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何年かかっても
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その頃店では興奮した久我を抑えるのに難儀していたママと常連たち。
普段は無口で冷静沈着なバーテンの槇がカウンターから出てきて、久我の腕を後ろに締め上げた。
「いってえーーっ!」
と叫びギブアップする久我。
「とりあえずそこに座りなさい」
カウンターを指差すママ。
「うるせえな、柊をどこに連れて行った! 返せよ!」
「返せってなによ、あんた柊ちゃんの何?」
久我が答えた。
「恋人だよ」
店内が静まり返る。
「あなたなに言ってるの?」
「だから恋人だって言ってるだろ? 柊はどこだ、あいつ誰だよ!」
「話が全然わからないわ、説明して。
あなた名前は?」
「……久我 遼介」
久我は暴れても無駄だと悟ったのか、
おとしくなり、ポツリポツリと話し始めた。
高校生の時に柊と恋人になったこと。
同じ大学に通うはずが入学式に現れず、それ以来何処へ行ったのか全くわからなくなったこと。
関わりのある人に自分の居場所を言わないよう口止めしていたこと。
柊がゲイだという手掛かりだけで3年近く東京と神奈川のゲイバーをしらみ潰しに訪ね歩いたこと。
そして今日ようやく柊を見つけたこと。
一気に話すと久我は、
「柊を返してくれよ……」
と呟いた。
ママも常連客も槇までもが驚きに言葉を失っていた。
「あなた3年もゲイバー訪ね歩いたの?」
「それしか探す手立てがなかったんだ。柊を見つけたかったから保証なんてなかったけど探すしかなかった……」
「その根性だけは認めるわ」
頷く常連客。
「嬉しくねえよ」
「でもわからないんだけど、そんなにまでして探してくれた恋人をどうしてあんなに柊ちゃんは拒否するの? 普通は喜ぶものじゃないの?」
「俺にもわからない……」
「そもそもなんで柊ちゃんはそこまでしてあなたの前から消えたのよ?」
「わかんねえよ! わからないから柊に聞きたいんだ」
「埒が明かないわね。一度柊ちゃんと話してみないとどうにもならないわ」
「だからそのために柊を出せって言ってるだろ」
「あんな怯えてる柊ちゃんを連れて来られるわけないでしょ。
話をするならここでしなさい、柊ちゃんに連絡して聞くだけ聞いてあげる。
ただし、私と槇ちゃんは同席するわよ、柊ちゃんになにがあったら困るしね。
拒否されたらその時は潔く諦めなさいな」
ママは久我に名刺を2枚渡し、1枚に久我の連絡先を書くよう言った。連絡先が書かれた方を受け取ると、
「巻き込まれついでに席を設けてあげるけど、あの子を傷つけたり、乱暴なことしたら躊躇なくあなたを殺すわよ、いいわね?」
「……俺が柊を傷つけたりするわけがないだろ?」
やっと見つけた柊に繋がる糸を断ちたくなくて、久我は店を後にした。
「ちょっと困ったことになったわねえ」
ママがため息をつく。
「エスカレートしなければいいんですが心配です」
槇も不安を隠せない。
「辻もっちゃんに連絡してみるわ。あの子の様子も気になるし」
普段は無口で冷静沈着なバーテンの槇がカウンターから出てきて、久我の腕を後ろに締め上げた。
「いってえーーっ!」
と叫びギブアップする久我。
「とりあえずそこに座りなさい」
カウンターを指差すママ。
「うるせえな、柊をどこに連れて行った! 返せよ!」
「返せってなによ、あんた柊ちゃんの何?」
久我が答えた。
「恋人だよ」
店内が静まり返る。
「あなたなに言ってるの?」
「だから恋人だって言ってるだろ? 柊はどこだ、あいつ誰だよ!」
「話が全然わからないわ、説明して。
あなた名前は?」
「……久我 遼介」
久我は暴れても無駄だと悟ったのか、
おとしくなり、ポツリポツリと話し始めた。
高校生の時に柊と恋人になったこと。
同じ大学に通うはずが入学式に現れず、それ以来何処へ行ったのか全くわからなくなったこと。
関わりのある人に自分の居場所を言わないよう口止めしていたこと。
柊がゲイだという手掛かりだけで3年近く東京と神奈川のゲイバーをしらみ潰しに訪ね歩いたこと。
そして今日ようやく柊を見つけたこと。
一気に話すと久我は、
「柊を返してくれよ……」
と呟いた。
ママも常連客も槇までもが驚きに言葉を失っていた。
「あなた3年もゲイバー訪ね歩いたの?」
「それしか探す手立てがなかったんだ。柊を見つけたかったから保証なんてなかったけど探すしかなかった……」
「その根性だけは認めるわ」
頷く常連客。
「嬉しくねえよ」
「でもわからないんだけど、そんなにまでして探してくれた恋人をどうしてあんなに柊ちゃんは拒否するの? 普通は喜ぶものじゃないの?」
「俺にもわからない……」
「そもそもなんで柊ちゃんはそこまでしてあなたの前から消えたのよ?」
「わかんねえよ! わからないから柊に聞きたいんだ」
「埒が明かないわね。一度柊ちゃんと話してみないとどうにもならないわ」
「だからそのために柊を出せって言ってるだろ」
「あんな怯えてる柊ちゃんを連れて来られるわけないでしょ。
話をするならここでしなさい、柊ちゃんに連絡して聞くだけ聞いてあげる。
ただし、私と槇ちゃんは同席するわよ、柊ちゃんになにがあったら困るしね。
拒否されたらその時は潔く諦めなさいな」
ママは久我に名刺を2枚渡し、1枚に久我の連絡先を書くよう言った。連絡先が書かれた方を受け取ると、
「巻き込まれついでに席を設けてあげるけど、あの子を傷つけたり、乱暴なことしたら躊躇なくあなたを殺すわよ、いいわね?」
「……俺が柊を傷つけたりするわけがないだろ?」
やっと見つけた柊に繋がる糸を断ちたくなくて、久我は店を後にした。
「ちょっと困ったことになったわねえ」
ママがため息をつく。
「エスカレートしなければいいんですが心配です」
槇も不安を隠せない。
「辻もっちゃんに連絡してみるわ。あの子の様子も気になるし」
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