いきたがり

秋臣

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八雲幹雄

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モーニングが来たのでいただく。
ここは素直に甘えることにした。
最後の晩餐にする、朝だけど。 
特に味わうわけでもなく淡々と食べ終えて、
食後のコーヒーを飲む。

「八雲さんはさあ、なんで死のうとしてるの?」
朝のファミレスで話すことじゃないんだよ、ホストのくせに空気も読めないのか。
「…三木さん?美輝さん?」
「同音だけど本名の方の『三木』でお願いします」
「じゃあ三木さん。食事の礼として話しますけど、本来あなたには関係ない話なんで」
「うん、わかってます」

俺には妻子がいる。いた。
妻とは大学時代に知り合い、彼女が卒業して一年経った頃に結婚し、娘が二人生まれた。
共働きだったが、互いに忙しい中協力し合い頑張って育てていたつもりだったし、家族がなにより大事で大好きだった。

妻が5年くらい前から2~3ヶ月に一度、夜に遊びに行くようになった。
友達と遊んでいるようで、子ども少し大きくなってきて、今までこういうことはかなり控えていたのは知っていたので、そのことに関してはなにも言わなかったし、言うつもりもなかった。
それが次第に月に一度、2週間に一度、週に一度と増えていき、金遣いも荒くなった。
俺は銀行員だからやはり目に余る金の使い方には厳しくなってしまう。
なにに使っているのか咎めると、最初は言い渋っていたが、問い詰めて聞き出したのはホストクラブに通っているということだった。
しかもかなり入れ上げている男がいるらしく、
『客とホストの関係ではない。交際している』と告げられた挙句、
『別れて欲しい』とまで言われるとは思いもしなかった。
俺がなにも言っても全く聞く耳を持たず、終いには子どもたちを抱き込んで、上の娘には『パパ、ママと別れてあげて』と言わせる有様だった。
下の娘が
『新しいパパの写真見たよ!すごくかっこいいの!』と俺に無邪気に報告してくる辛さが分かるか?離婚なんて全然理解してなくて
『これからは新しいパパと一緒に暮らして、今のパパは遠いところから私たちを助けてくれるってママが言ってた!』と。
妻を問いただしたら
『子どもたちはそう伝えてあるからそのようにしてやって。別れてもあの子たちの父親でしょ?』だって。
妻は
『ミキくんは私を幸せにしてくれる』もうその彼との生活しか頭にないようだった。俺も『みきくん』なんだけどな。何を言っても何をしてもダメだった。何より娘たちにママと別れてと言われるのは堪えた。だから、子どもたちが困らないよう家を譲り渡して俺が一人で家を出たよ。離婚したんだ」

「うん、それで?」

お前まだ聞くのか?
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