』だろ?」
「それは知ってるんだな」
「それがなんだよ」
「2枚目のDVD、チャプター8で最後だろ? あの後観たか?」
「え、だって映像終わって……」
「やっぱりお前ら2枚目観たんだな」
「あ……」
「まあ、想定内だから驚かねえよ。
そのつもりで渡したんだし」
「曽川、何言ってんだ? 想定内ってなに?」

「きょうさが未使用で3点セット返してきただろ?あれさ、俺が渡したやつに印付けてたんだよ。依田と印つけようぜって悪戯してみたんだ。
ローションとかのパッケージって新品でも底だけフィルムがかかってないじゃん?
そこに印を付けてみた。
お前はズボラだから気にしなそうだけど、きょうさは違うだろ?
印には気づかなくても、あいつなら絶対同じものを買って返して、バレないようにすると思って狙った」
「騙したのかよ……」
「騙したわけじゃねえよ、ただの悪戯、悪ふざけのつもりだった」
「……」
「そのまま返してきた時にすぐ依田とローションの底の印を確認した。
それで使ったのはわかった」
「悪趣味すぎるだろ……こんなことして楽しいかよ」
「遊んで悪かったとは思ってる、ごめん」
「……」

「でもな」
曽川からヘラヘラが消える、真顔で俺を見る。
「DVDの中で男優が言ってたこと覚えてるか?」
「なんか言ってたっけ?」
「これ」
そう言ってスマホを見せる。

曽川のスマホには、
『今あなたには彼がどう見えてますか?
あなたの中で何か変わりましたか?
心に何かありますか?
何もなかったら今すぐ部屋を出て。
何かわからないけど何かがあると思ったら抱きしめてあげて。
きっと答えがわかる時が来るはずだから』

そう表示されていた。

覚えてる。

「DVDを録音したり撮ったりするのはまずいかなと思ってメモった」
「マメかよ……」

「俺さ、これ聞いた時、禄郎ときょうさの顔が浮かんだんだよ。
お前らがこのDVDを観て、これを聞いたら、なにか変わるんじゃないかって思った。
何も変わらないかもしれないけど、もしかしたら変わるんじゃないかって思ったんだよ。
……俺は変わって欲しかった!」

曽川……
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